祐介は過去を振り返り、智美と一度も祝日や記念日を一緒に過ごしたことがないことに気づいた。いや、誕生日は一度だけ、一緒に過ごしたことがあった。だがその日、彼は怒りを爆発させてケーキをぶちまけた。それ以来、彼女はもう彼の誕生日を祝おうとしなくなった。その後、どんなイベントがあっても彼女は一切口に出さなかった。そのことを思い出すと、祐介の胸にじわりと罪悪感が広がった。以前は自分なりに彼女に尽くしていたつもりだった。だが、実際はただの一度も心を通わせる日を共に過ごしていなかったのだ。「……じゃあ、レストランでも予約してくれ」「かしこまりました、社長」本当は電話をかけて、クリスマスイブのディナーに誘おうと思っていた。けれどさっき彼女に電話を切られたばかりだったのを思い出し、考え直した。当日は、直接迎えに行けばいい。その頃会社に入ってきた千尋は、アシスタントの伊藤がクリスマスイブのレストランを予約しているのを耳にし、心の中で喜びがはじけた。もしかして祐介が私を食事に誘おうとしてるの!?何も聞こえなかったふりをして、そのままオフィスに入った。祐介は彼女を見ると少し柔らかい表情になった。「どうしたんだ?突然」千尋は彼の隣に座り、甘えるように言った。「祐介くん、今夜あなたの家に行って、お母さんと一緒に食事しようかなって思って。ずいぶん会ってないから、会いたくて」しかし祐介はすぐに母親が彼女をあまり好いていないことを思い出した。二人を会わせるのは避けたい。「母さん、最近は海外に行ってるんだ。しばらくは戻らないから、また今度にしよう」千尋は唇を噛みしめた。今日、彼の母親をデパートで見かけたばかりなのに。どうして嘘をつくの?智美と離婚したのだから、これからは自分と結婚してくれると思っていた。けれど、なぜか祐介は結婚の話を一向にしようとしない。まさか、まだ智美のことを……だが、彼が愛しているのは自分のはずじゃないの?焦りを感じた千尋は、彼の手を握りしめて尋ねた。「祐介くん、私のこと……まだ愛してる?」祐介は彼女の手の甲に軽くキスをして笑った。「バカだな、なんでそんなこと聞くんだ? もちろん愛してるよ」「じゃあ、なんで結婚してくれないの?」その言葉に、祐介は少し困惑した顔を見せた。「千尋ちゃんがイギリスに行く前、言ってたじ
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