「依那ちゃん……。一つ、聞いていいかしら……?」「あっ、はい」「慧が……。どうして捨てられたと思っていたのかわからなくて……。実は、私たちは慧を手放す条件として、ある条件をお互い決めたの」「条件……」「えぇ。まず向こうの条件として、慧があたしに想いを残すことを向こうは不本意に思ってたから、慧とは別れをハッキリさせず自然に離れるということ。そして、私はその条件を受け入れる代わりに、すぐじゃなくてもいいから慧がその状況を理解出来る年齢や環境になった時でいいから、私が離れたのは決して慧を嫌になって離れたわけではなく、慧を愛しているからこそ離れたのだと伝えてほしいと……。私は離れていても、あなたのことをずっと愛していると、それだけを私はあの人にお願いしたの」「そんな条件を……」「なのに、どうして、慧は捨てられただなんて……」女将さんの慧さんの愛の大きさや深さを感じて泣きそうになる。こんなにも慧さんを愛していた人だったのに、慧さんはその想いを知らず、誰にも愛されない自分だと思い込んで、今まで過ごしてきた。そんな悲しい現実……。悔しい。悔しい。もしその女将さんの想いを知っていたら、慧さんはもっと愛というモノを信じることが出来ていたのに……。だけど、慧さんの話を思い出せば、女将さんが約束したその条件は、きっと守られていない……。慧さんはそれどころか引き取られた実の父親にも愛されているか確信を持てなくて、その家で幸せにしてもらうことはなく居場所がなくなってしまった。もしかしたら、新しく自分たちの子どもが出来るまではそうしていたのかもしれない。幸せにするはずだったのに、どこからか、きっと何かが狂ってしまった。きっとその奥さんも実の血の繋がっている子供が出来れば、そりゃそっちに愛情を注いでしまうのだろう。それなら、せめて実の父親は、慧さんを最後まで愛し続けてほしかった。そこまでして二人を引き離した責任があるのだから、途中で手を離さないでほしかった……。「きっと、慧さんは……。その女将さんが伝えてほしいという想いを、知らないんだと思います……」「えっ……? それは、どういう……」「慧さん。人を好きになるのが怖いって言ってました」「え……?」「誰かを信じて愛すことが自分には出来ないって……」「でも依那ちゃんは……?」「はい。あたしと出会
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