第230話

その光景に、蓮司の指が白くなるほど強く握られた拳から、微かに骨の軋む音が響いた。しかし二人の特殊部隊の隊員がすぐそばにいたので、手出しできなかった。

大輝は、海翔が要の迫力に押されているのを見て、励ますように言った。「怖がるな。真実を話せばいいんだ」

海翔は震える手で天音を指差した。「彼女は……」

次に、蓮司を指差した。「それに彼も……

二人は……」

海翔は、今日はどうなろうと自分にとって良い結末にはならないことを悟っていた。窓の外には、すでに警察の姿が見えた。

それでも、誰かを道連れにする。「二人は……」

海翔が口を開く前に、要の合図で特殊部隊の隊員が海翔を気絶させた。

「要、どういうつもりだ？」大輝は怒りを露わにした。

「俺の妻を侮辱し、中傷したからだ」要は、菖蒲が言った「夫と子供を捨てた恥知らずな女」という言葉が許せなかった。「これ以上、好き勝手させるわけにはいかない。

こいつを連れて行け」

要が特殊部隊の隊員に視線を向けると、彼らはすぐに海翔を運び出し、警察に引き渡した。

菖蒲は要の前に駆け寄り、彼の袖を掴んだ。

大輝は慌てて菖蒲を支え起こした。「手術を受けたばかりだろ。傷も癒えてないんだから、落ち着いて話せ」

菖蒲は、要が天音に優しく接する一方、自分には冷淡な視線を向けるのを見て、胸が痛んだ。「要、私を信じないのなら、風間社長に聞いてみて。

彼女は本当に風間社長の元妻なの。

あなたは彼女に騙されているのよ！

彼女はバツイチで、再婚相手を探している女なの」菖蒲は目を真っ赤にして、涙を流した。「あなたには相応しくないわ」

その言葉を聞いて、蓮司は拳を握り締めた。

天音に相応しくないのは要の方だ。

「天音はいい女だ」要は静かにそう言うと、もう菖蒲たちの方を見ようともしなかった。

「犯人が捕まったから、警察署に行って確認してもらわないといけない。歩けるか？」要は天音を見た。この病室に入ってから、天音の顔色がずっと優れなかった。

「ええ」

天音は依然として玲奈を心配し、彼女のほうを見た。

要が全く取り合ってくれないのを見た菖蒲は、玲奈に縋りついた。「千葉さん、私は嘘をついていません。彼女は本当に風間社長の元妻で、要には相応しくないですよ」

玲奈は、菖蒲が傷口を押さえながら、顔面蒼白で泣きじゃくるのを見て、可哀想に思っ