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16.呂色 - 3

last update Last Updated: 2026-01-11 11:00:00

「一先ず、帰ったら明日の準備と撮影終えたら放浪の準備だな。

 キリは……ちょっと変装を考えないとな……」

「ってか、なんでお前まで彷徨い歩くんだよ……散々苦労しただろ !? 」

「今回は大丈夫だよ。

 サイがどんな風に曲作るのかとか、楽譜の読み方を覚えたいんだ」

「あ〜。まぁ、それは出来た方がいいけどよ。家でもいいじゃん」

「今日、会議でも言われてたけど、一度見たら忘れない綺麗さだし……正直、芸術に近いこれをどう隠せって言うのか……」

 下心0でも綺麗だと言い切れるのはなかなかハードルが高い。

「……おめェ、すげぇな」

「マスクと……髪は帽子とかに入れて……ジャージとか……」

「やっぱりそうなるかぁ……」

 彩が頭を抱える。

 同棲したての頃、穴あきジャージで尻をポリポリ掻いていた霧香である。

 嫌な予感……。

「風呂は ? 」

「えっと……こないだのところの近くに銭湯があるんだけど、大人五百円で二時間滞在OK。ただ、営業時間は昼間だ」

「まぁ、仕方ないか」

「そしてだけど。

 今日真理さんから連絡来て、案外時間はあるからキリと俺、楽団とは別個で演奏しないかって。ピアノ伴奏は真理さんがやるからって」

「それなら、その方がいいけど……楽団のみんなは弾きたく無かった…… ? 」

「いや。客席で聴きたいからズラせって」

「めっちゃ好かれてんじゃん」

「……」

 彩は無言だが、何か憑き物が取れたようにスッキリとした顔をしていた。    

「暑いから帽子被れって言われたけど……衣装に合う帽子って謎すぎ。弦楽なんて普通に男は正装だよ。黒白で」

「キリだけでいいんじゃね ? 」

「んー。そうだな。

 ガラスのチェロ、戻ったけど……せっかくだから樹里さんに借りた白いチェロ使う。日差しが心配だし、熱くて持てなくなりそうだし」

「繊細だな硝子……」

「そんなところかな。じゃあ、屋敷に戻

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  • 黒と白の重音   16.呂色 - 3

    「一先ず、帰ったら明日の準備と撮影終えたら放浪の準備だな。  キリは……ちょっと変装を考えないとな……」「ってか、なんでお前まで彷徨い歩くんだよ……散々苦労しただろ !? 」「今回は大丈夫だよ。  サイがどんな風に曲作るのかとか、楽譜の読み方を覚えたいんだ」「あ〜。まぁ、それは出来た方がいいけどよ。家でもいいじゃん」「今日、会議でも言われてたけど、一度見たら忘れない綺麗さだし……正直、芸術に近いこれをどう隠せって言うのか……」 下心0でも綺麗だと言い切れるのはなかなかハードルが高い。「……おめェ、すげぇな」「マスクと……髪は帽子とかに入れて……ジャージとか……」「やっぱりそうなるかぁ……」 彩が頭を抱える。  同棲したての頃、穴あきジャージで尻をポリポリ掻いていた霧香である。  嫌な予感……。「風呂は ? 」「えっと……こないだのところの近くに銭湯があるんだけど、大人五百円で二時間滞在OK。ただ、営業時間は昼間だ」「まぁ、仕方ないか」「そしてだけど。  今日真理さんから連絡来て、案外時間はあるからキリと俺、楽団とは別個で演奏しないかって。ピアノ伴奏は真理さんがやるからって」「それなら、その方がいいけど……楽団のみんなは弾きたく無かった…… ? 」「いや。客席で聴きたいからズラせって」「めっちゃ好かれてんじゃん」「……」 彩は無言だが、何か憑き物が取れたようにスッキリとした顔をしていた。 「暑いから帽子被れって言われたけど……衣装に合う帽子って謎すぎ。弦楽なんて普通に男は正装だよ。黒白で」「キリだけでいいんじゃね ? 」「んー。そうだな。  ガラスのチェロ、戻ったけど……せっかくだから樹里さんに借りた白いチェロ使う。日差しが心配だし、熱くて持てなくなりそうだし」「繊細だな硝子……」「そんなところかな。じゃあ、屋敷に戻

  • 黒と白の重音   15.呂色 - 2

     霧香は考える。 何もかもに恵まれた人間などいない事は分かるが、得意分野の延長線上にあるものまで得意とは限らないのだと。 現にモノクロの中で霧香は、自分なりの仕事を見いだせるかと言われたら疑問に思う。 彩は作詞も作曲も衣装もやっているし、恵也はトーク全般と動画の編集作業をやっている。 蓮とハランに関しては、仕事もあるし何よりまだAngel blessを脱退したという訳でもないAngel blessの作曲は蓮がやっている。「じゃ、じゃあ。ちょっと勉強しようかな」「そうね。霧香さんあんなに弾けるんですもん、ソロ活動なんかも将来見据えて。お姉さんはやった方がいいかもって思うわ」「あ、確かに霧香さんが自由に作曲出来ても、メンバーじゃない楽器隊に楽譜を渡せないのは困りますもんね」「そうかぁ。ソロ活動かぁ〜。全然考えて無かった ! 」 盛り上がる三人を見つけ、凛と南川、そして彩が入ってきた。「女性陣ここにいたのか。 霧香さん、リーダーにスケジュール話してきたから後で聞いてね。 実々夏さんも、CITRUSで今回声優やってたんだね。歌はダメって言ってたけど、演技はイけるんだ ? 結構CITRUSで評価されてたよ」「ああ ! 良かった !! ありがとうございます」「VEVOは年始にズレたけど、まぁ仕方無いね。 ここだけの話、LEMONには有料ライブハウスとかカジノのワールドも作るみたいだよ」「カジノ……ゴールドで遊べるんですかね ? 」「どうだろう。通貨の『レモン』だとリアルなお金に近いし、無理かもね。物品に交換出来ちゃ不味いもんね」 違法賭博回避。あくまで全年齢対象の空間である。「あと、まぁ……ぶっちゃけ今回のギャラはあまりいいとは言えないけど、VRゴーグルくらいはプレゼントするよ」「え、嬉しい !! 」「あ、藤白さんじゃないですよ……モノクロと実々夏さんにです」 咲お姉さん

  • 黒と白の重音   14.呂色 - 1

     階下にある社員用のカフェテリアで、霧香は咲とミミにゃんの三人で休憩となった。本来水戸マネージャーも誘われたが、恥ずかしいのかちょっとそこまで買い出しに、と断られた。「結局お盆中も呼び出して。忙しかったわね」「いえ、みんな一息ついたところでしたし。  ミミにゃんは忙しいでしょ ? 」 霧香に聞かれたミミにゃんは意外とそうでも無い様だった。「学業がある分、事務所に余裕は持たせて貰ってますね。  でも撮影はお盆明けからで急ですね。モノクロの皆さんは帰省とかするんですか ? 霧香さんて、出身どこなんですか ? 」「ち、地方だよ。親がめんどくさいから会わないだけで」 身分証にあった自分の経歴を必死に思い出す。「そうなんですね。訛りが無いし、この辺かと……。  でも、そうですよね。霧香さんくらい綺麗な人がいたら、ミュージシャンになる前に噂になったりしますもんね」「へ、へぇ〜。ド田舎だと、あんま無かったなぁ」 ド田舎どころか異界である。  咲が何とか話題を変える。「明日は道の駅で演奏よね ? 」「え ? ステージですか ? いいなぁ。モノクロで ? 」「ううん。サイとわたしだけ弦楽で。ケイは地元の中高校生に混ざろうとしたんだけど、女子校なのでって顧問に断られてたみたい」「あはは。OBでも無く、完全に外部の方だとそうなるかもですね。仕方ないですよ」「そうだ、ミミにゃん。さっきアンジェリン検索したんだけど、ああ言うポージングってどうしたらいいの ?  わたしMVすら撮って無いのに……撮影なんかされたこと無いよ……」 ミミにゃんは笑って答える。「大丈夫ですよ。多分、指示出ますから。  でも……そうだな。アンジェリンってセクシー感がある感じですよね。アドバイスですか……うーん。爪の先まで演技するって感じですかね」「演技 ? 爪 ? 爪が演技するの ? 」「いえいえ。えーと。  モデルのポーズって、自然体じゃないものが

  • 黒と白の重音   13.檳榔子黒 - 4

     CITRUSの会議室。 予想よりも大勢の社員が集まっていた。「ミミにゃん ! 」「あ、霧香さん ! おはようございます。今日はゴシックですか」「うん〜。初めて着たよ。絶対ミミにゃんの方が似合うねコレ。 それより、人多いね。てっきり南川さんと凛さんだけかと思ってた」「あ、それわたしもです。なんか広告 ? の事でって言われて」「ミミにゃんはCITRUSで何かやるの ? 」「わたしは新作RPGのヒロイン声優をやらせて貰ってて」「あ、そうなんだ ! 声優やるって凄いね ! 確かメタバースのリリースと合わせるんだよね ? 」「そう聞いてますけど……」 そこへ話し合いが済んだ咲が水戸マネージャーと戻ってくる。「えっと、ミミにゃんと霧香さん、あの二番目の席に座ってくれる ? リーダーと恵也君はその隣に」 通された会議室。 霧香の左右に咲、ミミにゃんが座る。 対面に凛がいたが、プロジェクターの用意やらでバタバタしている。 室内にいるのは、CITRUSの開発陣営が少しと広報、マーケティング部周辺の課だと説明される。 だが進行役は広報のようだ。「じゃあ初めます ! 」 何も聞かされてないゲソ組とミミにゃんも、次の言葉に思わずひっくり返りそうになる。「VEVOのリリースを延期して頂きたいです」 ザワザワ…… 恐らくアイテールから来たであろう社員がどよめいている。遠くに南川がいるのが見えるが、難しい顔で資料を見つめている。「CITRUSは次のメタバースシステムに全力投球します。 その為の集客を考え、蛯名 凛さんプロデュースによる広報戦略が纏まりましたので報告いたします」 まず元々の概要は資料にある通りだ。 CITRUSで展開するメタバースを『LEMON』と名付ける。VR対応。初期アバターと登録は

  • 黒と白の重音   12.檳榔子黒 - 3

     希星がドアを開く。「いらっしゃ〜い ! 」「あらキラ君、お邪魔します。まぁ〜 ! 良い家ね〜。掃除大変そうだけど、シャドウ君がいるものねぇ〜」「わー ! すっごい御屋敷 !! お邪魔します ! わー ! わぁー !! ここがメタバースで見れるようになるのね !!? 侵入し放題になるんだ〜 !! 」 咲はキョロキョロとはしゃぎ回る。「おはようございます樹里さん、咲さん。お忙しいのにすみません」「いいのよ〜。さ、シャドウ君着いたわよ〜」「預かろう、マダム」 そのキャリーケースを受け取る、見知らぬ男。「あら ? どなた ? 」「我こそがヴァンパイア王政区 黒百合城の王、ディー · ニグラムである。今日から霧香の夫候補だ ! 」「あ〜あの、DVのお兄さんね〜」 案外ドライ……いや、かなりトゲのある返答。 樹里は面白いこと意外、興味無い。一度軽蔑したら相手にしない。「綺麗な方だ。豊満なボディは食べ物に困らないと言う裕福さを現している ! 」 これには流石に咲が吹き出す。「何それ !? そ、そんな口説き文句、日本でする ? 」「成程ね。感覚が人間と違うからバグってんのね〜」 メンバー全員、ディーの発言が恥ずかしくてしょうがない。何かズレている。見目の良い大型犬なのに運動神経ポンコツの様な残念さ。それも犬なら可愛いが、見た感じ『DVをする蓮』である。しかも樹里にはバグと言われる始末。「まぁ、ちょっと説明しますんで……どうぞ食堂に。応接室は狭いんで」 ハランが皆を誘導する。いなくなった蓮の落胆ぶりには、流石に恋敵云々を別にして、同情しか無かった。 □□□□□ 樹里が去り、シャドウが元に戻った所でディーも渋々帰って行った。 猫が変身するところを見た咲は、目を丸くしていた。「シャドウ君おかえりパーティをしたいけど、わ

  • 黒と白の重音   11.檳榔子黒 - 2

    「とにかく、色恋ではありません。真面目に話してください。どいてったら ! 」「動くな 」 舌の這う感触が通常のヴァンパイアとは桁違いに強い。それだけ魔力も強いのだ。このままでは本当にゲソ組ごとディーの配下になってしまう。「う……あ……」 今までレンにも立てられた事の無い場所まで、深く深く牙が入る。 ディーが一度身を起こす。 霧香の瞳にはうっすら涙が溢れていた。契約はしなかったが、別な命令が飛んでくる。「俺に逆らうな。服を脱げ。少し分からせる必要があるからな」 霧香は朦朧とする意識の中、ディーを見上げて呟く。「……無駄。 わたしにどんな事をしても、わたしが折れる事はないもん」 その言葉には重みがある。 数々の苦難の堕天をしたリヴァイエルならではの拷問への慣れ。「試す価値はありそうだ」 この時、霧香はハランに貰ったアミュレットを硬く握っていた。 いざとなったら。 これ以上は許されない。 だが、これは一度きりだ。タイミングを見計らっていたのだが……。「……ヴォエッ ! 」 ディーが突然嘔吐く。「血が ! 臭すぎる ! 一体何を食べたらこうな……ウヴォエェ……後から来るタイプの臭味が…… ! 」「……統括。 流石にゲロをかけられた状態で襲われたいと思うほど、わたしも酔狂ではありません」「ぐく………普段、何食ってるんだ !? 」「あ〜。このところホームレスだったんで……。 一日一回ご飯と……廃棄寸前の激安生卵を直飲みしたり……あとは、試食

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