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かなり離れているのに、こちらの全身にまで熱さが伝う。 あんなもん撃たれたら⋯⋯俺たちまで焼き溶ける⋯⋯! 「アマッ! 階銃をスアのに撃てッ!! あれだったら、あの"デカい金の時計塔"を止められるかもしれないッ!!」 俺の叫びに頷き、階銃を取り出す。 「⋯⋯白神楽さん、アイツに構えて!」 アマが言うと、スアは即座にヤツへと"苅銃"を構えた。 銃口辺りからピンクの鏡を乗せた羽が4枚伸び、新型人工衛星の顔へと移行する。 あの銃を学園で初めて見た時の印象は、今でも強く脳裏に焼き付いている。 "赤いProtoNeLT"の色を剥がし、動きを止めたという事実を。 俺、アマ、エンナ先輩、スアの4人の中だったら、ここで適任なのはスアなんだ。 そして階銃が放たれると、スアの"苅銃"は強制突然変異し、"別個の鏡がたちまち広大化"し始めた。 なんとその鏡からもピンクの衛星が現れ、俺の海銃5頭の時と同じような、芯部含めた"計5機の新型人工衛星"へとなった。 それが撃たれた瞬間、まるで交換されたかのように5機へと何かが吸い込まれ、と同時にヤツの"デカい金の時計塔"は真っ白くなってひび割れていく。 動いていた時計の黒い針も止まっており、再び高熱なものは溜まる様子は無かった。 「次はエンナ先輩にッ! ここで叩き込まないと終わるッ!」 さらに先輩の"壊銃"へと、アマの階銃の一撃が注ぎ込まれと、"オーロラのようなウェディングベール状の4枚羽"が前面を包み、"2頭の恐竜口はより凶悪なモノ"へと変わり果てた。 それらからは数えきれないほどの、ベールに包まれた四角い純白レーザーが一斉放出されていく。 しかし、"機械巨竜?"の右腕を飛ばしただけで、ヤツの動きを完全にどうにかするまでは至らなかった。 「あれをくらっても片腕なのかよ⋯⋯ッ!」 刹那、ヤツが俺らの方を向く。 『グオォォォォァァァァァァァァッ!!!!!!!!』 あまりに不快な雄叫びが3階全体に反響し、呼ばれたように来た強風で目を瞑ってしまうと、開けた時にヤツはいなくなっていた。 「アイツ⋯⋯どこ行った⋯⋯?」 ヤツがいたとこには、さっきのが嘘だったみたいに何も無い。 本当に嘘だったんじゃないかとさえ思えてきた。 仕舞っていた"不可思議な羽根"を今一度見てみると、
大阪駅の3階手前で、対立してしまった意見。 正直、どちらにも"メリット・デメリット"があるため、今一度意見を整理して並べてみる。 エンナ先輩の待つ選択を取れば、金氷月がもしかしたら3階の様子を見てくれるという点と、戦略を立て直せるという点。 ただし、金氷月が3階へ行かなかったとなると、ただの無駄時間になり、次からは"ProtoNeLTやバケモン"がさらに増えている恐れがある。 一方、アマの進む選択を取れば、ヤツらが減っている状態の大阪駅ダンジョンとなっているので、比較的攻略はしやすい。バケモンさえどうにかすれば、軽微で"屋上新エリア"へと辿り着ける見込みがある。 しかし、軽微と言ってもあくまで対抗出来たらの話で、もしアマの使う"階銃"でもキツいとなると、ただでは済まないだろう。最悪、バケモンがヤバい場合は、この中から何人か死人だって出る。 考え続けている俺の方へと、5人の視線が刺さる。 お前はどっちにするんだ早く決めろと、物静かな目線が言っている。 結論から言うと、もう俺の選択は決まっている。 後者のアマの意見に従うべきだと思っている。なぜなら、時間が経つほど人が増えるというのもありそうで、"かいじゅう"が目立ってしまう欠点もありそうだからだ。 そうなる前に決着を付けてしまい、次の理由探しへと手を付ける方が一番楽じゃないだろうか。 ⋯⋯って思ってるけど、もしもの時の責任の重大さが⋯⋯ そうなれば、俺たちは誰も信用できなくなって、目も合わせられなくなって、下手したらここで解散することにもなって⋯⋯。 ⋯⋯嫌だ、まだこれからって時にそんな事になりたくない。 1か月後、お互い生き延びていたとしたら、どんな顔で会えるっていうんだ? 片方は恨まれ、片方は一生深い傷を背負って、そんな苦しい未来に何の意味がある? これは決して考えすぎなんかじゃ無い。それほどの岐路に立っていると言っても過言じゃないんだ。 「俺は⋯⋯」 言おうとした時、急に"ルクア2030"の店内から迷彩服を着たグループが出てきた。 一人一人がアサルトライフルを所持し、中にはロケットランチャーを背負ってる人までいる。 「⋯⋯ん? 高校生か? こんなところで何をしている、危ないからさっさと家に帰りなさい。今、大阪全体がどういう状況なのか知っ
さっきあれだけいたのが嘘みたいに、一気に閑散とした2階となった。 金氷月のヨハレ、ミステリアスでありながら嵐のような女の子だったな⋯⋯。 SNS上で金氷月らにヒットしそうな事柄を並べても、検索には一つも出てこなかった。 周りを囲っていた見学者たちが、それほどしっかり守っているのだろうか。 だいたい一人くらいは破ったりするけど、宗教にでも入っているかのように、一人も約束を破る人間が出ていない。 もしかして、ネット上に出したら殺すとでも脅されているとか⋯⋯? それさえも、崇拝対象として持ち上げていたりして。 真似た金ローブを着たりしてたから、相当なものには感じる。 あれはなんだったんだろう、誰かが作って売ってるのか? そして、金氷月の他3人は男のみで20代前半から半ば辺りくらいだった。一人は長髪細見の男、もう一人はガタイのデカい筋肉男、最後の一人はオールバックのイカつい男だった。その3人は、見るからに話しかけるなというオーラを醸し出していた。 唯一、ヨハレだけが外交サービスを積極的にしているようだった。 その4人に共通していたのは、"どれも同じ形状のハンドガン"を握っていたという点。ということは、あれらもヨハレの撃った一発と、同等の威力なのではないかと思われる。 変わった連中と出くわしてしまったが、梅田にいる限りはまた顔を合わせることになりそう。 特に、ヨハレとの約束は守らないと、何されるか分かったもんじゃない。 とりあえず、敵対しないようにだけはしておきたい。 「さて、そろそろ3階へ続くところを探しましょうか」 エンナ先輩を先頭に、俺たちは大阪駅2階の探索を再開した。 そして複雑構造となった2階フロアの中心の方へ、歩けば歩くほど"ProtoNeLT"が倒れされており、傍にはいつも"金色の氷に包まれた弾丸"が数発。 当然の如く、金氷月が開拓した轍がどこもかしこもにある。 これだけやってくれてるのであれば、車岡が言っていた"ごっついバケモン"とやらもいなくなっていたりして。 と、考えていた数秒後―― 『グオァァァァァァァァッ!!!!』 「⋯⋯待って⋯⋯な⋯⋯なに今の⋯⋯」 エンナ先輩が立ち止まり、全員もたちまち止まる。 薄暗い赤と青の静寂空間を裂くようにして、響いた何者かの凄まじい
ネットには出ていない大阪救済軍団ってなんだ⋯⋯? だから車岡は「他から来たなら知らんのか」的な事を言っていたのか。 その流れからして、やっぱりどこかに"ProtoNeLT以外のバケモン"がいるのもやっぱり事実なのだろう。 それより、この金髪ツインテの子は相当若いように見える。 「俺たちと年齢がそう変わらなそうだけど、何歳か聞いていいか?」 「え~? 女の子に歳を聞くのはよくないですよ~? 喜志可プロ~」 メスガキを装った表情が妙にムカつくな⋯⋯。 でも急に聞いた俺も悪いか⋯⋯冷静になって考えたら。 「じょ~だんですってば! うちは16歳のピッチピチ高1JKですよ~! ん~と、喜志可プロの2個下ってことになりますかねぇ?」 うわ、若っ。 まぁほぼ変わんないけど⋯⋯。 だけど、高1でこんな危険な梅田周辺を行動しているのは度胸がエグい。しかもこんなオシャレを保った格好というかなんというか。それだけ"金氷月"に属する彼らも信頼してるってわけか。 ⋯⋯ん? よく見ると、左腕のサイドに"夜晴(よはれ)"と深く刻まれている。この子の名前だろうか? 「あー! "ヨハレちゃん"って名前知ってる! ランクマのランキング、惜しいところまで行ってたよね!」 「え、白神楽プロがうちの事知ってくれてるぅ~!?」 "ヨハレ"という名前の金髪ツインテの子は、目を神々しく輝かせている。 「だって勢いヤバすぎて、あのまま抜かされるかと思ったもん! 私はたまたま当たらなかったけど、当たった人はみんな堅実で強いって言ってたしね」 「いやぁ~、頑張ったんですけど後一歩及ばずですね~。ランクマの基準だけでプロにはなれないですけど、比率は重いですもんね~」 女子のランクマ順位はよく知らないけど、スアの話からして相当強そうな感じがする。 それなら、これだけ行動する勇気があるのも頷けるが、問題はヤツらを退けられる武器だ。 右手に握っている"金色の冷気漂うハンドガン"が、その鍵を握っているのは明白。 考えていると、いつの間にかエンナ先輩が少し後方へと下がっていた。 「ちょ、エンナ嬢!? なんでそんなとこいるんすか!?」 「いやぁ、みんな話が弾んでそうだから。私いたら邪魔そうじゃない?」 「んな事全然無いっすよッ! もっとこっち来て話して
大阪駅2階に着くと、不穏な静けさが漂い、1階同様の赤と青の薄暗さが広がっていた。 しかも、下から微かに見えていた人たちはいなくなっていた。 車岡が言っていたように、"金氷"とやらに付いて行っているのかもしれない。 「うーん、2階からはドローンが役に立たないなぁ」 スアがハイスマートグラスに取り付けている超小型ドローンを操作しながら言う。 「なんか特定の範囲に入ると、使えないっていうの多いですよね」 モアも同様に触りながら怪訝な顔をしている。 そして暗くて見にくいが、ここからの構造もかなり変わっているように見える。 2階がこんな入り組んだようにはなっていなかったはず。 どちらかと言えば、経由するための連絡通路や待ち合わせ用といった感じだったのに、1階と変わらないくらいの複雑さがある。 こんなとこ、行かなきゃいけないのか⋯⋯。 さらには"赤と青が交差する大きな卵"が奥に何個か見えた。 最悪すぎる、あれの中にはヤツらが入っているというのはもう動画で知っている、興味本位で近付くのは絶対ダメだ。 それから、なるべく離れないようにしながら、6人で周囲を照らしながら歩いて行く事数分。 ♢ まずは風通しの良い、視界が広がる場へと出た。 ここへ来る途中、"ProtoNeLT素体"が何体も倒れているのを見た。 その傍には、"金色の氷?"のような何かで包まれたままの弾丸が数発落ちていた。 一般的な銃は、引き金を引くと撃鉄が薬莢の後部を打ち、火薬を炸裂させて銃弾を押し出すようになっている。 こんな氷が残ったままなんてありえるのか⋯⋯? それとも撃った後にこうなった⋯⋯? どちらにしても訳が分からない。 この弾のサイズからして、ハンドガンの類に当てはまると思われる。まぁそれほど銃に詳しいわけじゃないから、外れている可能性も充分にあるけど⋯⋯。 逆に、ハイスマートグラスの"簡易小型銃"なら素人でも分かり易い。 弾丸が"細長い台形っぽい独特な形状"をしているため、一度覚えてしまえば見間違える事は無い。 リロードが必要無いのが利点ではあるが、ハイスマートグラスの独自エネルギーによる自然銃弾生成のために、一発ずつ一定の生成準備が必要となる。 特性として、残弾数が多いほど生成が速いために、空にせずに生成を促し
小波の羽根4枚が突如肥大化し、それぞれからも海銃の顔が現れていった。 その5つの顔たちは別々の標的をロックオンすると、いつでも殺れると強烈に訴えてくる。 「は、はよッ! はよ撃たんかいッ!!」 車岡が必死に指示しているが、向こう側の"ProtoNeLTの皮を被ったヤツ"は、立ったまま誰一人としてトリガーを引く気配が無い。 なぜなら、見えない間に出力していた"5頭の海銃群"は、既に前方5人のアイツらを気絶させている。 おっさん共が怪訝な顔でソイツらに触れると、まるで魂が抜けたように各々倒れ込んだ。 「ど、どしたんや⋯⋯なんで倒れてしもうて⋯⋯。一体なんなんやこのガキらはァ⋯⋯!? こんなもん、全員で撃ちゃ怖ぁないッ!!!」 堀田がそう言った瞬間、残ったアイツら5人で一斉に俺へと撃ってきた。もう弾が無いのも知らずに。 「⋯⋯あ? なんで何も出んのや⋯⋯? 今撃ったろうがッ!!」 「その持ってるの、"こっちのモノ"になってるからもう使えないよ」 「は? どわぁッ!?」 アマの言う通りに、堀田が持っていた自分の銃を見ると、たちまち驚愕して投げ捨てた。他のおっさんも同様に投げ捨てていく。 それら銃の顔は、"俺の海銃と全く同じ顔"になっていた。普通の銃の役割を放棄させ、海銃に侵食されている状態へと変わっていた。 「さて、戻ろうかザイ君」 「え⋯⋯いいのか?」 「これ以上僕たちがやる必要は無いよ。ほら、放っておいてもこの人たちは、"あの本物たち"からは逃げられない」 なんとおっさんらの背後からは、"本当のProtoNeLT素体"が何体もやってきていた。 こんな数を相手に、立ち止まっている時間があるわけ無い。 「おいッ! なぁ⋯⋯助けてくれやァ!? 金も女もいくらでもやるがなッ!!! ほんまに、ほんまに頼むぅッ!!!」 もちろん助けるつもりは毛頭無い、やってきた事は全て自業自得なのだから。それに、無駄弾をこんなところで消費するのももったいない。 瞬く間に、"本当のProtoNeLT"が所持する"凶悪な長槍"に刺されたヤツらは、逃げ場もなく頭を食われ始めた。 そこに構っているうちに、俺とアマは走って大阪駅構内へと戻っていく。 「⋯⋯よかったんだよな、これで」 「もし