理不尽に罵られても、心陽はただ黙って耐えるしかなかった。それでも心の中では、収まりのつかない不満が渦巻いていた。今回引き起こされた問題は、誰が手を貸したところで、そう簡単に片がつくものではない。今は同じ舟に乗ってしまった身だ。事態が好転することを祈るしかなかった。ただ、自分の実家だけは巻き込みたくなかった。できることなら、悠人たちを泥沼に引きずり込んでしまいたい。あちらは資産が潤沢なのだから、多少の損を被ったところで痛くも痒くもないだろう、と心陽は思っていた。……その日の夕方、梨沙子が仕事を終えて退社すると、母の史子から着信があった。気が進まなかった。離婚してからというもの、史子は梨沙子に辛辣な言葉を浴びせ続けた。どこまでも自尊心を貶め、傷つけてきた。梨沙子は実家を出て、自分で部屋を借り、自分の力で仕事を立ち上げ、自分で自分を養ってきた。そんな梨沙子の生活に、史子は一切関心を示さなかったのだ。母娘の縁はこれで自然と切れていくのだろうと思っていたのに、こうしてまた突然電話がかかってきた。考えるまでもなく、ろくなことではないとわかっていた。子どものころから、史子にとって梨沙子は存在しないも同然だった。利用価値がある時だけ、梨沙子は「見える」存在になった。そういう人なのだと、梨沙子は今ではゆっくりと受け入れていた。母に愛されることは永遠にない――ならば、手の届かないものを求めて消耗するのはやめようと決めていた。電話には出ず、スマホをバッグにしまって地下駐車場へ下りた。智美と一緒に事業を続けてきたこの数年で、梨沙子はそれなりの蓄えを作り、ひとり暮らし用のマンションを一室買い、小さな車も手に入れた。自分の家を持つことで、梨沙子には少しずつ安心感と居場所の感覚が生まれていた。仕事を終えれば、誰にも気を遣わなくていい自分だけの小さな家に帰る。それだけで、この上なく穏やかな気持ちになれた。離婚してからのこの日々が、梨沙子にとって生まれて初めて、本当の意味で自分の人生を生きていると実感できた。マンションの駐車場に車を入れてスマホを確認すると、史子から四件の着信が入っていた。ちょうどまた着信が鳴り始め、梨沙子は一瞬顔をしかめたが、最終的には電話に出た。「もしもし」声に温度はなかった。まるで見知らぬ他人に話しかけるよ
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