「まさか、この店にあの人が来ることになるなんて思ってもみなかった よ」車から降りてお店に向かいながら、慧さんはフッと笑ってそんなことを呟く。「あっ、先に来ちゃってすいません」「いや。依那があの人を連れてきてくれたから、自分もこの店で会おうと決心出来たんだ」「そっか……。なら、よかったです」「自分の中でも確かにいつかそんな日が……なんて、心の中では思っていたような気もするよ」「はい……」女将さんと会う決心をしたからだろうか、いつもより慧さんは素直な言葉を口にする。「あっ、でも、慧さんが関わった初めてのお店とか、本村さんのご両親だとか詳しいことは一切伝えてません」「そっか。うん。わかった。じゃあ、それはちゃんとオレの口から伝えるよ」「はい」「でも。柾弥んとこの叔父さんと叔母さんには伝えてあるんだ。今日会うのが母親だってこと」「そうなんですね!」「やっぱりずっと世話になってた人たちだから。母親には絶対伝えなきゃいけないことだし、二人もずっと心配してくれてたから……」「そうですよね」「オレはまだどうしていいかわからないのに、あの二人はすでに喜んでくれてさ。あの人の詳しい話、まだ何もしてはいないんだけど、それを聞かずにあんなに喜んでくれたのがさ。あぁそれだけ心配してくれてたんだなって、ホントに胸が熱くなったよ」「素敵な方たちですね」「ホントに……。あの二人のおかげでどれだけ救われてきたか……。うん。ちゃんとそれをあの人にも伝えなきゃいけないから」慧さんのその表情と話し方で、どれだけ大きい存在だったのか、わかった気がした。そしてお店の前に着くと、慧さんは一度ドアを開ける前に立ち止まる。やっぱりまだ緊張しているのかも……。「慧さん。深呼吸しましょう」「えっ?」「はい。スー。ハー」あたしは手を広げたり閉じたりして、一人深呼吸を始める。「はい。慧さ
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