イストリアとの戦いから一週間。街は平和を取り戻していた。「ふう……」神崎研究所のリビングで、総一が伸びをする。「やっと落ち着いたな」「そうね」リリムも隣でくつろいでいる。「長い戦いだったわ」「本当にな」この数年間、様々な敵と戦ってきた。契約暴走者、地獄の回収官、そしてイストリア。すべてが終わり、ようやく平和が訪れた。「でも、これで終わりじゃないわよ」リリムが総一を見る。「これから、新しい人生が始まるの」「新しい人生……」「そうよ。卒業して、就職して、そして……」リリムが指輪を見つめる。「結婚」「ああ」総一が微笑む。「もうすぐだな」「楽しみね♡」その日の午後、大学で卒業論文の発表があった。「では、霧島総一君、お願いします」教授に呼ばれて、総一が前に出る。「私の卒業論文のテーマは『愛と契約の心理学』です」教室がざわつく。「愛と契約?」「はい。人間関係における心理的契約と、その中での愛情の役割について研究しました」総一が説明を始める。「人間は、様々な関係において暗黙の契約を結んでいます」「暗黙の契約?」「例えば、恋人同士では『お互いを大切にする』という契約があります」「なるほど」「そして、その契約を支えるのが愛情です」総一が続ける。「愛があるから、人は契約を守ろうとする」教授が頷く。「興味深い視点ですね」「ありがとうございます」「具体的なデータはありますか?」「はい」総一が資料を配る。「アンケート調査とインタビューを行いました」発表は一時間ほど続いた。最後に、教授が評価を述べる。「非常に優れた研究です」「ありがとうございます」「特に、愛と契約の関係性について、新しい視点を提供してくれました」「恐縮です」「これは、優秀論文賞に値しますね」教室から拍手が起こる。「やったじゃん、総一」リリムが後ろの席から声をかける。「お前もな」リリムも同じように卒業論文を発表し、高評価を得ていた。夕方、二人は大学のキャンパスを歩いていた。「四年間、あっという間だったわね」「そうだな」「色々なことがあったわ」「ああ」心理学研究会での活動。サークルの仲間たち。そして、二人で過ごした時間。「でも、一番の思い出は……」リリムが総一を見る。「あなたと一緒にいられたこと」
Last Updated : 2025-10-26 Read more