ちょうどその時、電話の向こうの悠人が「今、礼二が着いたはずだ」と告げた。さらに、メッセージアプリで礼二本人の写真を送ってくれた。智美は送られてきた写真と、ドアの前に立つ人物の顔が一致することを確認し、ようやくドアチェーンを外した。「あの……桃田礼二さん、ですか?悠人のご友人の……」目の前の男は体格が良く、無骨な顔立ちをしている。ラフなデニムのジャケットとパンツ姿だった。「ああ、そうだ。あんたが智美さん、だな?」礼二は口数の少なそうな男だった。単刀直入に切り出す。「中、入っても?悠人の奴から電話じゃ要領を得なくてな。まだ状況が掴めてない」悠人の友人だという、それだけで、智美は彼を信頼し、部屋に招き入れた。礼二は事の顛末を聞き終えると、険しい顔で眉をひそめた。「あんた、知らなかったかもしれんが。あの漁村は、地元の警察ですら手を出したがらない連中の巣窟でね。連中の結束は固くてな。そこから人を探し出すのは、正直、容易じゃねえぞ」「そ、そんな……じゃあ、どうすれば……」智美は焦りを隠せない。「まあ、そう心配すんな。こっちもツテを辿って情報を集めさせてる。今夜は俺がドアの前で見張ってるから。あんたは少し休め」そう言うと、彼は部屋を出ていき、ドアを閉めた。智美が覗き穴からそっと見ると、礼二はドアの前の床に座り込み、小声で誰かと電話をしながらタバコを吸っていた。その無骨な背中に守られている安心感からか、彼女は寝心地の悪いベッドに横になり、少しでも体力を回復させようと目を閉じた。極度の緊張が続いていたせいか、一度緩むと、そのまま深い眠りに落ちてしまった。はっと目が覚めてスマホを確認すると、なんと十時間近くも眠り込んでいた。慌てて飛び起き、身支度を整える。コートを羽織ってドアまで行き、覗き穴から外を見ると、礼二はまだそこにいた。そして……悠人も来ていた。おそらく、眠っている彼女を起こすのをためらったのだろう。二人とも、ずっとドアの外に立っていたのだ。智美は慌てて鍵を開け、ドアを開いた。悠人の顔を見た途端、安堵と喜びが一度に込み上げ、智美は思わず彼の胸に飛び込んでいた。悠人もまた、彼女を強く抱きしめた。このまま自分の体に溶かし込んでしまいたいと願うほど、強く。彼はヘリコプターを飛ばして来たのだ
Baca selengkapnya