翌朝、目を覚ますと、悠人も詩乃の姿も、どちらもいなかった。智美は時計を見ると、もう十時半だった。悠人ったら、起こしてくれればよかったのに――と思ったが、今日は土曜日だから、それでもよかった。顔を洗って身支度を整えて階下へ下りると、ちょうど悠人が詩乃を連れて帰ってくるところだった。詩乃のおでこにはうっすらと汗が光り、ほっぺたが真っ赤になっていた。智美はハンカチを取り出して汗を拭ってやりながら聞いた。「パパとどこへ行ってたの?」詩乃は顔を上げ、ぱっちりした目を細めながら嬉しそうにママを見上げた。ママ、きれい……!「パパとボール打ったの」悠人が横から口を挟んだ。「テニスを教えてた」二歳でテニス?智美には少し早すぎる気がした。悠人は察したように笑った。「詩乃に合わせた小さいラケットを用意してもらったんだよ。すごく気に入ってた」体を動かすのはいいことだ、と悠人は思っていた。普段は詩乃の相手をしてやれないから、週末くらいはたっぷり一緒に過ごしてやりたかった。ベビーシッターが詩乃を連れて着替えに行った。智美はテーブルにつき、朝食をとり始めた。ベビーシッターがお粥と、半分に切ったとうもろこしを持ってきてくれた。食べながら悠人に聞いた。「今日、仕事は大丈夫?」以前の悠人は週末も忙しいことが多く、年末になれば岡田グループの用事がさらに増えていた。悠人は答えた。「平気。秘書に今日明日のスケジュールを全部調整してもらったから」智美はとうもろこしを食べ終えてお粥に移りながら言った。「最近、詩乃との時間がなかなか取れてなかったから、今日は三人でどこか出かけない?」「どこがいい?」少し考えて、智美は言った。「遊園地は?」悠人はスマホを取り出した。「秘書に手配させる」詩乃が着替えを終えて下りてきた。遊園地と聞いた瞬間、目をきらきらさせて飛び跳ねんばかりに喜んだ。智美はお粥を食べ終えて口を拭うと、詩乃を抱き上げた。「何か少し食べてから行く?」遊びのことで頭がいっぱいの詩乃に、食欲などあるはずもなかった。智美の首にぎゅっとしがみついて、大きな声で言った。「いらない!遊びに行きたい!」悠人が準備を終えるのを待って、智美は詩乃を抱いて外へ出た。悠人が靴を履き終えると、詩乃を腕に移して智美が靴を履けるよう
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