翔太は苦笑いを作って、その場をごまかした。「その件は、また改めてご相談させてください」軽くあしらわれたと感じた篤は、露骨に不機嫌な顔になった。彼は矛先を智美に向けた。「そこの君。聞くところによると、君は以前高橋先生のもとで学んでいたそうだな。つまり君は高橋先生の『生徒』だろう?高橋先生は体調が悪いと言って、俺の酒が飲めん。君は彼の生徒として、代わりに二杯くらい飲むのが筋じゃないか?そうでないと、酒を勧めた俺の顔が立たないだろう」智美は眉をひそめた。何より、こういう酒席の悪習は大嫌いだ。それに、相手はスポンサーだが、自分と翔太は招かれた外部の協力者であって、テレビ局の社員ではない。局員のように愛想笑いを振りまいて機嫌を取る義理は全くなかった。翔太もカチンときた。先ほど体調が悪いと断ったのは、単に酒を飲みたくなかったからだ。今この男は、わざとこちらの意図を無視して、無理やり酒を飲ませようとしているのか?「智美さんは女性ですし、やめておきましょう。お茶で代用しても構いませんよね、長島社長」翔太が制止するのを、麻弥が横から笑って遮った。「もう、うちの智美はそんなに礼儀知らずじゃないわよ。社会人として働く女性が、お酒の一杯や二杯、飲めないわけないでしょう?ねえ、智美?」智美は静かに麻弥を見つめた。同じ女性として、どうして麻弥が男性の側に立って、自分を窮地に陥れようとするのか理解できなかった。深呼吸を一つして、篤に向き直る。「長島社長のお勧めはありがたいのですが、私は本当にお酒が弱いんです。もし、こちらのお仕事にこういった接待が伴うと知っていたなら、最初からお引き受けしませんでした」そう言うと、智美は翔太に向き直り、申し訳なさそうな表情を浮かべた。「高橋先生、申し訳ありません。今回のお仕事、私にはお手伝いできそうにありません。まだ契約も結んでおりませんし、ここで失礼させていただきます」「智美さん!」翔太も焦った。テレビ局の人間が、ここまで無神経だとは想像もしていなかった。以前、旧友の顔を立てて人づての依頼を承諾したものの、こんなに礼儀知らずな連中だったとは。彼は生粋の芸術家気質だ。このような不躾な扱いには我慢ならず、即座に席を立った。「この仕事、お受けできません。俺は創作のためにここに来たのであって、こんな接待や機
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