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Todos los capítulos de おいしい契約恋愛: Capítulo 371 - Capítulo 380

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371.受け入れる強さ④

 「お母さんが離れたのは、慧さんを愛しているからこそで、決して慧さんが嫌になって離れたんじゃないです。離れていてもずっと愛してる……。これが、あの時、本当に慧さんに伝えたかった言葉です」あたしは慧さんの手を握り締めながら、慧さんに届くようにと願う。「慧さんと離れてから何度も後悔して何日も泣き続けてたって、あたしに話してくれてた時も涙されてました。慧さんのことを忘れた日はないって、そう伝えてくれたお母さんからは、すごくすごく……慧さんへの大きな愛情を感じました」あたしのこんな言葉だけでは、全然その想いを伝えられないのがもどかしい。きっと本人のその言葉で伝えるのが一番で、どれほど大切に想ってるかは、きっと会って話せばすぐにわかるはずだから。それでもその何分の一でも慧さんに伝わってほしい。慧さんはずっと愛されていたということだけでも、ちゃんと知ってほしい。だけど、その言葉を聞いても、慧さんは何も反応をしない。何かを考えるかのように、あたしから視線を逸らし、そのまま下の方に視線を落とす。そして、あたしもそれ以上言葉にせず、黙って慧さんの手を握ったまま慧さんを静かに見つめる。「依那……」すると、しばらくして、慧さんがあたしの名前を静かに呼ぶ。「はい……」あたしが返事をすると、あたしが重ねていた手を動かし、今度は逆に慧さんがそっとあたしの手を握り直し、優しく触れながら静かに微笑む。正直そんな反応が返ってくるなんて思わなくて少し驚く。あたしに返してくれたその表情は、とても穏やかだった。「オレは、依那に会えなかったらどうなってたんだろうな……」「え……?」「もしかしたらそんな現実があったかもしれないと思ったら、怖くてたまらないよ……」「慧さん……?」呟くように静かに伝える慧さんに、あたしも思わず声をかける。「ありがと。依那」そう言って、穏やかに優しい表情で微笑む慧さん。「依那はどれだけオレ
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373.受け入れる強さ⑥

 「ホントは、最初は母親に会おうとは思ってなかったんだ」「え……?」「再会する前は、もちろんそんな気なかったし、あの時再会してからも、仕事相手として以外は会うつもりなかった」「再会、してからもですか……?」「あぁ……。今更会ったところでどうにもならないと思ってたし、実際のところ、母親と離れた時間があまりにも長すぎて、親子という感覚がどういうものなのか、イメージ出来なくなってしまったんだ……」「親子として会う感覚がわからないってことですか……?」「あぁ、そんな感じかな。だから、今日依那から話聞くまではさ、どこか他人事みたいな感覚だったんだよね……」「そんなにですか……?」「オレにとっては、母親とのコミュニケーション云々よりも、やっぱり”捨てられた”、”愛されてなかった”っていう思いのが強いってことなんだろうな。きっと自分の中でまずその事実を受け入れなきゃどうにもならないって少しずつ気付き始めた」「でも、それは事実じゃないですよ……?」「うん。依那からそれを教えてもらって、ようやくそうじゃないって知れた。だから今はそこからようやく抜け出せたっていうか」「そうです。今まで慧さんを苦しめてたお母さんとのことは全部正反対だったんですよ……?」「そうだな……。だから、それを知れて初めて親子としての関係を受け入れてみてもいいのかなって思った」「慧さん……」きっと慧さんなりにたくさん悩んだんだと思う。たくさん昔の慧さんに、今の慧さんに向き合ったのだと思う。きっとそれは簡単なことじゃなくて。ずっと受け入れられなかったその気持ちを、まして
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372.受け入れる強さ⑤

 「慧さん……。ギュッとしていいですか……?」「え……?」あたしはあまりにも慧さんへの想いが溢れすぎて、その想いを言葉にする。「いいよ」慧さんが微笑んでそう答えてくれると、あたしはすぐに、慧さんの背中に両腕を回し抱きつき、胸元にピッタリくっついて顔を埋める。そして、慧さんも同じように腕を回してギュッと抱き締めてくれる。「慧さん。大好きです。ホントに大好きです……」「ん。オレも。依那が愛しくてたまらない」耳元で伝わるその声で、抱き締め合ってるこの身体とぬくもりから伝わるその言葉で、あたしの心も身体も細胞もすべて愛しさと幸せで包まれていく。無理に何かを話してくれなくていい。ただ慧さんの力になれるならそれだけでいい。あたしをこんなにも必要としてくれるだけで、あたしは幸せだから。「あ~。もうこのままずっと離れたくないです」あたしは慧さんが恋しすぎて抱きついたまま素直な気持ちを呟く。「オレも、今日はずっと依那とこうしてたい……」すると慧さんもあたしと同じでいてくれているのか、同じようにそんな言葉を伝えてくれる。それは自分の慧さんへの想いが溢れているということもあるけど、なんだか今は慧さんを一人にさせたくないなんて、そんな風に思ってしまう。同じ家で同じ空間で、ただ部屋が違うだけなのに、それだけでも今は寂しく思ってしまう。今はずっと慧さんのそばにいて、慧さんに寄り添っていたい。慧さんが今どんな感情と向き合っているのかはわからないけど、でも今この時に、慧さんは自分という存在を必要としてくれている。あたしはそれだけで、自分が存在する意味みたいなものを感じてしまう。ただ一緒にいれば、慧さんが話したくなれば話してくれるだろうし、そうじゃないならただそばにいるだけでいい。だから今少しでも慧さんにとって、あたしを必要としてくれる想いがあるなら、あたしは一分でも一秒でも慧さんの力になりたい。「依那……
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374.受け入れる強さ⑦

 「慧さん。じゃあ、あたしからもお願いしてもいいですか?」「あぁ。もちろん。なんでもいって」「今日から慧さんのベッドで一緒に寝てもいいですか……?」前に、慧さんが早く帰ってきた時は、一緒に寝ようと約束していたのだけど、実際は休日ゆっくり出来る時に、何回か実現出来た程度で。平日は、やっぱり慧さんは遅く帰ってくることが多くて、慧さんが帰ってきてから慧さんが声をかけてくれる時くらいしかなかったのが現状。しかもきっと慧さんはあたしに気を遣ってなかなかそれを言ってくれなかった。早く帰ってきた時と言われた手前、自分からベッドに潜り込んで待つわけにもいかないし、かといって慧さんが帰ってくるのを待って様子を見ていても、結局は早く寝るように言ってくれて、少ししか一緒にいられないのが実は最近寂しく感じてきたりしている。「ん? 今までも一緒に寝てるだろ?」「それは、慧さんが早く帰ってきた日じゃないですか。慧さん、遅く帰ってきた日は一緒じゃなくていいって言ってましたけど、そういう時こそ一緒にいませんか?」「依那……」「きっと慧さんのことだから、あたしに気を遣って遅い時間は別でいいって言ってくれたんだと思うんですけど、やっぱりそれって寂しいんです。もっと慧さんが恋しくなっちゃうんです」「うん……」「慧さん」あたしは身体を起こして、改めてちゃんと座り直す。さっきよりも真剣な表情で慧さんを見つめるあたしの様子がさっきと違うことに慧さんも気付いて、あたしと同じように身体を起こして、あたしと向き合ってくれる。「もう何もないですか?」「何、が……?」あたしは向かい合った慧さんを見つめて尋ねる。「もうあたしに話してないことや一人で抱えてることはないですか? まだあるならもう今全部話してください。全部知りたいし、全部受け止めたいです」「いや&hellip
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375.受け入れる強さ⑧

 そのあと、あたしは少しでも慧さんと一緒の時間を過ごせるように、今日やることをいつも以上に張り切って終えて、慧さんとのまったりタイムに備える。そして、ようやくその時間になって、あたしは慧さんの部屋に向かう。別に初めてってわけじゃないけど、なぜか改めてこうやって意気込んで向かうと、いつもと違って緊張しちゃう。でも、やっぱり慧さんと過ごせる時間が来るまでが、いつもホントに待ち遠しくて。たとえそれが何時間でも、何日でも。家の中でも、どこか素敵なお店だとしても。ただ慧さんとこの先会えることが嬉しい。会えない時間も、一緒にいる時間も、いつだって慧さんを想えば、あたしは幸せになれる。「お邪魔します」「どうぞ」ベッドに座って、タブレットを見てた慧さんが、寝る準備をして寝室の入口で声をかけたあたしに微笑んで招き入れてくれる。「失礼します」と言いながらあたしはベッドの慧さんの隣に座る。「慧さん。あたしが来たらもう終了です」「え?」「それ。お仕事ですよね?」「あぁ、うん」「寝るこんなギリギリまで仕事脳でいると、ちゃんと寝られませんよ?」「確かに……」「お仕事はベッド入るまでにして、今日からはベッド入ったら二人のお話タイムです」「ん。了解」あたしのそんな提案に慧さんは素直に頷いてくれる。「ベッドでタブレットを持つ代わりに、これからはあたしがその代わりになります。はい! どうぞ!」あたしは大きく手を広げてウェルカム的に隣の慧さんを迎え入れる仕草をする。「フッ。どうぞって(笑)  そんなの……こんなタブレットより、依那の方がいいに決まってるだろ」タブレットをベッド横の棚に置き、そう言いながらそんなあたしを抱き締めてくれる慧さん。「確かに、寝る前に冷たいあんなタブレットに触れてるより、温かい依那に触
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376.受け入れる強さ⑨

「それさ……。ホントは、眠れなくなってたんだ……」「やっぱりそれは、仕事が忙しすぎてですか……?」「まぁ、もちろんそれもあるのはあるんだけど……。でもそれは、仕事をするようになってからじゃなくて。ずっと、なんだ……」「ずっと、って……?」「あの人が……、母親がいなくなってから……。それから、ずっと……」「え……」慧さんから伝えられたその言葉に、あたしは思わず言葉を失くす。「目を瞑って、眠るとさ、真っ暗になるだろ。その空間になるとさ、あの人がいなくなったあの時のことが思い浮かんできてしまうんだ……。あの人がいなくなった喪失感が、オレを飲み込んでいって、真っ暗闇のもっと深いところに引きずり込んでいく……。世界で自分だけ、たった一人になってしまったような、そんな感覚にずっと襲われてたんだ……」ポツリポツリとゆっくり呟くように、慧さんはその衝撃的な内容をあたしに告げる。過去とはいえ慧さんがずっと抱えてきた苦しさ。それがずっと現実に存在していたこと。頭ではそれを受け入れているのに、心が悲しくて辛くて壊れそうになる。あたし、全然慧さんのこと、わかってなかった……。そんな辛い現状と慧さんが闘っていたのだと、今初めて知った……。仕事が好きとか、そんなどころじゃなくて、眠りたくても眠ることが出来ない。そんな誰にもわかってもらえない自分だけでしか抱えることが出来ない、そんな怖さがずっと存在していたなんて……。「慧さん……。ごめんなさい……。そんな辛い現状と闘ってただなんて、あたし知らなくて……。なのにもっと眠ってほしいとか……」あたしは自分の未熟さと慧さんの強さに泣きそうになる。「え? なんで依那が謝るんだ……? っていうか、オレは依那に悲しんだり謝ってほしくて話したんじゃない」「でも、あたしが何も知らないとはいえ無神経に……」「無神経だなんて思ってない。依那がオレを心配してくれてるのはちゃんとわかってるから」慧さんはそう言って、あたしの顔を見ながら優しい表情をして、泣きそうになってるあたしをなだめるように、また優しく頭に触れる。「慧さん……」「オレはさ、依那に感謝してるんだ」「え……?」「依那がずっと暗闇にいたオレに光を与えてくれた」「あたしが……ですか?」「そう。依那がそばにいてくれたらさ、眠れるんだ。ちゃんと」「眠るのは、
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377.受け入れる強さ⑩

  「運命、以外にそういうの……なんて表現したらいいんですかね。あたし的には、なんか細胞レベルで求めてるくらいの方がしっくりくるかもです」「え? 細胞? ハハ。それはすごいな」あたしのその表現に慧さんが笑う。「そっか。細胞か。うん。確かに。オレも依那はそれくらいの存在で感覚かも。じゃあ……、オレらは一生離れられないな」「はい。離れるなんて一生無理です」そう言いながら、お互いまたギュッと抱き締め合う。慧さんはあたしの背中と頭をそれぞれまた両手で包み込むように抱き寄せてくれて、あたしはスッポリと慧さんの体の中に埋まる。やっぱりこうやって大きな手で、大きな体で抱き締めてもらえると、守ってもらえてるようで嬉しくなる。だけど、慧さんが素直な気持ちを伝えてくれたことで、一方的に守られてるだけじゃなく、あたしも守ってあげたいという想いが芽生える。そんな気持ちおこがましいのかもしれないけど、でもあたしはなぜかそんな二人になれたことが嬉しく思えて。慧さんにちゃんと弱みを見せてもらえたことや、本音を話してもらえたことは、あたしにとって、とても大きなこと。それはきっと、慧さんが心を開いて心を見せてくれたということだから。「慧さん。いつでも頼ってくださいね?」「……え?」「慧さんにはあたしがついてますから。いつでも慧さんの心を預けてください。どんなことがあっても一緒に乗り越えましょ?」「ハハ。頼もしいな。あぁ……。依那がいてくれたらきっとどんなことがあっても乗り越えられるよ」いつもと違う、ここがベッドという場所だからなのだろうか。それともずっと確認し合っている想いが、お互い常に溢れているからだろうか。いつも以上に、慧さんを近くに感じられる。心も身体も。今までで一番触れ合えて寄せ合えてるような気がする。心と身体を丸ごと抱き締めてわかり合えているような……。守ってほしくて、守ってあげたくて。わかってほしくて
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378.望んでいた幸せ①

 「こんばんは」「あら。依那ちゃん、いらっしゃい」それから数日経ってから、あたしは慧さんのことを女将さんに報告するためにお店に顔を出した。「今日は……?」「えっと、お客として食べに来たのと、あと少し時間があったら女将さんお話出来たりしますか?」「えっ?  えぇ、もちろん。じゃあ落ち着いたら時間作るわね」「はい。お願いします」少し遅めの時間にお店に行き、お客さんが少し少なくなってきた頃、女将さんの仕事も落ち着き、店で待っていたあたしの元へと女将さんが来てくれる。他の人には聞かれないように、少し離れた席で女将さんと二人で話すことになった。「すいません。わざわざ時間作ってもらっちゃって」「いいのよ。もうお店は常連さんばっかりで大将が付き合ってくれてるから。それより依那ちゃんが改まって話したいだなんて、慧……のことかしら?」女将さんはすでに気付いていて、穏やかにあたしに尋ねる。「はい。女将さんのこと、慧さんに全部話しました」「そう……。あの子、戸惑ってたでしょう……?」「まぁ……戸惑ってないと言ったら嘘になります。でも、伝えてよかったです」「え……?」「慧さん。ちゃんとわかってくれました」「わかってくれたって……?」「あっ、わかってくれたって言っても、あたしの伝えたいことというか。女将さんの想いとか、ちゃんと知ってほしいこと、伝えたら、慧さんはちゃんと受け取ってくれました」「そう……」「正直。お二人のことは、当人同士しかわからない状況だったり、想いだったりがあると思うんです。だから当然あたしでは女将さんの想いも全部ちゃんと伝えられるわけではないし、慧さんの想いもやっぱりあたしがちゃんと受け取れるわけではないと思います」「それはそうよね……」「だけど、今の二人ではお互いどうしても伝えられないこともあると思うんです。だから、あたしが伝えられることがあるなら、お二人の力になりたくて……」
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379.望んでいた幸せ②

 「そう……。じゃあ、決して無理してってわけではないの?」女将さんが心配そうに確認してくる。うん。やっぱり女将さんも気になるとこは同じだ。「もちろんです! あたしも実はそれ気になって、そのまま聞きました。無理してないですか? って」「そしたら無理はしてないって。穏やかにいられてるし、あたしが一緒にいることで、安心してくれている……ようなこと言ってくれました」「そう……。それだけ慧にとって依那ちゃんは心から信頼できる大切な存在ということなのね……。依那ちゃんが慧をそこまで支えてくれているなんて、本当に嬉しいわ」「いえ、こちらこそです」「普通ならきっと受け入れられないような状況なのに、依那ちゃんがいてくれることで受け入れようと一歩踏み出してくれるだなんて……、なかなかないことよね……。それを決心してくれた慧も有難いし、そしてそこまでの気持ちにさせてくれた依那ちゃんに本当に感謝してもしきれないわ」「いえホントにあたしは何もしてないです。ただ慧さんが好きで、慧さんのそばにいるだけです」「そうね。そういう依那ちゃんだから、慧はきっとすべてを預けたいと思っているのでしょうね」「そうなんですかね……」「えぇ。慧にとって、依那ちゃんのすべてが支えになっているということね。存在も言葉も想いも接し方も、依那ちゃんだからこそ慧に届いていて、そして慧にとって依那ちゃんは誰でもないかけがえのない特別な存在なはずよ」「だったら嬉しいです」女将さんがたくさん嬉しい言葉を伝えてくれる。うん。女将さんが言ってくれてるような存在にホントになれているのだとしたら……。すごくすごく嬉しい。そして、それをお母さんである女将さんに言ってもらえていることが、また今までとは違う嬉しさが込み上げてくる。「きっと慧が私と会おうと思ってくれたのも、きっと依那ちゃんのおかげね。本当にありがとう」「いえいえ! とんでもないです! でも。慧さんが自分からそう言ってくれたのが、あたしもホントに嬉しくて。慧さんがち
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380.望んでいた幸せ③

 「依那。今日はありがとな」「こちらこそ。あたしも一緒に連れてきてくれてありがとうございます」今日は慧さんと女将さんが親子として改めて顔を合わせる日。大将のお店との仕事が始まる前に少しでも今の複雑な気持ちを解消しておきたいと、慧さんが早めに仕事を調整して時間を作ってくれた。そして待ち合わせをしているお店は、もちろんこの前と同じ店の慧さんが初めてプロデュースした本村さんのご両親のお店。女将さんに前に会った時に、あの店でとは事前に伝えはしていたけれど、実はあれはただのあたしの願望で。絶対あのお店で会ってほしかったから、慧さんにあのお店で会いたいということを伝えようと思っていた。だけど、この話になった時、あたしが伝える前に、慧さんがその店でと言ってくれた。それだけであたしはもうすでに胸がいっぱいになって。慧さんの初めてプロデュースしたお店でお母さんと会うということは、きっと慧さんの中で何かを決心したからなのだと思う。きっとホントに憎んでいたりしたら、そんな大切な場所で絶対会おうだなんて思わないはず。きっと慧さんはその場所で会いたかった。きっとそういうことだと思う。「依那がいなきゃ意味ないよ。まだオレ一人だけじゃどうしていいかわからなくなる」「はい。あたしがついてるので大丈夫です!」店に向かう車の中、あたしは助手席から慧さんに元気よく伝える。あたしはいつも通りあたしでいないと。慧さんはきっとまだ複雑な想いのままいるはず。きっとその気持ちは、慧さん次第で上がりも下がりもする。不安に感じるとそっちに持っていかれてしまう。だけど今日はそういう気持ちはすべて過去に置いてきてほしくて。とにかく明るく前向きになれるように。慧さんがこの状況を自然に受け入れやすくなるように。あたしは一切不安を持つことなく、何があったとしても今の慧さんのすべてを丸ごと包み込んであげられるくらいの自分として隣でいられ
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