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All Chapters of 異常のダイバーシティ: Chapter 21 - Chapter 24

24 Chapters

21. 登校≪TOBARI/HighSchool≫

 まさかこんな事が出来る日が来るなんて⋯⋯  リムジンに乗って登校なんて、2次元でしか見た事が無い。  ってか、このリムジンってエンナ先輩のものなのかよ⋯⋯。俺はてっきり親のだと思ってたんだけど。  高校卒業祝いで新車になったこれを貰ったそうで、親はまた別の車を使っているらしい。  このリムジンはあまり使わないようにしているようで、やっぱり自分で何でも出来るようにしたいそうだ。  高校の時、エンナ先輩はいつも電車通学だったっけ。電車が止まったりした時だけリムジンで来てたんだっけか。  もちろん無人自動運転の最新型で、タッチパネルから選んで食べ物や飲み物までサービスしてくれる。これの面白いところは、ちょっと時間は掛かってしまうが、AIが目の前でライブキッチンのパフォーマンスなんてものまであるところだ。  もちろん、天王寺駅前から大阪都波裏学園なんて、車移動で20分もかからないため、使いたいなんて我儘は言わない。 「朝食は何でも遠慮せず選んでいいからね」  黒鮭定食を頼みながら、先輩は俺とスアに囁く。 「俺も黒鮭定食にしていいですか?」 「私も!」 「どうぞ~。美味しいわよ、黒鮭。私のおすすめ!」  数分で用意された黒鮭は焼きたてで、香ばしい匂いが漂ってくる。こんな良い鮭、食べた事ないぞ⋯⋯。   それに並ぶように置かれた白米と味噌汁と納豆は、どれも輝いている。 「ん~! 良い匂い! ずっと嗅いでられる~!」  スアは幸せそうな顔。  これは味わって食べたい⋯⋯けど、時間が無いからなぁ。 「「⋯⋯いただきます!」」  俺とスアはシンクロするように、黒鮭を一口。  ⋯⋯なんじゃこりゃぁ⋯⋯!  表面は炭火で焼いたようなカリっと深い味わい、そこから中に行くほど濃い旨味がぎっしり詰まっている。すぐに甘味もドンと口全体を覆ってきた。  ⋯⋯ダメだ、白米が止まらない! ⋯⋯美味すぎる! 「ふふ、気に入ったみたいね」 「先輩、この黒鮭とサーモンマグロが毎日欲しいです」 「え~、じゃぁ私と結婚しないとだね」 「ごほっごほっごほっ」 「き、喜志可くん!? 大丈夫!?」 「変な事、急に言わないでくださいよ⋯⋯!」 「(⋯⋯あながち、変な事でもないんだな~)」  こっそり言った先輩の言葉はあまり聞き取れなかった。  スアはという
last updateLast Updated : 2025-09-04
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22. 色剥≪LostColor≫

 俺は即座にハイスマートグラスを銃のように構え、海銃へと成り変えた。 「⋯⋯ッ!」  撃った瞬間に色彩が輝き、小波(さざなみ)に包まれた弾丸がヤツの身体へと直撃する。 「な⋯⋯ッ!」  しかし、なんと"ヤツの真っ赤になった身体"にはびくともせず、何度撃っても効かないまま⋯⋯。  こっちを見向きもせず、ヤツは突き刺した生徒の頭を食い散らかし、ソイツの姿へと変異した。 『⋯⋯あれェ? 僕の首が無くなってるゥ? 僕は、僕は、"これからの存在"ってのに、ナレタッテコトォォォォォ???』 「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!?!??」  阿鼻叫喚に包まれたクラスからは、6ヵ所ある出口へとそれぞれが走って逃げていく。  残った俺たちの前に、目を360度回転させて狂っているアイツ。もはやクラスメイトの面影を一つも感じない。ただ姿が同じだけの、"壊れた何か"がそこにいるだけだった。 「⋯⋯ッ! スアッ! 俺たちも逃げるぞッ!! こいつにはこれが効かないッ!!」 「ザ⋯⋯ザイ⋯⋯足が⋯⋯足が動かなくて⋯⋯」 「は!?」  緊急事態に身体が強張ったのか、どうにも出来ないようだった。 「行って⋯⋯一人で行って⋯⋯」 「⋯⋯なにいって⋯⋯」 「早くッ!! 次のも来てるからッ!!」  スアの視線の先の出口には、"違うヤツ"がさらに来ているのが、見えているようだった。  どうやってもヤツを止める方法はない。あのホテルでは助けられたのに⋯⋯  ⋯⋯スアを見捨てる⋯⋯しかない⋯⋯?  こんなに一緒に、どんな時も一緒に、これからも一緒に生きていきたいのに⋯⋯?  スアを⋯⋯スアを⋯⋯俺は⋯⋯  考える隙など無く、ヤツは"ハンマーのような大きな鈍器"を取り出し、なぜか俺の方へと向いて振りかぶった。  標的はスアではなく、俺だったのだ。  ダメだ⋯⋯俺が逃げればスアに⋯⋯ 「うわぁぁぁぁぁぁッ!!」  クラスに響く大きな叫び。その声の正体は俺ではない。  彼女が激しく叫んだ後、ピンクのハイスマートグラスを銃のように構えた。  刹那、あのハイスマートグラスから、"ピンクの鏡のような羽が4枚"生え始め、中央からは"新型人工衛星のような姿"が現れた。  放たれた一発がアイツに当たると、途端に赤色が剥がれていき、白色へと変わって動きを止めた。  ⋯⋯もしかして、今
last updateLast Updated : 2025-09-06
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23. 苅銃≪SatellaWrest≫

「それで、何があったの?」  対面に座るエンナ先輩が心配そうに言う。 「学園内にヤツが入って来たんです。人型AIの"ProtoNeLT"が」 「それって昨日言ってた話だよね? ごめん、途中から眠くなっちゃってたんだよね⋯⋯また一から教えて貰えるかな?」  先輩、風呂入ってからふにゃふにゃしてたもんな⋯⋯  俺はヤツに対して知ってる情報全てを、改めて車内で話した。 「ほ、本当なの!? "頭を食べて人間になるAI"がいるなんて⋯⋯」 「はい。俺らが殺されそうになったのも、ソイツが原因なんです。最初は警備員になったアイツが突然現れて、急に"銃殺されるのは好きか"とか言い始めて⋯⋯」 「よくそんなホテルの50階から逃げて来られたね⋯⋯。さすが喜志可くんとスアちゃん、私だったら絶対絶対ぜ~~~~ったい無理だよ⋯⋯」  その後、秘桜アマがなんでここにいたのかの話に切り替わった。 「それで、なんでお前はあんなとこにいたんだよ。アフターバンパクシティの病院にいたはずだろ?」 「昨日の最後にあったAI総理と日岡知事の対談後から、院内の雰囲気が妙におかしくなったのを感じて、抜け出してきたんだ。症状も一時的なものだったから、身体は動かしやすかったからね。きっと君たちも逃げただろうと思い、大会も無くなる可能性が高いと想定した。それで、登校日に設定されているこの日曜、転校の視察で急遽入れさせてもらったんだ」 「転校? 親の都合とかで、か?」 「いいや。喜志可ザイ、君に興味を持ったからだ。普段の生活でどういった事をすれば、あんな強さに辿り着いたのか、参考にさせてもらおうと思ってね。さっきも使っていた"波が連なる銃"、それを手に入れた過程も知りたい」  ⋯⋯え、俺に興味持っただけでわざわざ転校しようとしてんの⋯⋯?  三船コーチは一旦諦め、俺を観察する事に徹底したいというコイツ。  なんか変なのが来ようとしてるんだが⋯⋯ 「だとして何もわざわざ、夏休みの登校日に来る必要無かっただろうに」 「自分の中に衝動が走ったんだ、すぐ見に行った方がいいと。思い立ったら吉日と言うだろ? 夏休み明けから行くための、いいイメージにもなるじゃないか。それほど、僕の中に"あの天井の深海からの巨大銃"が響いたのさ」  謎にドヤ顔で言っているんだ
last updateLast Updated : 2025-09-08
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24. 集結≪Miscellaneous≫

「エンナ嬢ッ! おかえ⋯⋯って、なんでアマがいんだよ!?」 「んな事より、なんだよその格好は」  地下玄関へと迎えに来たケンは、昨日と打って変わって執事のようなスマートな服装をしており、いつもの"黄色のハイスマートグラス"を掛けていた。  髪型も全然違うし⋯⋯ホストっぽいというかなんというか⋯⋯ 「へっ、俺はな、エンナ嬢に雇ってもらったんだ。ゲームのプロなんていつまで続くか分からねぇんだからよ、次の人生も考えとかなきゃだろ? こんなすげぇ大豪邸でボディガードさせてもらえるなんて、いい機会じゃねぇか」  俺の問いに、余裕の表情で淡々と答えるこいつ。  なんだろうか、さっきまでと正反対の雰囲気に、どこか安堵する自分がいた。 「って、俺の事はいんだよっ! アマがいるのはなんでなんだ!?」 「転校の様子見で職員室に来てたアマとばったり会ったんだ、話せば長くなる。まぁいろいろあったんだよ。俺とお前がホテルで会ったあの状況みたいなもんだと思ってくれ」  その後の詳しい説明は代わりにスアがしてくれた。こいつはスアの言う事ならなんでも素直に聞く、俺より適任だ。申し訳ないが、こいつの面倒事はスアに任せよう。  そうして話し合ってる中、俺とエンナ先輩が先にリビングへ入ると⋯⋯ 「あ、おかえりなさい、ザイ先輩、エンナ先輩」  後光が差したあまりに天使すぎる姿に、一瞬誰か分からなかったが、神々しいほどの真っ白なメイド服に包まれたモアがいた。 「えっと、似合って⋯⋯ますかね⋯⋯? ケン先輩が執事服していたので、あたしもしてみようかなと思いまして⋯⋯」  彼女の照れた顔は、あまりに破壊力が高すぎる。  しかし動じる事のないエンナ先輩は、すぐにモアへと近寄った。 「モアさん、私の専属メイドにならない? 給料弾むわよ」  めちゃめちゃ動じとるやん⋯⋯ 「専属メイドですか? 私なんかに出来るでしょうか⋯⋯?」 「あなたはその格好でいるだけでいいわ。どうせ他の家事は全部AIがしてくれるのだから」 「⋯⋯それって専属メイドの意味ありますかね?」  困惑しているモアの傍へと俺は寄った。 「エンナ先輩、残念ながらモアは、プロゲーミング事務所"Hanged Girl Gaming"の看板娘なんすよ。しかも経営してるのは彼女の父です」 「そっかぁ。やっぱりスアちゃん
last updateLast Updated : 2025-09-09
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