All Chapters of 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!: Chapter 41 - Chapter 50

52 Chapters

温泉でドキドキ混浴事件

温泉旅行二日目の朝。「あー、よく寝た♡」リリムが布団の中で伸びをする。「やっぱり温泉の後の睡眠は最高ね」「ああ……」総一が寝ぼけ眼で答える。「でも、お前寝相悪すぎ……」見ると、布団が完全にめちゃくちゃになっている。リリムの足が総一の顔の近くにあり、髪の毛もぼさぼさだった。「失礼ね! わたしの寝相は上品よ」「どこが上品だよ……」「えー?」リリムが起き上がって鏡を見る。「うわ! 髪がすごいことに!」「だから言っただろ」「もう、なんで起こしてくれなかったのよ」「起こそうとしたけど、肘打ちされたんだよ」「そんなことしてないわよ」「無意識でやってるから自覚がないんだって」二人がじゃれ合っていると、隣の部屋から声が聞こえてきた。「おはようございます」ベルの声だ。「あ、おはよう」「おはようございます」障子越しに挨拶を交わす。「昨夜はよく眠れましたか?」「はい、とても」ベルが嬉しそうに答える。「夢を見ました」「夢?」「はい。みんなで笑っている夢でした」リリムと総一が顔を見合わせる。「それって、いい夢ね」「はい。とても暖かい気持ちになりました」「よかった」朝食を食べた後、一行は旅館の周辺を散策することになった。「わあ、川が流れてる!」リリムが小川に駆け寄る。「お魚もいるわよ!」「本当ですね」ベルも興味深そうに水面を覗き込む。「生き物を見ていると、心が穏やかになります」「それが『癒やし』って感情よ」エリスが説明する。「自然や生き物と触れ合うことで得られる安らぎ」「癒やし……」ベルが小魚を見つめる。「こんな小さな存在でも、私の心を動かすのですね」「そうなんです」セラフィーネが微笑む。「愛は大きなものだけでなく、小さなものにも向けられるんです」川沿いを歩いていると、橋の向こうに立派な建物が見えてきた。「あれは何ですか?」カイが指差す。「ああ、あれは野天風呂です」旅館の女将さんが説明してくれる。「当館自慢の混浴露天風呂でございます」「混浴?」総一の顔が青ざめる。「男女一緒に入るお風呂よ」リリムが嬉しそうに言う。「素敵じゃない♡」「素敵って……」「昔からの伝統でして」女将さんが続ける。「もちろん、水着着用でございますが」「水着なら大丈夫ね!」リリムが手を叩く。
last updateLast Updated : 2025-09-11
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帰り道と新たな日常の始まり

温泉旅行最終日。「ああ、もう帰る時間か……」カイが名残惜しそうに呟く。「楽しかったのに」「でも、いい思い出ができましたね」セラフィーネが荷物をまとめながら言う。「特にベルさんにとっては貴重な体験でした」「はい」ベルが嬉しそうに頷く。「この三日間で、人生が変わったような気がします」「大げさね」リリムが笑う。「でも、確かに表情が全然違うわ」確かに、最初の冷たく無感情だった表情は消え、今は穏やかで温かい笑顔を浮かべている。「皆さんのおかげです」ベルが深々と頭を下げる。「ありがとうございました」「お礼なんていいのよ」「そうです」エリスも頷く。「これからもずっと仲間ですから」旅館を出発し、駅に向かう道中。「あ、お土産買うの忘れてた!」リリムが突然立ち止まる。「お土産?」「そう! ヴェルダさんにも何か買っていかなきゃ」そういえば、ヴェルダは仕事の都合で今回の旅行には参加できなかった。「そうですね」総一も思い出す。「何か買っていこう」「でも、もう電車の時間が……」神崎が時計を見る。「急がないと間に合いません」「大丈夫よ!」リリムが駆け出す。「ちょっとだけ♡」土産物屋に飛び込んだリリムは、あれこれと品物を見回している。「うーん、何がいいかしら……」「温泉まんじゅうはどうですか?」店員さんが勧める。「当地名物です」「それいいわね!」「じゃあ、それで」総一が財布を出そうとすると、リリムが制止した。「わたしが買うの」「でも……」「ヴェルダさんにはいつもお世話になってるから、わたしのお小遣いで買いたいの」「そうか」リリムが一生懸命お金を数えている姿が、なんだか微笑ましかった。電車に乗り込み、帰路につく。「疲れた〜」リリムが総一の肩にもたれかかる。「でも、楽しかった♡」「ああ、俺も楽しかった」「次はどこに行きましょうか?」ベルが期待に満ちた顔で聞く。「海とか見に行きたいです」「海かあ」カイが手を叩く。「いいね! 夏になったら海水浴だ」「海水浴?」「海で泳ぐのよ」リリムが説明する。「温泉とは違った楽しさがあるの」「楽しみです」ベルの表情がさらに明るくなる。「まだ体験したことのない感情に出会えるかもしれませんね」電車が街に近づくにつれ、日常に戻る実感が湧いてくる
last updateLast Updated : 2025-09-12
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愛の伝道師ベルと恋の相談

温泉旅行から一週間後。ベルは本格的に「愛の伝道師」としての活動を始めていた。「今日は公園で相談コーナーを開くそうです」神崎研究所のリビングで、ヴェルダが報告する。「相談コーナー?」総一が首をかしげる。「『恋愛・人間関係相談』って看板を立てて、困っている人の話を聞くそうです」「本格的ね」リリムが感心する。「でも、ベルさんに恋愛相談って……大丈夫かしら」「一週間前まで感情を知らなかった人ですからね……」セラフィーネも心配そうだ。その時、研究所の扉が開いて、ベルが戻ってきた。「ただいま戻りました」「お疲れ様」「どうでした?」「はい」ベルが嬉しそうに報告する。「今日は三人の方の相談に乗りました」「三人も?」「はい。恋に悩む高校生、夫婦喧嘩をした奥様、そして……」ベルが少し困ったような顔をする。「小学生の男の子でした」「小学生?」「はい。『好きな女の子に話しかけられない』という相談でした」みんなが微笑ましい表情を浮かべる。「可愛い悩みですね」「で、何てアドバイスしたんですか?」カイが興味深そうに聞く。「えっと……」ベルが恥ずかしそうに俯く。「『愛は勇気です。まずは挨拶から始めましょう』と」「いいアドバイスじゃないですか」「そうですかね?」「立派よ」リリムが頷く。「ベルさんらしい真面目なアドバイス」「ありがとうございます」しかし、ベルの表情はまだ不安そうだった。「でも、まだ分からないことがたくさんあります」「例えば?」「『デート』というものについて」ベルが真剣な顔で言う。「恋人同士が一緒に過ごす時間のことですよね?」「そうですよ」「でも、具体的に何をすれば良いのでしょうか?」「何をって……」総一が考え込む。「映画を見たり、食事をしたり……」「楽しいことを一緒にするのよ」リリムが付け加える。「お互いのことを知り合うために」「なるほど」ベルがメモを取る。「勉強になります」その時、研究所の電話が鳴った。「はい、神崎研究所です」神崎が電話に出る。「え? ベルさんの相談コーナーについて?」みんなが振り返る。「はい、はい……分かりました」神崎が電話を切ると、困ったような顔をしていた。「どうしたんですか?」「今、公園の管理事務所から連絡がありまして……」「何か問題
last updateLast Updated : 2025-09-13
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カイの初恋とドタバタ大作戦

翌日の学校。「おはよー」いつものようにカイが教室に現れたが、なんだか様子がおかしい。「おはよう……って、どうした?」総一が眉をひそめる。「顔色悪いぞ」「え? そ、そんなことないよ」カイが慌てて答える。「普通だって、普通」「普通に見えないけど……」リリムがカイの顔を覗き込む。「目の下にクマできてるじゃない」「昨夜、ゲームしすぎただけだよ」「ゲーム? 何のゲーム?」「え、えーっと……その……」カイがしどろもどろになる。「恋愛ゲーム?」リリムがにやりと笑う。「図星でしょ?」「ち、違うって!」「じゃあ何よ」「その……」カイが顔を赤くして俯く。「もしかして……」総一が理解する。「本当に恋してるのか?」「してない!」カイが慌てて否定する。「恋なんかしてないから!」「嘘つき」リリムが断言する。「その反応、完全に恋してるわよ」「してないってば……」昼休み、屋上。「で、相手は誰なんだ?」総一がカイを問い詰める。「だから、そんな人いないって……」「いるでしょ?」リリムが詰め寄る。「観念しなさい」「うう……」カイが観念したように肩を落とす。「……いるかもしれない」「やっぱり!」「でも、まだ確定じゃないから」「確定って何よ」「その……好きかどうか分からないから」カイが恥ずかしそうに呟く。「初めての感情だから、これが恋なのかどうか……」「あー、それは確実に恋ね」リリムが断言する。「間違いないわ」「で、相手は?」「それは……」カイがもじもじする。「図書委員の佐藤さん」「図書委員の?」総一が首をかしげる。「1年の?」「そう……」「あー、あの眼鏡の子ね」リリムが思い出す。「確かに可愛いわよね」「可愛いって……」カイの顔がさらに赤くなる。「そんな風に見たことない」「嘘つき」「本当だって」でも、カイの表情は明らかに嘘をついている顔だった。「で、どんなきっかけで意識するようになったんだ?」「きっかけって……」カイが遠い目をする。「先週、図書室で本を借りた時に……」「うん」「『ありがとうございました』って笑顔で言われて……」「それで?」「なんか、胸がドキドキして……」カイが胸を押さえる。「夜も眠れなくなって……」「完全に恋じゃない」リリムが手を叩
last updateLast Updated : 2025-09-14
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カイと美優の初デート大成功♡

カイが美優に告白してから三日後。ついに初デートの日がやってきた。「うわあああああ、やべえ、やべえよ」朝の神崎研究所で、カイがリビングを右往左往していた。「何がやばいって?」総一が朝食のトーストを齧りながら聞く。「だって今日、美優ちゃんとデートなんだぞ? 俺、一度も女の子とデートしたことないのに」「そんなもん、俺もリリムが初めてだったよ」「でも総一は元々モテるじゃん」「モテるって……」「どうすればいいんだ……服装は? 会話は? 手、繋いでもいいのか?」カイが頭を抱える。「あー、もう無理だ。やっぱりキャンセルしよう」「ちょっと待ちなさい」リリムがキッチンから現れた。「せっかく告白成功したのに、何弱気になってるのよ」「だって……」「大丈夫よ。デートなんて簡単よ」リリムが自信満々に言う。「一緒にいるだけで楽しいのがデートなんだから」「そうかな……」「そうよ。それに美優ちゃんも緊張してるはずよ」「美優ちゃんが?」「当たり前でしょ。初デートなんだから」確かに、考えてみれば美優も同じ気持ちかもしれない。「でも、やっぱり服装とか……」「任せなさい」リリムが目をキラキラさせる。「わたしがコーディネートしてあげる」「え?」「恋愛指導は悪魔の得意分野よ」「でも……」「はい決定。総一も手伝いなさい」「俺も?」「男の意見も必要でしょ」こうして、カイの初デート準備大作戦が始まった。「まずは服装チェックから」リリムがカイの普段着を物色する。「うーん、これ
last updateLast Updated : 2025-09-15
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新カップル誕生と学園の噂

翌月曜日の朝。「おはよう」「おはよう」いつものように教室に入った総一とリリムだったが、なんだか雰囲気が違う。「なに、この騒がしさ」リリムが首をかしげる。教室の生徒たちが、ひそひそと話し合っている。「星川と一年の佐藤さんが付き合ってるって本当?」「マジ? あの大人しい星川が?」「意外だよな」「でも、佐藤さん可愛いし、お似合いかも」「あー、なるほど」総一が理解する。「カイと美優ちゃんの件、もう学校中の噂になってるのか」「早いわね」リリムが苦笑する。「学校の情報伝達速度って異常よ」そこにカイが現れた。「よう……」でも、いつものカイとは様子が違う。顔は赤いし、視線は泳いでいるし、明らかに動揺している。「おはよう、カイ」「あ、おはよう……」「どうした? 具合悪いのか?」「具合って言うか……」カイが困ったような顔をする。「朝から色んな人に声かけられて……」「声かけられて?」「『彼女できたんだって?』とか『佐藤さんと付き合ってるんでしょ?』とか……」「あー」総一が同情する。「それは大変だな」「どうしよう……」カイがオロオロする。「美優ちゃんにも迷惑かけちゃうかも」「大丈夫よ」リリムが断言する。「噂なんて、すぐに他の話題に変わるわ」「そうかな……」その時、教室のドアが開いて美優が顔を出した。「あの……星川君」「美優ちゃん?」カイが驚く。
last updateLast Updated : 2025-09-16
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みんなでお花見とほろ酔い悪魔

四月。桜が満開の季節がやってきた。 「わー! 綺麗!」 神崎研究所の近くの公園で、リリムが桜を見上げて感嘆の声を上げる。 「これが『お花見』ってやつね!」 「そうですよ」 神崎が微笑む。 「日本の春の風物詩です」 今日は研究所のメンバー全員でお花見をすることになっていた。 総一、リリム、カイ、美優、セラフィーネ、エリス、ヴェルダ、神崎、アルカード、そしてベル。 「すごい人数になりましたね」 美優が感心する。 「最初は三人だったのに」 「愛が人を引き寄せるのよ」 リリムが得意げに言う。 「わたしたちの愛のおかげね」 「自分で言うか……」 総一が苦笑する。 ブルーシートを敷いて、みんなで輪になって座る。 「乾杯!」 ベルがお茶のペットボトルを高く上げる。 「桜との出会いに」 「乾杯」 みんなでペットボトルを合わせる。 「ベルさん、すっかり人間らしくなりましたね」 カイが感心する。 「一年前まで感情を知らなかったとは思えません」 「皆さんのおかげです」 ベルが感謝する。 「特に桜を見ていると、心が温かくなります」 「これが『美しいものに感動する』って感情ですね」 「はい。とても素晴らしい感情です」 お弁当を広げて、みんなでわいわいと
last updateLast Updated : 2025-09-17
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悪魔の料理修行と愛妻弁当計画

お花見から数日後。「よし、今日から本格的に料理を覚えるわよ!」朝の神崎研究所で、リリムが気合いを入れて宣言した。「料理?」総一が首をかしげる。「急にどうしたんだ?」「だって、美優ちゃんが手作り弁当作ってるの見て、わたしも作りたくなったのよ」リリムの目がキラキラ輝いている。「愛情たっぷりの手作り弁当♡」「愛情って……」「当然でしょ? 愛する人のために料理を作るのよ」「でも、お前料理下手だろ……」「失礼ね! これから上手になるのよ」その時、キッチンからヴェルダが顔を出した。「料理を覚えたいんですか?」「はい! ヴェルダさん、教えてください」「もちろんです」ヴェルダが微笑む。「でも、基礎からしっかりやりましょうね」「基礎って?」「包丁の持ち方、火加減、調味料の分量……」「うう、難しそう……」「大丈夫です」ヴェルダが励ます。「愛があれば必ず上達します」こうして、リリムの料理修行が始まった。「まずは卵焼きから」ヴェルダが手本を見せる。「卵を溶いて、砂糖と醤油を少し加えます」「砂糖と醤油? 甘いの? しょっぱいの?」「甘めの関東風です。フライパンを温めて……」ヴェルダが慣れた手つきで卵液を流し込む。「箸で混ぜながら、少しずつ巻いていきます」「うわあ、きれいに巻けてる」あっという間に、ふわふわの卵焼きが完成した。「今度はリリムさんがやってみてください」「は、はい」リリムが恐る恐る卵を割る。「あ」殻が
last updateLast Updated : 2025-09-18
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新たな契約者現る!?謎の転校生

リリムの料理修行が一段落してから一週間。平和な日常が続いていた。「はい、今日のお弁当♡」朝の神崎研究所で、リリムが得意げに弁当箱を総一に手渡す。「ありがとう」総一が受け取ると、ほんのり温かい。「今日は何が入ってるんだ?」「秘密♡ 学校で開けてのお楽しみよ」「そうか」最近のリリムの手作り弁当は、日に日に美味しくなっている。見た目も綺麗になってきて、もはやプロ級だった。「俺も弁当欲しいな……」カイがうらやましそうに呟く。「美優ちゃんに頼んでみたら?」「そんな図々しいこと言えないよ」「恋人なんだから、遠慮しなくてもいいんじゃない?」「でも……」「あら、カイってば奥手ねえ」リリムがくすくす笑う。「もっと積極的にならないと」「積極的って……」「例えば、一緒にお弁当作るとか」「一緒に?」「そう。二人で作れば楽しいし、絆も深まるわよ」「なるほど……」カイが考え込む。「でも、俺料理できないし……」「大丈夫よ。わたしが教えてあげる」「本当?」「もちろん。恋愛の先輩として、後輩をサポートするのは当然でしょ」「ありがとう、リリム」そんな和やかな会話をしていると、総一のスマホに連絡が入った。「学校からだ」総一がメールを確認する。「今日、転校生が来るって」「転校生?」「二年生に一人。詳細は不明」「珍しいわね」リリムが首をかしげる。「この時期に転校なんて」「家庭の事情とかじゃない?」カイが推測する。「まあ、今日会えば分かるか」三人は学校に向かった。教室に入ると、既に騒がしくなっていた。「転校生、美人らしいぞ」「マジ? 楽しみ」「どんな子だろう」生徒たちが期待に胸を膨らませている。「やっぱり美人なのかな」カイが興味深そうに言う。「美優ちゃん以上の美人はいないと思うけど」「そういうことを堂々と言えるようになったのね」リリムが感心する。「成長したじゃない」「そうかな……」一時間目のホームルーム。担任の田中先生が教室に入ってきた。「皆さん、お待たせしました」先生の後ろに、一人の女子生徒が続く。「うわ……」教室がざわめく。確かに美人だった。長い黒髪に整った顔立ち。背も高く、スタイルも良い。ただし、どこか近寄りがたい雰囲気があった。「それでは自己紹介をお願いします」「はい」
last updateLast Updated : 2025-09-20
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愛を知らない少女と絶望の契約悪魔

黒いオーラに包まれた黒崎麗奈の前で、リリムと総一が対峙していた。「誰も……誰も私を愛してくれない……」麗奈の声が虚空に響く。「だったら、全部消えてしまえばいい……」彼女の周囲に黒い波動が広がり、触れた街灯や看板が次々と朽ち果てていく。「これは……」リリムが警戒する。「絶望の魔力ね。かなり危険よ」「絶望の魔力?」「人の絶望感を増幅させて、全てを無に帰す力」リリムが魔力を展開して結界を張る。「一般人に触れたら、生きる気力を全て奪われてしまう」周囲の人々は既に避難していたが、まだ完全に安全とは言えない。「黒崎さん!」総一が叫ぶ。「俺たちの話を聞いてくれ!」麗奈がゆっくりと振り返る。その瞳には、深い絶望と憎しみが宿っていた。「あなたたち……」「そうよ、学校で会ったリリムよ」「学校……」麗奈の表情が僅かに揺らぐ。「そんなもの、もうどうでもいい」「どうでもよくないわ」リリムが一歩前に出る。「あなたはまだ十七歳。これからいくらでも幸せになれる」「幸せ?」麗奈が嘲笑する。「私に幸せなんてない」「そんなことない」「ある!」麗奈の怒りが爆発し、黒いオーラがさらに強くなる。「両親は死んだ! 親戚は私を邪魔者扱い! 学校でも誰も話しかけない!」「それは……」「私は一人よ! 誰からも愛されない! 誰からも必要とされない!」麗奈の叫びが街に響く。その時、黒い影が彼女の背後から現れた。「そうだ、麗奈……」低い声が響く。
last updateLast Updated : 2025-09-21
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