フツーではない主婦「キラリ」に変装。ムーン・ラット・キッス女王が「朝井うさ子」を名乗って勝手に「婚約者」と決めつけている朝井悠馬の自宅を偵察に来たキラーリ公主。  キッチンのゴミ箱の中から一枚の写真を拾い上げた。  その写真にはキラーリ公主もよく知っている人間の姿があった。地球総攻撃に向けた調査のため、地球に潜入していたサライである。  サライが悠馬と肩を寄せ合ってVサインをしている写真だった。  ふたりがどんなに親しく、どんなに信頼し合っているか。キラーリ公主は一瞬で理解した。それなのに……。  日本の自衛隊や軍備を探るため、キラーリ公主はサライに田辺との結婚を命じた。  間違いない。サライは悠馬を助けるために地球に向かおうとしたのだ。そのサライを捕え、アマンが助命を願い出ても相手にせずその命を奪った。  キラーリ公主はブルブルと震えて写真を見つめた。丸められていた写真を丁寧に伸ばし、テーブルの上に置いた。写真についたゴミも丁寧に払った。  そのままテーブルの前で、写真を見つめたまま、立ち尽くしていた。  しばらくしてキラーリ公主の目が光り、一筋の涙が流れた。一筋の涙はやがて川となり、キラーリ公主の足元へ滝のように流れ落ちていった。「こめんなさい」 振り絞るような声だった。  すぐにキッチンに近づく足音か聞こえた。キラーリ公主はあわてて写真をハンカチに包んでバッグにしまった。  悠馬が緊張した表情で入ってくる。キラーリは出来るだけ平静な態度を装った。床に出来た涙の湖を、履いていたスリッパで隠した。「分かりました?」 何事もなかったように笑顔で尋ねる。悠馬はうなずき、一枚のメモ差し出した。「ネットで調べてみました。僕たち未成年は見られないデータばかりでしたけど、その会社か入っているビルの名前が分かったので、そこから詳しい場所を調べてみたんです。でも……」 悠馬は真剣な表情でキラーリ公主の顔を見た。「キラリさんが働くような場所じゃありません。どうか、行かないでください。お願いします」 悠馬は大声で訴えると、頭を深く下げた。「お願いします」 悠馬の顔が真っ赤に変わり、恥ずかしそうに下を向いた。「子どもが生意気なこと言ってすみません」 キラーリ公主は心からの笑顔を悠馬に向けた。この少年が真剣に自分のことを心配している様子が
Terakhir Diperbarui : 2025-10-09 Baca selengkapnya