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All Chapters of 黒と白の重音: Chapter 131 - Chapter 140

155 Chapters

16.呂色 - 3

「一先ず、帰ったら明日の準備と撮影終えたら放浪の準備だな。  キリは……ちょっと変装を考えないとな……」「ってか、なんでお前まで彷徨い歩くんだよ……散々苦労しただろ !? 」「今回は大丈夫だよ。  サイがどんな風に曲作るのかとか、楽譜の読み方を覚えたいんだ」「あ〜。まぁ、それは出来た方がいいけどよ。家でもいいじゃん」「今日、会議でも言われてたけど、一度見たら忘れない綺麗さだし……正直、芸術に近いこれをどう隠せって言うのか……」 下心0でも綺麗だと言い切れるのはなかなかハードルが高い。「……おめェ、すげぇな」「マスクと……髪は帽子とかに入れて……ジャージとか……」「やっぱりそうなるかぁ……」 彩が頭を抱える。  同棲したての頃、穴あきジャージで尻をポリポリ掻いていた霧香である。  嫌な予感……。「風呂は ? 」「えっと……こないだのところの近くに銭湯があるんだけど、大人五百円で二時間滞在OK。ただ、営業時間は昼間だ」「まぁ、仕方ないか」「そしてだけど。  今日真理さんから連絡来て、案外時間はあるからキリと俺、楽団とは別個で演奏しないかって。ピアノ伴奏は真理さんがやるからって」「それなら、その方がいいけど……楽団のみんなは弾きたく無かった…… ? 」「いや。客席で聴きたいからズラせって」「めっちゃ好かれてんじゃん」「……」 彩は無言だが、何か憑き物が取れたようにスッキリとした顔をしていた。    「暑いから帽子被れって言われたけど……衣装に合う帽子って謎すぎ。弦楽なんて普通に男は正装だよ。黒白で」「キリだけでいいんじゃね ? 」「んー。そうだな。  ガラスのチェロ、戻ったけど……せっかくだから樹里さんに借りた白いチェロ使う。日差しが心配だし、熱くて持てなくなりそうだし」「繊細だな硝子……」「そんなところかな。じゃあ、屋敷に戻
last updateLast Updated : 2026-01-11
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17.呂色 - 4

 タクシーは屋敷のある雑木林の前まで来ると、運転手のおじさんは急にぼんやりと空を見つめる。「いい天気だわ……あれ ? ここどこだ ? 」「おじさん、お会計して」「ああ。そうだったそうだった」 メーターを確認し料金を請求する。 精算を済ませたドライバーのおじさんは狐につままれた様なふわふわした記憶の中、街に戻って行った。「皆んな帰ってるかな ? 」「どうだろ ? 今、十四時 ? ハランは黒ノ森楽器店は休暇とってしばらく実家の手伝いすんだよな ? 」「一度手伝ったらロイさんが手放さなくなったって」「医者不足って言うもんな。最もあそこは地域の集会所になってるらしいけど」 三人、坂を上がり垣根のある門を越えて敷地に入る。 すると、見慣れない車が一台停まっていた。「なにあれ ? 」「レンレンと俺以外……免許ねぇよな ? 」 横から見てようやく三人はそれがキャンピングカーだと認識する。「え…… ? サイ買ったの ? 」「まさか。免許も無いのに買うわけないじゃん」「じゃあ、レンレン車変えたの ? 」 そこで三人に気付いたシャドウが、何やら手にして庭へ出てきた。「霧香。今朝方、お前たちが出かけた後、魔法陣だけ庭に出てくてな。何事かと見ていたら車が……あと、フロントにこれが……」 大きな黒百合の花束。 そしてキーと、メッセージカード。「うわぁぁぁマジかよ ! 」「え、こんなの送り返す魔法なんて使えないよわたし ! 」「咲さんの言った通りだ。愛情表現が一方的。押し付けて来るタイプ」 カードには名前は無いが、最早ディー以外の誰からでもないだろう。「DVした後、優しくする的な ? まさにじゃん。やべぇ〜」「レンと同じ環境で育っても、こ
last updateLast Updated : 2026-01-12
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18.チョコレートコスモス - 1

「真理さん、団員の皆さんも、ありがとうございました」 楽器を積み込み、見送りに来た真理と数人の楽団員達に頭を下げる。「なんも〜 ! 眼福眼福〜」「最高だったよ ! またやろうね」 真理の周囲には他の女性団員も笑顔で集まっていた。 一方、男性団員は別な場所に集結。「いやしかし……新車 ? 羨ましいね」「これからどっか行くの ? 」「うっは ! 内装も新品 ! 」 大きなキャンピングカーを見上げて車に群がっていた。「特に予定は無いですけど……」「勿体な ! 片道二時間でしょ ? 」「でもこの時期はどこも混んでるしなぁ」「だからだよ。今から高速乗ったら帰省ラッシュに巻き込まれるし」「どこでも泊まれるのが強みだもんねぇ」 確かにそれは考えていなかった。出てきた時は逆車線で早朝だったが、これからとなると……。「確かにそうですね……。 じゃあどっか寄ってく ? 」 恵也が振り向くと、既に彩と霧香は最寄りのキャンプ場を検索し出していた。「おい ! 後からやれよ ! 」「アッハッハ !  わたしたちは次はまた別のところに呼ばれてるの」「へぇ。活動多いんすね」「近くのオーケストラ部の指導よ。ボランティアみたいなものでね。小学生の子に教えるんだけど……小学生とは言え、強豪校だから……わたしたちも不安で不安でさぁ」「た、大変ッスね」「そうよ〜。大人だからって誰でも上手いわけじゃないんだから〜。 ……でも、深浦くんはもう大丈夫そうね」「はい。キラも今は落ち着いてて。楽しそうにしてます」「良かったわ。本当に」 天使組と希星は、一足先に会場を出た
last updateLast Updated : 2026-01-13
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19.チョコレートコスモス - 2

 山の麓からどんどん急斜面になる坂を登る。「道悪ぃな……こんなとこにキャンプ場なんてあるのかよ。対向車、誰ともすれ違わないし」 途中の悪路で揺れる車内。 そして到着するキャンプ場……という名の、山に囲まれた広場に到着した。 入口に公衆電話を照らす灯りがぼんやりとあるだけ。少し寂しい場所だが、夏の日の長さでは三人ともまだ気にならない。 取ってつけたような水道だけが端にあり、カビで真っ黒になった仮設トイレが一つ。「まぁ、誰もいないし。都合いいか。 じゃあ俺、石積むから網準備して」「ほい」 霧香がナイロン袋から網を取り出す。「一回洗った方がいい ? 」「うーん。だな」 霧香が備え付けの水道に向かう。 水は出るようだ。山水を引いているのか、夏だというのに凄く冷たい。 オレンジ色の夕暮れを見上げながら、息を吸う。空気が澄んでいる。 人は居ないが山の中に囲まれた緑の世界だ。便利な街中もいいが、木々に囲まれ野宿をするなど、今まで人間界に来なければ出来なかったことだ。 霧香はその有難みとかつて天界で出会ったエレメンタルエンジェルの存在を思い出していた。 水の天使だけでは無い。 火も、太陽も、植物も。 全てが尊く、万人に必要なもの。 天国や地獄ではなく、それらが人間に与えられた素晴らしいもの。今、それを感じる事が出来る喜びがある。 水道で網を流す。「ふふ。冷た〜い。手が痛いくらいだなぁ。屋敷の水道とは水の質が違うわ……不思議ね……」 その時。 何かパキパキと音がした。「…… ? 」 音の方向は水道の裏の藪の中。 パキ、ザザッ、パキパキ、ザザザ……。「……だ、誰か…&helli
last updateLast Updated : 2026-01-14
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20.チョコレートコスモス - 3

 天使組は希星を自宅に返し、蓮とハランが屋敷へ戻った。「ただいまシャドウ」「シャドウくん、ただいま」「ああ、疲れただろう。夕食は出来てる」 荷物を隅に放り投げ、広くなったダイニングキッチンで食事。 ちなみに今まで食堂だったスペースはテレビの置けるリビングになり、大きなソファーとローテーブルと言うくつろぎの空間。「お前、実家に帰んないの ? 」 蓮が若干鬱陶しそうに言うが、シャドウと二人だけの食卓よりマシだろう。「だってさ。朝からいると「待合室に蝿がいるんだけど」とか家に俺を呼びに来るんだよ ! 」「何時からだっけ ? 」「診察開始が八時」「で ? 何時に呼びにくんの ? 」「六時」 蓮もシャドウも爆笑したいが、ハランは心底参っているようだ。「……診察開始まで待合室閉めとけば ? 」「……ロイさんの方針だし。 ほら、整形外科なんてお年寄りばっかりじゃん ? 皆、出勤前の息子さん嫁さんに送ってきてもらうから、開けとかないと……ずっと外に立ってられないだろう ? 」「それだけ聞くと、やっぱ優しいなロイさん」 ハランはサラダボウルからトングでワサワサとレタスを取り分ける。「待合室閉めるのは……俺も思ったよ ?  でもうちの予約、ネット予約無いんだよ。お年寄りネット出来ないから。電話予約は十時から。だって電話なんかも詐欺防止で家に置いてない一人暮らしのおばあちゃんなんかもいるからさ。 そういう人が早朝から一生懸命来て、八時からガッツリ予約の人で埋まってたら可哀想だろ ? 」「ま〜」「でさ、朝イチさ。その早起きタイプの患者さんが待合室の蝿とかカメムシくらいで俺、叩き起されるの……。ギリギリ、蜂ならわかるよ ? 蝿だよ ? 」 蓮とシャドウはもうあまり聞いていない。
last updateLast Updated : 2026-01-15
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21.チョコレートコスモス - 4

     サイのエゴなど露知らず。 蓮は考え込む。「出かけようとか、誘った事は ? 」「一度サブカル系の場所に誘ったけど……キリちゃんもサイもいい顔しなくて、そのまま流れた。ケイとオケ観に行くからって。 結構他にも思い当たる節あってさ。 俺もサイって何考えてるか分かんないし……」「それが答えじゃないの ?  分かんないから疑るし、不安なんだろ」 蓮の言葉に、ハランは意外にも同意した。「そうかもね。分からないんだよね。個性が強烈なのはいい事だと思うけどね。 俺、ここだから言うけどさ。ベース、二台は要らないと思う」 やはり、最初に危惧していた事が起きた。 ハランは必ずゲソ組の決めたコンセプトに、従うといいつつも、バンドジャックし始めるのでは無いかという予想。 事実、その片鱗がようやく今になって出てきた。「恋愛パフォーマンスってのをきっかけにバンドを売り出したいなら、キリちゃんの奇抜なパンクとかロックをするのはやめた方が無難だよ。 LEMONでキリちゃんを見に来る人は、結局『無料で可愛い子の私生活が見れる』って事だと思うし。 歌ってる時は人が変わったように強烈じゃん ? 」「うちのファンはそれがウケてるだろ 」「可愛い格好して、普通のベースだけじゃダメなのかなって。 きっかけはお前がガラスのチェロを贈ったことだったんだと思うけど、それは弦楽でさ……今回みたいに別で行動すればいいじゃん ?  なまじサイがヴァイオリン弾けるから、バンドもゴシックに行ったのかな、とか」「じゃあ、キリがベースやる時は、俺他のパートやろうか ? DJとかさ」「違う、そうじゃなくて。 ギタリスト SAIもベーシストKIRIもネットでは激しいロックの弾き戦いだった。それがランキングでも受けて、今生放送でスパチャ来るのも古残のファンが多いし。それを期待
last updateLast Updated : 2026-01-16
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23.藍墨茶 - 1

とある男性トラック運転手はいつも通るバイパスの土手の看板に目が止まる。 先月までテナント募集になっていたはずの大きな看板に、絵に描いたような美少女が掲げられていた。 それを目にした運転手は首を傾げる。 あんな広告、他所では見たことがないしローカル店の看板か……。それにしても何の看板だったかなど一瞬で分からなかった。 だが、来た道を戻る逆車線、またも同じ看板を目にする。 しかし、やっぱりなんだか分からない。ロゴも無く宣伝文句も無い写真だけの看板。 ただぼんやりと脳裏に焼き付く。 恐ろしい程の造形美の少女。 またある駅前では、大きな霧香のパネルが妖艶な笑みで群衆を見下ろす。だがこれに対し、通行人はロゴのない看板に対して免疫があるようで、見上げて霧香の美しさにぼんやりとはするが話題性はまだまだだ。大都会での広告スペースはかなり限られた物に限られる。他の看板や色とりどりの街並みに埋もれてしまったのでは流石に無理だ。 一番は看板の大きさがモノを言う。 小さな看板をいくつも出したり、大きくても数が少なく人の印象に埋もれてしまうなら、地方でもいいから数を確保する。デカければデカイ程いいと凛から指示が出る。 更にCITRUSやアイテールの下請け企業、既にLEMONのショッピングワールドでコラボが決まっている玩具メーカー、お菓子メーカーの生産工場のどデカい壁。更に誰が管理しているかも不明な個人管理の古い田んぼ道の看板も確保。 特に地方工場のだだっ広い壁には、プロジェクトマッピング広告がハマった。工場は田舎にあれども物流の観点からアクセスのいい場所が多い。更に工場は比較的窓が小さく、奇抜な柄の外壁等は少ないから良く映える。 数枚の霧香のスチルが入れ替わる映像。そして最後に檸檬の輪切りマークだけがコロコロコロ……ポン ! と表示されるのみ。 これには企画を知らない社員も困惑を隠せない。だが、会社側は一枚噛んでいる。勿論、上層部は口外しない契約で使用料を貰っている。
last updateLast Updated : 2026-01-19
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22.チョコレートコスモス - 5

蓮は当たり前のような面持ちで彩に向き直る。 「サイは ? ファッションには詳しいんじゃないの ? 」 しかし彩も否定する。 「俺は作るの専門。独学だし、撮影とかランウェイの現場は知らない。 レンとハランはAngel blessでジャケットの撮影あったろ ? 」 「えぇ ? 衣装に着替えて……メイクは自分でやって、撮っただけだし。インディーズのジャケットなんて低コストでササッと撮るだけだよ 」 蓮は軽く言っているが自身が美容師でもあるし、メイクに関してはスタッフがいなくてもクオリティが高かった。衣装ひとつも、そもそもAngel blessのスポンサー、いやパトロンが樹里である。金銭的にも、コストにしてもあまり苦労は無かったのである。 「うーん」 六時を回った頃、霧香へ一本の着信。 「ミ ! ミミにゃん !! 」 『あ、霧香さん。おはようございます ! 今日の撮影一緒に行きません…… 「行くっ !!!! 」 ……………よ、良かったです ! 少し早目に出ようと思ってて』 「ミミミミミミにゃん、今からうちに来ない !? 」 余裕が無いのもあるが、ミミにゃんは最早霧香にとって身内カウント。 LEMONやお化け旅館での関係を見ている方は納得しているが、一連の流れを知らないハランは訝しげにそれを聞く。 (あの二人、仲直りしてたの ? ) (ん。咲さんに間に入って貰ったとか聞いたけど……今は仲良いね) 「じゃあ、今から言う住所に……バス停があるからそこまで来てくれる ? 違うの、あのね撮影の事で聞きたいこといっぱいあって……。 タクシーがバス停に着く時連絡ちょうだい ? 違うの ! タクシー代金払うから。いや、多分そのタクシー代金越えるほどの授業を受けたいから。単純にお礼だよ…… ! 」 ソファー側で恵也が彩に呟く。 (これ、いずれミミにゃんにヴァンパイアなのバレるだろ……) (それは不味いな。まぁ、記憶操作魔法持ってるらしいし……) (念には念を押しておかないと。キリのパニック具合だと、いつかやらかしそうだし) □□□□ 「おはよぉっす ! 」 撮影スタジオに着いた二人を凛が出迎える。 護衛の恵也は仕事なので、午前シフトだった蓮が車で送迎、そのまま近くのカフェで時間を潰す。 「キリさん
last updateLast Updated : 2026-01-19
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24.藍墨茶 - 2

「ねぇ〜 ? こういう時ってどうすればいいのぉ ? 」 希星の質問。 単純な疑問と答えだ。「そういう時は、なかなか都合が合わなかったので〜とか言って、忘れていなかった旨をちゃんと話して、改めてお祝いとかプレゼント……じゃねぇか ? 」「そうなんだ。レンはハランに何かプレゼントした事ある ? 何あげた ? 」「全くない。あげたくもないし。 あ、シフト交換一回分とかかな」「うわ……Angel blessってドライなんだね」「あー、そうかもな。 だってさ、千歳もいい歳だし。京介は樹里さんと過ごすだろうしさ。婚期が近いと、逆にプライベートで時間取らせるのは気を使うって」「そうなんだ……。そっか。彼女と過ごすのか……確かにぃ。 でも、今回はどうするの ? 」 希星の言葉に全員考え込む。「ハランにプレゼントとか用意する ? 」「なんか持ち物もこだわり強そうだよな」「俺はレンもそう見えるけど ? 」「否定はしないかな」「そうだ ! 」 希星は手を合わせると霧香に向き直る。「キリが聞けばいいんじゃない ? 」「え ? わたし ? 」「そうすれば、流石に「誕生日の事かな ? 」とか察するだろうしさ。キリからは受け取りやすいもの言ってくれそう ! 絶対キリのプレゼントは欲しいはずだもんね ! 」 蓮は嫌な予感。 恵也は微妙な予想。 彩はほぼ確信的予測。 とは言えこの時は、まさかそうはならないだろうと皆タカをくくってはいるが……。「もし、何も要らないよって言われたら会話終了じゃね ? 」「その時は皆でケーキ食べるくらいでいいんじゃない ? 」「あ、でもそれいいかも。どうせ食事一緒だし。 ほら、シャ
last updateLast Updated : 2026-01-20
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25.藍墨茶 - 3

 夜中、ハランが寝たのを確認し、電気も点けずにスタジオの床に座りメンバーで顔を付き合わせる。「おい、なんだよそれ。プレゼントじゃないじゃん」「プレゼントに託《かこつ》けて、自分の欲望を通してきたな」「ぶっちゃけさぁ、断りようが無くねぇ ?   キリと一緒に出かけてくるねって……普通じゃね ? 別にキリは誰のものでもないし。  キリがハランと約束して来ただけって感じ。誰も妨害する権利なんて無いし ? 」 恵也はそう理性的な言葉を並べ立てて、自分を納得させているだけ。  しかし、実際これが正論である。「確かにそうだな。  キリ、お前はどうなの ? 」 蓮に聞かれて、霧香は口篭る。「え……えーと。プレゼントなのかな ? ちょっと分かんないけど、ハランがそれでいいなら別に……」 彩は意外な感情を霧香から感じ取る。  案外、霧香はノリ気だ。強いて言えば、少しの罪悪感。これは恐らく蓮か恵也に対してだろうと思う。「キリ次第だろ。任せよう」 そうフォローするしかない。  恵也が途端ソワソワしだす。「あの。せめて連絡が付くようにしておくとかさ。最低限の行き先と……変装はしてて欲しいから……行く場所にもよるけど……なんかこう、頼むぜ 」 正直、蓮も恵也も行かせたくは無い。  だが言ってしまったら、自分の余裕の無さが露呈してしまう気がして言えない。  ただでさえ強引な行動が多いハランに皆不安はあるが、誰も止める権利など無いのだ。「いいんじゃない ? 楽しんで来たら ? 十二月まで家に缶詰めでもしょうがないし。変装して気分転換出来るならそれでいいさ」 蓮の心にも無いセリフに、全員ツッコミ入れたくなるが抑え込む。「俺も別に……。キリの自由だろうし」 彩としてはプライベートで霧香に恋人が出来るのは不味い事態だが、これが蓮かハランなら口出しすることも無い。  だが第一契約者になってからというもの、今まで理解不能だった『女性の気持ち』というも
last updateLast Updated : 2026-01-21
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