海賊王のアトラクションに置かれた使えない電話は「辻沢行き」の情報を教えてくれたようだった。その情報はDが受話器を取った最初の一回だけだった。二回目以降、私が変わった時には固定電話の「ツ―ツ―ツ―」という音がしていただけだった。三回目も四回目も同じだった。Dと私は、通用口からアトラクションの裏手に出て、近くの救護室がごたついているのに紛れて園内に戻った。「出ましょう」 Dが提案した。まだ3時前だった。私は大人だから、もっと遊びたいとかはない。でもDは本当にそれでいいのだろうか?周りは、まだまだ遊び足りなさそうな同年代だらけなのだ。「いいの? 遊んでかなくて?」「タケルさんは遊んできたいんですか?」「いや、ミヤミユが遊んでかないなら、私も帰る」「あたしに合わせる必要はないですよ。お一人でどうぞ」 Dは冷めたものだった。「いつも、そんななの? ここに来た時」「友達と来た時は違います」 そうだよね。私は何を期待してたんだろう。 ヨーコに15歳の誕プレでペアチケ買った時に言われたじゃないか、「は? パパと行くとかないから。友達誘う」 あの言葉が全てを現わしていたのだった。おっさんと一緒で女子大生が楽しめるはずない。「出よう」 Dと私はゲートを出て駅に着くまで無言だった。てっきり改札で解散かと思ってDを見ると、「対策会議しましょう」 まだ電話の内容を聞いていなかった。 それから二人で向かったのはI商業施設の2階のほうのスタバだった。 店は平日なのに混んでいた。辛うじて奥のテーブル席が空いていたので先に席を取って注文の列に並ぼうとすると、「もうアイスチャイラテ頼んであります」 駅からここまでの間、ずっとスマフォをいじっていたから世代だなと思っていたら違った。モバイル注文をしておいてくれたのだった。この気遣いもまた世代なのだ。いつもは素っ気ないヨーコも、何かあるととてもよく気が回る。私が気づかなかったことを先回りして埋めてくれるのだ。それは大いに助かるものの、私のようなおっさんから見ると遠慮して生きているようで心配になってしまう。でもそれが世代のスタンダードなのだ。そして彼女彼らはとことん優しい。 財布から1000円札を出してDに渡し、「おつりはいいから」 というと、私の顔をじっと見た後、「ありがとうござ
Last Updated : 2025-08-22 Read more