Semua Bab おいしい契約恋愛: Bab 361 - Bab 370

385 Bab

361.深い絆④

「依那ちゃん……。一つ、聞いていいかしら……?」「あっ、はい」「慧が……。どうして捨てられたと思っていたのかわからなくて……。実は、私たちは慧を手放す条件として、ある条件をお互い決めたの」「条件……」「えぇ。まず向こうの条件として、慧があたしに想いを残すことを向こうは不本意に思ってたから、慧とは別れをハッキリさせず自然に離れるということ。そして、私はその条件を受け入れる代わりに、すぐじゃなくてもいいから慧がその状況を理解出来る年齢や環境になった時でいいから、私が離れたのは決して慧を嫌になって離れたわけではなく、慧を愛しているからこそ離れたのだと伝えてほしいと……。私は離れていても、あなたのことをずっと愛していると、それだけを私はあの人にお願いしたの」「そんな条件を……」「なのに、どうして、慧は捨てられただなんて……」女将さんの慧さんの愛の大きさや深さを感じて泣きそうになる。こんなにも慧さんを愛していた人だったのに、慧さんはその想いを知らず、誰にも愛されない自分だと思い込んで、今まで過ごしてきた。そんな悲しい現実……。悔しい。悔しい。もしその女将さんの想いを知っていたら、慧さんはもっと愛というモノを信じることが出来ていたのに……。だけど、慧さんの話を思い出せば、女将さんが約束したその条件は、きっと守られていない……。慧さんはそれどころか引き取られた実の父親にも愛されているか確信を持てなくて、その家で幸せにしてもらうことはなく居場所がなくなってしまった。もしかしたら、新しく自分たちの子どもが出来るまではそうしていたのかもしれない。幸せにするはずだったのに、どこからか、きっと何かが狂ってしまった。きっとその奥さんも実の血の繋がっている子供が出来れば、そりゃそっちに愛情を注いでしまうのだろう。それなら、せめて実の父親は、慧さんを最後まで愛し続けてほしかった。そこまでして二人を引き離した責任があるのだから、途中で手を離さないでほしかった……。「きっと、慧さんは……。その女将さんが伝えてほしいという想いを、知らないんだと思います……」「えっ……?  それは、どういう……」「慧さん。人を好きになるのが怖いって言ってました」「え……?」「誰かを信じて愛すことが自分には出来ないって……」「でも依那ちゃんは……?」「はい。あたしと出会
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362.深い絆⑤

「あの……。これ以上事実を聞くのは辛いとは思うのですが……。でも、こんなにも慧さんを愛されているお母さんには、慧さんの想いを知ってもらいたいです……。だから、もし女将さんが大丈夫なら、あたしが聞いた慧さんのことお話したいです……」だから……、あたしはその想いを、そのまま女将さんに伝えた。「依那ちゃん、ありがとう……。えぇ……。依那ちゃんが知ってること全部教えてちょうだい……」そして涙を拭いながら、女将さんは笑ってそうあたしに告げる。「大丈夫、ですか……?」「大丈夫よ。あの子の今まで感じてきた苦しみを、ちゃんと私は知る権利があるもの」「女将さん……」そう伝えてくれる女将さんは、母親として強い意志を感じるような……。その言葉にも、その表情にも、そんな力強さが、今度は存在していた。「女将さんは、慧さんのこと手放されてから、その後のこととかいろいろ聞かれたりしてたんですか?」「いいえ……。向こうは一切そういうのは教えてくれなかったわ。だから、正直ビックリしたの。あの子が父親の事業を継がず、自分の会社を経営してるってこの前知ったから」「やっぱりそういうことだったんですね……。じゃあどうしてそうなったかは何も……?」「えぇ……。あの人はそれが目的で慧を引き取ったはずなのに……」「慧さんが引き取られた時は、自分の家の子供のように可愛がってもらってたそうです。だけど、いつからか母親をいなくなったものと思えと言われて、なんの説明もなく会えなくなったって言ってました」「やっぱり、なんの説明もしなかったってことね……」「はい……。その時慧さんが、自分を一番愛してくれていたお母さんが何も言わずにいなくなったことで、他に大事なモノが出来て自分は捨てられたんだと、そう思ってしまったって……」「あぁ……。やっぱり自分の言葉でちゃんと伝えるべきだったのね……。今更後悔したって遅いけれど……。例え離れることになっても、あの子に "私はあなたを愛している" と伝えられていたのなら、あの子にそんな辛い想いさせなくてよかったはずなのに……」女将さんのその言葉に、その当時に女将さんが抱いていた想いと決意がどれほどだったのかがわかる。本当は心からその言葉を一番伝えたかったはずなのに、それを伝えられなかった辛さ。ホントはちゃんと愛はそこに存在していたはずなのに、その想いを
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363.深い絆⑥

「今の慧さんの会社は、その本村さんと作った会社なんですよ?」「その方と二人で?」「はい。慧さんが社長で、本村さんは副社長兼秘書で。本村さんはすごく頭が冴えて気を回せて、とても優秀な方です。その本村さんとは、食べ物や考え方とかすごく気が合うし、お互いの得意なことをそれぞれ活かして支え合いながら共に人生を過ごして、そしてお二人でこの会社大きくされてきました」「そう……」「慧さんがされてる仕事ってホントすごいんです。いろんな飲食店プロデュースしてる会社なんですけど、慧さんは普通社長がやらないところまで全部チェックして把握していたり、プロデュースが終わったお店ともその後もずっと関わり続けてサポートされてます。とにかく慧さんは人と向き合うこの仕事をとても大切に思われていて、人として常に気持ちを向けて返してる人なんです」「人間不信になっていた慧が……?」「だからだと思います」「え……?」「そこまで人に敏感になったからこそ、慧さんは向き合えているんだと思います。きっとどこかで誰より人を信じたいと思ってるんじゃないかなって……」「信じたい……」女将さんはその言葉の意味を確かめるように、その言葉を繰り返して呟く。「慧さんは結局関わった人たちのことを信じて仕事をしているんです。その人たちの才能やそこからの可能性や人柄。すべてを信じたいと思っているからこそ、どこまでも慧さんは向き合おうとしてるんじゃないかな……」あたしはそれを女将さんに伝えることで、改めてその慧さんの人柄や素敵なところを実感する。そういう人だったんだと、また改めて確信して、やっぱり慧さんが素敵な人で、そういうところが好きなんだと気づき直して、また嬉しくなる。「あたしも亡くなった母と行った素敵なカフェみたいなお店を、いつか自分もプロデュースしたくて、慧さんの会社に入りました」「あぁ、依那ちゃんは慧の会社で働いてたんだったわね」「はい。慧さんはあたしにとって、憧れの人です。仕事に対しての志も、それを実現させる力も、すべてがすごい人なんです」「そう……」「そんな人の元で今働けて夢に向かって頑張れていること、そして、そんな慧さんとお付き合い出来ていること。ホント自分にとってはすべてが奇跡で、毎日夢のようです」あたしの言葉に、穏やかに微笑みながら耳を傾け、少しの言葉だけで反応してる女将さんを
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364.深い絆⑦

「依那ちゃん。ありがとう……。慧を好きになってくれて……。それだけの想いをしていた慧が、依那ちゃんのことは信じられたってことね……」「そうだと嬉しいです。でも、最初はあたしの好きと同じになるまで時間かかりました。誰かを信じること、愛することも怖かったって……、とても恋愛にもお付き合いすることにも慎重でした」あたしが知らなかった過去の慧さんを初めて知った今、どれだけ愛や人に裏切られて信じられなくなったのかがようやくわかる。自分が信じようと思っていた人に、どんどん裏切られて離れられていく現実。女将さんはこんなに愛していると知らないまま、慧さんはきっとその現実だけでずっと一人苦しんできた。女将さんのこの愛情も意図的に奪われ、慧さんにもその愛情が届かなくて。その新しい家族からもいつの間にか愛情を向けられなくなって……。あたしが好きだと伝えた時に、どうしてあんなにもすぐに好きになろうとしなかったのかがよくわかった。好きになるのが怖い、信じるのが怖い。幼いながらにその現実と向き合っていた慧さんの心は、どれほど傷ついていただろう。叶うのなら今すぐその頃の慧さんに会いに行って、抱き締めてあげたい。"あなたはホントはとてもお母さんに愛されている人なんだよ"と。"大人になったあなたは、ある女性からとても愛される人生になるんだよ"と。お母さんである女将さんのことも、今の自分のことも、どれだけ愛されているのかをちゃんと伝えてあげたい。そして……、今の慧さんにも、この女将さんの気持ちをちゃんと伝えてあげたい。いや、伝えなきゃいけない。慧さんはまだこの女将さんの……、お母さんのこんなに愛されているという事実を知らない。きっとそれを知らない限り、いくらあたしが好きだと伝えても、慧さんにホントの意味であたしを好きになってもらえてない。もしかしたら、きっとまたあたしの愛も不安になったり心配になっているような気がするから。あたしがどれだけ離れないと伝えても、きっと慧さんの中で、この過去が残り続けてる限りは、慧さんの中できっとどこか不安が続いてしまう。こんなにもあたしはずっと慧さんへの想いを愛を伝えているのに、どこかしらまだ信じられていないような、そんな気がするから。例え女将さんと慧さんと二人の昔の時間は取り戻せなくても、これからの二人の時間はいくらでも作るこ
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365.深い絆⑧

 「だけど、すごく嬉しいです」「え……?」「女将さんが、……お母さんが、こんなにも慧さんのことを愛していたのだと知れて」それを知れただけでも、なんだか胸がいっぱいになる。「そんなの当たり前よ。慧のことを忘れた日なんてなかったわ。慧のことはちゃんと今の主人にも話してあるの」「そうなんですか?」「えぇ。私にとっては愛する息子だから。今は会えなくても、そんな存在が私にはいること、ちゃんと伝えておきたかったの」「素敵です……」「主人も元々子供好きな人で、とても優しい人だから、その話を聞いて、”いつか会えるといいね”って、そう言ってくれたの。それを聞いて、”あぁ、私はとても素敵な人と一緒になれたんだな”って、とても幸せに思えたわ」女将さんは穏やかに幸せそうに笑みを浮かべながら伝えてくれる。「ご主人。やっぱり素敵な人ですね」「えぇ。私にはもったいないくらいの人よ。だけど、慧と離れてそんな状況になって自分の人生が嫌になったの。愛する息子を自分の手で育てられない辛さと悲しさ。その時いくら悔やんだって、もう慧は帰ってこない。自分の選択に何度も後悔した。何日も泣き続けた。そんな時にね、今の主人に出会って、そんな私をずっと支えてくれた。こんな私でもいいからと、主人は私と人生を歩んでくれることを選んでくれたわ」「慧さんにとって本村さんがいてくれたように、女将さんにもご主人がいてくれたってことですね……。二人ともとても素敵な方に巡り合えて支えてもらえていたことで乗り越えられて、そしてきっと今のこの再会が実現したんでしょうね」「あぁ、そうね……。そうかもしれないわね。主人と一緒にならなければ、きっと慧とも出会えてなかったわけだものね」「はい」女将さんも旦那さんという、とても心強い理解ある素敵な人がそばにいてくれたことで、きっといろんなことを今まで乗り越えてこれたんだろうなぁ……。大将が元々いい人なのはすでに知っていたけれど、思っていたより、二人の夫婦の絆としてもとても強いことを更に知った。大将は
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366.深い絆⑨

「依那ちゃんは、私たちにとって幸せを運んできてくれた天使みたいなものね」「えっ!?  天使!?」「そうよ? 依那ちゃんが私たちのお店に来てくれなければ、そもそも私たち親子は再会出来ていないもの……。依那ちゃんが慧の会社に入ってくれて慧を好きになってくれたから、慧をあの日お店に連れてきてくれて、私たち親子は出会うことが出来た」女将さんがそう言いながら穏やかに微笑む。「わぁ……。ホントだ。もしかして、あたしが全部繋げることが出来てるってことですか……?」「そうね。依那ちゃんがいなければ、私たちの再会はなかったわ」「そっか……。あたしが二人を巡り合わせたってことですよね……。嬉しいです……」「依那ちゃんには感謝してもしきれないわ」「いえ、とんでもないです。女将さんにもご主人にもホントにずっとお世話になっててこちらこそ感謝してます。母が亡くなって、女将さんのこと、勝手に親代わりみたいな感覚に思っちゃってることもあって」「ホントに……?  依那ちゃん、そこまで思ってくれてたの?」「はい。すいません……。図図しくて」「いえ。依那ちゃんにそんな風に思ってもらえてたなんて嬉しいわ」「良かったです! ってちょっと待ってください。よく考えたら、慧さんのお母さんを勝手にあたしそんな風に思ってたってことですよね……!」「あら、そう言われればそうね」「うわぁ~なんか厚かましいというか、嬉しすぎるというか」そっか、そうだよね……。今までは、普通に慕っていたからそう思うのに特に抵抗を感じなかったけど。あたし、慧さんのお母さんをそんな風に思ってたってことだよね……。改めてそう考えると、自分が自然と慕っていた女将さんは、実は大好きな慧さんを産んで育ててきた実のお母さんだっただなんて、自分にとって当たり前だったことが、実はすごい巡り合わせとして存在していることなのだと気付いて、胸が熱くなる。大好きな慧さんのお母さんなら、そりゃあたしも自然に慕っちゃうよな……。「私も慧の彼女が依那ちゃんで、とっても嬉しいわ。依那ちゃんがいい子だってことは昔からとてもよく知ってるし、依那ちゃんのその優しくて明るくて元気なところに、きっと慧も惹かれて、そして救われているのね」「そうだったらいいな」そう呟いた頭の中には、もちろん慧さんが浮かんでいて。慧さんがそんな風に思ってくれ
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367.深い絆⑩

「だけど……。あの子、仕事でこれから私と付き合っていくこと、大丈夫なのかちょっと心配だけれど……」すると、今度は急に母親っぽい表情になりながら、ふとそんなことを口にする女将さん。「心配、ですか?」「えぇ。やっぱりあの子は捨てられて恨んでるだろうし……。なのに仕事をちゃんと引き受けてくれて……」「慧さんはきっと嫌なら声をかけてないと思います。それに、恨んでもないと思います」「そう……かしら……」「はい。慧さんは、過去を悲しんではいますけど、だからといって恨んでるわけじゃないはずです」「どうしてそう言い切れるの……?」「それは慧さんがお母さんとの素敵な想い出や時間を話してくれたからです」「慧が……?」「はい。お母さんと贅沢じゃないけど、二人で過ごせて幸せだったって。自分が喜ぶ顔を見るのが好きで、いろんなところに食べに連れて行ってくれてたって。その時間がすごく好きで、一緒に美味しいと笑い合う時間が幸せだったって、慧さんとても素敵な表情で話してくれてました」「慧が……そんなことを……。ちゃんとそんな想いまで、あの子はわかってくれてたのね……」「はい。だから恨んでるなら、あんな幸せそうな表情してそんなこと言わないと思います。あたしが絶対それは保証します」あの時の慧さんは確実にきっとそうだった。あの話をしている慧さんから、どこにもそんな後ろ向きで否定的な部分は感じられなかった。その時のことを思い浮かべて、あんな表情をしていたのは、きっとその頃の二人の想い出は、確実に幸せだったということだから。「依那ちゃん……。ありがとう。ホントにありがとう……」女将さんは、また少し目を潤ませて何度もお礼を伝えてくれる。「だから……。ちゃんと、お二人で会ってください。私も一緒でも良ければもちろんご一緒します。とにかく女将さんは慧さんにそれだけ愛していたこと伝えてあげてください。過去に戻るんじゃなく、この先の未来で慧さんが幸せになれるように。慧さんの不安な想いを全部ちゃんと埋めてあげてください。お母さんの愛でいっぱいにしてあげてください」女将さんに、慧さんのお母さんとして今日話せたことで、二人の親子としての関係が不安や心配ではなく、安心に変わった。お互いの想いを伝え合えれば、きっと二人の幸せが生まれる。あたし以上に二人がもっと大きな安心と幸せを実感出来る
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368.受け入れる強さ①

「慧さん。おかえりなさい」女将さんに会った日の夜。仕事から帰ってきた慧さんを玄関で出迎える。「ただいま」出迎えたあたしに慧さんは、いつものように笑顔で返してくれる。「あの……慧さん。お疲れのとこ申し訳ないんですけど、少しお話出来ますか……?」「えっ、あっ、うん。わかった」いつもと違う様子のあたしに少し不思議そうな反応をしながらも、慧さんは特に何も触れずにリビングのソファーへと座る。「どした? 依那」隣に座ったあたしに慧さんがすぐに尋ねてくれる。「あの……。これを話して、慧さんがどう思うかはわからないんですけど……。もしかしたら慧さんにとったら不愉快に思うかもしれなくて……。でも、あたしは、どうしてもこれはちゃんと伝えておきたくて……」今日の女将さんとのことを慧さんに伝えようと、その時は強く決心したけれど。いざ慧さんを目の前にすると言葉が詰まる。慧さんが傷ついたらどうしよう。慧さんが嫌な気持ちになったらどうしよう。必要以上に踏み込んでしまったあたしに愛想尽かされたらどうしよう。余計なことすんなって言われたらどうしよう。慧さんを想って伝えたい事実と言葉なのに、冷静になった今は、ホントに慧さんに女将さんのことを話すことが正解なのかがわからなくなってくる。女将さんのことを伝えたい気持ちはすごくあるけど、だけど、それを伝えたことで、慧さんが傷つくことになるのなら……、そんな風に思うと躊躇してしまう。きっと慧さんの中でお母さんのことは、ずっと封印してきたパンドラの箱みたいなもので。初めて二人が再会した時は、慧さんからその話をしてくれたけど、でもそれは慧さんの中でどう感じているのかはわからない。あの時は話してくれたけど、もしかしたらもうその話には触れたくないかもしれない。そんなことを思い始めたら、どうしていいか戸惑ってしまう。「依那? なんかあった……?」なかなかそこから話し出さないあたしを心配して、慧さんが顔を覗き込み声をかけてくれる。「あの……実は、あたし……」「もしかして……」いざ決心をして、ようやく話始めようとすると、慧さんがボソッと呟いた。「他に……好きなヤツでも出来た……?」慧さんはあたしから視線を外し、目の前を見つめ、静かにあたしに呟く。「……ん? え??」まさかの思ってもいない言葉が慧さんから飛び出し
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369.受け入れる強さ②

「いいよ。言って?」頬に触れたまま、優しくあたしをまっすぐそのまま見つめる。「あの……」「うん」「今日……。女将さんと、会いました」一瞬あたしがそう告げた瞬間、慧さんの動きが止まる。「……そっか。また……料理でも習ってきたのか……?」慧さんはそう言いながら、女将さんの話をした瞬間、触れていた手を静かに外し、視線もあたしから逸らす。「……いえ。今日は、慧さんのお母さんとして会ってきました……」そして今度はあたしが慧さんの方に体ごとしっかり向き、視線を逸らした慧さんを隣からじっと見つめる。「え……?」あたしがそれを伝えると、慧さんは少し驚いた複雑な表情をしながらあたしを見る。「ごめんなさい。勝手なことして」あたしはまず最初に頭を下げて慧さんに謝った。「いや……。別に、謝る必要はないよ……。元々依那とあの人は顔見知りなわけだし。しかも依那はずっと慕っていたんだから、会うのにオレに遠慮することない」「はい……。でも。今回は女将さんとしてじゃなく、慧さんのお母さんとしてなので……」「それは……、どういうこと……?」慧さんが静かに呟くように尋ねる。その声はいつもより冷静に聞こえて……。慧さんがどう感じているのかが怖くて、また躊躇してしまう。「あの……、あたし……」無意識に俯いたままで、上手く言葉が出てこない。女将さんに会いに行った時は、”自分が出来ることをしたい”、”慧さんの気持ちを女将さんに伝えたい”、”女将さんの気持ちが知りたい” と、自分が思ったそれらをなんとか出来ればと思っていた。だけど、慧さんを前にして、慧さんの立場にふと立った時、それはホントは余計なお世話だったんじゃないかとも思い始めてしまう。頼まれてもないのに勝手に会いに行って、もしかしたら慧さんはまだ過去を振り返るのが辛いかもしれない。もしそうだったとしたら、あたしがしたことは果たしてよかったのかと、急に不安になってしまう。「依那?」そう思ったまま言葉に詰まるあたしを前にして、慧さんが優しく声をかける。「別に責めようと思ってるわけじゃないから安心して」「え……?」「依那はオレのために会いに行ってくれたんだろ……?」そう言って、優しく微笑んでくれる慧さん。「はい……。あたし、どうしても女将さんの……、慧さんのお母さんとしてのホントの気持ちが聞きたく
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370.受け入れる強さ③

 「慧さんの過去。全然悲しくなんてないですよ?」「え?」「慧さん。すごく愛されてます」あたしは一番伝えたいその言葉を、まずは慧さんに微笑んで伝える。「愛されてるって……?」あたしのその言葉にまだピンと来てないのか、少し慧さんは顔をしかめる。「慧さんは、ずーっとずーっとお母さんに愛されてますよ?  過去も、もちろん今も」あたしはその表情を崩したくて、また微笑んで慧さんをそう言って見つめる。「オレが……?  あの人に……?」「はい」「まさか……」だけど、やっぱり今までの時間がそうさせてしまったのか、慧さんはそれを素直に受け取ってくれない。「なら……、なんであの時オレを捨てたりなんか……」「それが違ったんです」「違うって……?」「お母さんは慧さんを捨てたりなんかしてないです」「あの時から一度もオレの前に顔を出さなかったのに……?」「お母さんは、慧さんの幸せを思って離れたんです」「オレの幸せを……?  離れることが……?」「はい……。いや、違うな。ホントは離れたくなんかなかったんです。だけど、そうするしかなくて……、どうしようもなかったから……」「それは、どういうこと……?」「慧さんのお父さんが、自分の会社を継がせたくて慧さんを引き取りたいと言ってこられて……。もちろん最初は断られたそうです」慧さんはあたしの方は見ずに耳だけを傾けている。「だけど…&hel
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