地獄評議会から帰還して一週間。総一たちの生活は、ようやく平穏を取り戻していた。「はあ〜、平和って素晴らしいわね」月曜日の朝、リリムは布団の中で背伸びをしながら呟いた。「お前、寝相悪すぎるぞ……」総一は呆れた顔で、リリムの足が自分の腹の上に乗っているのを見ていた。「何よ、文句あるの?」「あるよ。重いし、昨夜は肘打ちされたし」「そんなことしてないわよ」「無意識でやってるんだよ、お前は」でも、文句を言いながらも総一の顔は穏やかだった。こんな他愛もない会話ができるのが、今は何より幸せだった。「総一〜、そろそろ起きませんと遅刻しますよ」廊下からヴェルダの声が聞こえる。「はーい!」リリムが元気よく返事をする。「って、なんでお前が返事してるんだよ」「だって、わたしたち恋人でしょ? 恋人の代わりに返事するのは当然よ」「そういう問題じゃないだろ……」朝食の席で、ヴェルダが微笑ましそうに二人を見ていた。「お二人とも、本当に仲がよろしいですね」「仲がいいんじゃなくて、愛し合ってるのよ」リリムが胸を張って言う。「愛って言葉、軽々しく使うなよ……」「軽々しくないわよ。本気よ、本気」そんなやり取りをしながら朝食を済ませ、二人で学校に向かう。通学路では、相変わらずリリムが総一の腕にしがみついていた。「おい、そんなにくっつくなって」「何よ、恥ずかしいの?」「周りの目が……」実際、道行く人々がチラチラと二人を見ている。リリムの美貌は相変わらず人目を引いていた。「あら、あの二人可愛いわね」「高校生かしら? 初々しくて素敵」そんな声が聞こえてくると、総一の顔が真っ赤になる。「ほら、みんな祝福してくれてるじゃない」「祝福って……」学校に着くと、カイが待っていた。「よう、今日も仲良しだな」「おはよう、カイ」「最近、お前らますますラブラブじゃない?」「ラブラブって……」総一が照れている間に、リリムがカイに質問する。「ねえカイ、最近何か変わったことない?」「変わったこと?」「契約関係の事件とか」「ああ、そういえば……」カイがスマホを取り出す。「ちょっと気になるニュースがあるんだよな」画面に表示されたのは、『謎の集団失踪事件』という見出しだった。「失踪事件?」「ああ。この一週間で、全国各地で同じような事件が起きてる」
Last Updated : 2025-09-01 Read more