「な……なんなら、お……俺とも寝れるって……」 「は……?」 思わず声を上げると、咥えていた煙草が口からこぼれる。とっさにお手玉したそれには、今度はしっかり火が点いていて、俺は慌ててそのフィルター側を摘み直しながら、上掛けで顔を隠したままの河原を振り返った。「俺ともって、お前とってことだよな……!? そんなこと言ったのか、木崎?」 「う、うん……それが……俺、結構衝撃で……」 そりゃそうだろうな……。 思わず口端がひきってしまう。 そんな俺をよそに、河原は続けた。 「木崎は、自分のこと男としか寝れないって言って、だからなんなら俺ともいけるって。……でも、それって要するに、暮科ともなのかなって……。そしたら、例えば暮科も……もしかして将人さんと……? え? って……なんか、考えれば考えるほどよくわからなくなっちゃって……」 ……んだよ、それは……。 俺は煙草を口に戻すこともできないまま、閉口していた。 マジ笑えねぇんだよ。 頭の中に、無駄に明るく笑う木崎の顔が浮かんでくる。それが妙に忌々しくて、煙草を持つ指先に力がこもる。 恐らくは、河原のとらえ方が微妙にずれているのだろうとは思う。それは容易に想像がつく。でもそれは木崎にだって分かるはずだ。あまり認めたくはないけれど、そういう面においてあいつは本当に聡いんだから。 ……ということは。 わざとだろ、絶対……! 差し入れだけでなく、鍵の件まで黙っていたことといい……雨降って地固まるとでも言うつもりか――。 俺は布団越しの河原をどこか遠い目で見つめながら、ため息混じりに口を開いた。「……あのな、河原。分かってるとは思うけど……木崎の言うそれは例えで……ある意味一般論っていうか。お前で言えば、相手が女ならっていう――」 それと、似たような意味で……。 けれども、そう続けようとした言葉を、俺は半ばで飲み込んだ。……自分で言っておいて、それの意味するところに嫉妬した。「……まぁ、なんて言うか」
Last Updated : 2025-11-30 Read more