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52 チャプター

49.カレーパンマンのパーカー

 辻バスを降り、大曲大橋を徒歩で渡ってホテルの部屋に戻ると、中は暑さがこもってムッとしていた。私は窓を開けて空気を入れ替えてから、ベッドの脇に置かれた、黄色いコロコロトランクを開けて着替えを出していた。するとDが床に倒れた自分のコロコロを指して、「これ場所変わってて気持ち悪いです。タケルさん、開けてくれませんか?」 出掛ける前は作業机の脇に立てておいたのだという。たしかに部屋の真ん中に転がっているのは変だった。私は今朝のこともあるので手形が付いてないか確認してチャックを開けた。「蓋を開けて中を見せてください」 女子の荷物を開けることには気が引けたのでDを見ると、「お願いします」 私は顔を逸らして蓋を開けた。「ヒッー!」 Dが悲鳴を上げた。Dを見ると左手で口を押えて私の手元を凝視していた。私もDのコロコロをみた。そこにあったのはくしゃくしゃになった黄色い服だった。カレー☆パンマンの顔がいっぱいプリントしてある。私はそれを見てDの悲鳴の意味を理解した。これはDのものではない。小説のミヤミユが殺されたとき着ていたパーカーだ。「やっぱり繰り返してる」 Dの声が震えていた。私にはDに掛けてあげる言葉が見つからなかた。「どうする? これ」「捨ててください」 私も直で触るのは嫌だったので、入り口脇のロッカーの長い靴ベラを取ってカレー☆パンマンをその先にひっかけ部屋から放り出そうとした。「そんなとこ捨てないで」 Dが部屋の奥からこちらを見ていたのでしかたなく、そのまま廊下に出てダストシュートを探すことにした。 両手で持った靴ベラの先にパーカーを下げて赤い絨毯を歩いた。エレベーターホールまで来たけどその間にゴミ箱もダストシュートもなかった。反対側の廊下を見たけれど同じようだった。ふと、この情景はさんざん小説に書いたことを思い出した。真っすぐに続くドアと外窓の列。その突き当りの非常階段から二部屋目に、地下道から忍び込んだ屍人のミヤミユがフジミユと対決した905号室がある。 気付くと私は、靴ベラの先の黄色いパーカーに引っ張られるように905号室に向かって廊下を歩き出していた。部屋の前まで来て見ると905号室のドアが少し開いていた。なんでそんなことをしようと思ったか、私はドアのノブに手を掛けて開けようとしていた。そして
last update最終更新日 : 2025-11-13
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