梅代は青白い顔で震えながら尋ねた。「あの子をどこへ連れて行くつもりなの?」「深也が刑務所に入っている間、あの女も同じ期間閉じ込めておくんだ」「よくもそんなことができるわね」「俺にできないことなんてこの世にはないんだ」正邦の怒りが爆発した。「深也は俺にとってたった一人の息子だ。その息子を刑務所に入れようというのか。わかっているのか、刑務所だぞ!」正邦はずっと心の中にあった怒りを我慢してきた。なぜ梅代が夕星をひいきするのか、正邦には理解できなかった。かつて凌は夕星の夫だったから、夕星にもまだ存在価値があった。けれど今、凌は夕星と離婚し、穂谷家との結婚を進めている。そうなれば、夕星はもう何の価値もない存在になってしまう。価値のない夕星のために深也を犠牲にするなんて、正邦が正気であればそんなことをするはずがない。「あなた……」梅代は胸を押さえ、体がぐらついた。夕星は胸が引き裂かれるような思いで、かすれた声を上げた。「梅代おばあちゃん……!」「秦正邦」夕星は歯ぎしりしながら、あえてフルネームで正邦のことを呼んだ。「梅代おばあちゃんのことを苦しめたいの?」「母さんをいじめているのは、俺じゃなくてお前という厄介者だ」正邦は大声で夕星に怒鳴った。「逆に聞きたいけど、お前はただ手をこまねいて、母さんが怒りに打ちひしがれて苦しむのを見届けるつもりなのか?」その時、「ドン」と梅代が床に倒れ込む音が重く響いた。「梅代おばあちゃん!」夕星は絶叫した。今まで積み重ねてきた決意も信念も、この一瞬ですべてが無駄になった。「訴訟を取り下げるから、お医者さんを呼んで梅代おばあちゃんを助けてあげなさい」夕星は泣き叫びながら、ついに断念した。正邦は長いため息をつくと、ボディーガードに夕星を解放するよう合図した。夕星は転がるように梅代の元へ駆け寄り、震える手で梅代の華奢な体を抱え上げた。「梅代おばあちゃん」「びっくりさせないでよ」「お医者さんを早く呼んで!」幸いにも、正邦はまだ梅代が目の前で死ぬのを黙って見ていられるほど冷酷ではなかった。正邦はすぐにナースコールを押して医者を呼んだ。夕星は医者に病室から追い出された。夕星は病室のドアの前に立ち、半開きのドアから中をぼんやりと眺めながら号泣していた。梅代おばあちゃん
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