Semua Bab 少女がやらないゲーム実況: Bab 21 - Bab 30

30 Bab

20.ベッド・イン・ビジョン

「一緒にいたほうがいいから」 ホテルの部屋に入るとき一緒に泊まるのかと聞くとDはそう答えたのだった。それからシャワーをするまでの間、妙な距離感で息が詰りそうだった。 Dの次にシャワーを浴びてレストルームで服を着ながら、どういった気持ちで部屋に戻ればいいか考えた。これからセミダブルのベッドに二人で寝ることになる。仮にも私は現役の男であり隣に寝るのはシャンプーの香りがする若い女子なのだ。なにか起ると思うのは自然なことだろう。さらに、ホテルを予約したのも部屋を選んだのもDなのだ。私が無理にこの状況にDを誘い込んだわけではない。ということは、つまり、「痛!」 歯磨きをしようとしてコップの水を口に含んだ途端、口中に激痛が走った。水を吐き出すと血が混じっている。上唇をめくって鏡で見たら切れた歯茎から血が出ていた。口中に血の味が広がる。歯茎をねぶって唾を吐き出すと真っ赤な血がシンクを染めた。止血のため部屋のDにガーゼと脱脂綿を取ってくれるように頼んだが返事がない。服はもう着終わっているので自分で取るためレストルームを出ると、Dがベッドの隅に小さくなって電話をしていた。私が出てきたのに気付いて慌てたように起き上がり、「何ですか?」「また歯茎から血が出て脱脂綿が欲しくて」「言ってくれれば取ったのに」 言ったけども。「ああ、ごめん」 脱脂綿の袋とガーゼを持ってレストルームに戻った。 電話してたな。相手は誰だろう。やっぱりおじさんと二人はイヤだから友だちでも呼んだんだろう。Dの世代は、雑魚寝なら男女混合も平気でする。ヨーコが高校生だったころ、23時頃帰って来て、「今夜みんな泊まるから」 と友だちを4人連れてきた。そのうち二人が男子だった。で、明け方近くまでおしゃべりをして、そのままリビングで雑魚寝。お昼ごろ起きてきて、男子たちも父親の私に悪びれる風でなく、「「お世話シタ」」(おせわになりました) と帰っていったのだった。 スマフォのLINEを見る。相変わらずヨーコの既読はついていなかった。 頭を乾かしてレストルームを出た。ワークスペースの鏡に映る私はゴッドファーザーのマーロン・ブランドのような口をしていた。マーロン・ブランドはマフィアの首領、ドン・コルリオーネを演じるに当たって口の中に綿を詰めてあの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-12
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21.拘束の朝

 ベッドの隣ではDの寝息が聞こえていて、私は拘束状態。こんなので寝付けるはずもなく寝ては覚めてを夜通し繰り返していた。何度目かに覚めた時、異常に気付く。体がいうことを聞かない。拘束されているからではない、金縛りになったのだった。私は高校生のころそれこそ毎週金縛りにあっていたので霊障によるというのは信じていない。今まで霊を見たことはないし、何かの気配を感じたこともなかった。一番の解決策はそのまま寝る。今回もそうしようと思って目を閉じた。すると部屋のどこかでヒソヒソと話す声がする。 Dが何か話しかけたのかと、目を開けて返事をしようとしたけれどやはり声が出ない。起きていると伝えるために首を動かしたがまったくダメ。その間もずっとヒソヒソ声が聞こえている。私じゃない誰かとしゃべっているようだった。「行くの?」 少し間があって、「道はない」 声がくぐもっていてどちらがDか分からなかった。さらに、行くしか道がないのか行く道が見つからないのかも判然としない。目玉を巡らせて相手を探したら、いた。私の足元に人影が立っていた。一瞬、私は『アルゴ』の、ミヤミユとフジミユがホテルで戦うシーンを思い出した。フジミユがミヤミユが泊っていたホテルの部屋に入ると、こんな感じで暗がりに人影が立っていて、フジミユが「ミヤミユ?」と声を掛けた刹那ゾンビ化したミヤミユが襲って来る。死せるミヤミユと生けるフジミユが相対する第一部のクライマックスだ。 ここにいるのはDであるミヤミユだ。なら尋ねて来たのはフジミユってことになる。でもそれって誰?まさかdさんってことは?そんなことあるはずないな。 と考えているうちにいつの間にか寝てしまって、気づいた時はもう窓の外が明るくなっていた。Dはもう起きていて着替えも済ませていた。私
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-14
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22.去来モード

 胸がぎゅーとなった。嗚咽が漏れそうになって歯を食いしばって我慢した。涙が溢れて止まらない。目の前の女子高生がこちらを見ている。私は下を向いてカバンの中のハンドタオルで顔を隠した。それでも声が漏れ出ないか気が気でなかった。去来モード。来たーーーーー!創作者への天の恵み。これまでの苦労や忍耐が一気に幸福に反転する瞬間だ。「お客さま。大丈夫ですか?」 涙を拭いて顔を上げると、さっきまでカウンターで接客していたdさんがテーブルの前に膝まづいて心配そうに見上げていた。「大丈夫です。大丈夫です」 私は涙で真っ赤になった目を見られないように席を立って店外のレストルームへ向かったのだった。 何をきっかけにそれが起きるのかは分からなかった。いつものように一語一語スマフォに打ち込んでいるうちに突然、ボワっとやって来る。それまで書いた全てのキャラ、全てのエピソード、全てのコンセプト、果ては反古にした文章まで、全部がエニシの赤い糸で繋がって有意義化され、作品やシリーズが目指していたテーマがそこで顕現する。それらと、私のこれまでの人生、全ての出会いや学び、経験を巻き込んで、私という個人の体験となって一気に押し寄せる。何度、それに出くわしただろう。その度に創作者としての私は次元上昇を繰り返して来た。 Dと朝食をしに来たスタバの窓際の席で、私はハム&チーズ煉瓦焼きサンドに齧り付いていた。すると後ろから何かが割れる音がした。振り返ると席を立って床を見つめる年配の方がいた。どうやらコーヒーカップを落としたらしい。するとカウンターにいたバリスタさんが手に拭くものをもって来て年配の方の足元に跪いて床を拭きだしたのだった。その献身的なバリスタさんの態度を見て、私はdさんを思い出したのだった。あの時、スタバに居座りギリギリの精神状態で『ボクにわ』を書き上げていた時、去来モードに入った私を気遣ってくれた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-16
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23.蘇芳ナナミからの電話

 チェックアウトの時間になっても蘇芳ナナミからの電話はなかった。「出ましょうか」 Dが荷物をまとめ終わって言った。私は昨晩のうちに全部片づけておいて寝たのでDの合図待ちだった。コロコロとメッセンジャーバッグを持って部屋の外へ出る。後から巨大なバックパックにコロコロを曳いてDが出て来た。「忘れ物ないですか?」 そんなのあるはずない。バッグを叩いて確かめた。ポケットを弄った。「スマフォない!」 と部屋に入りかけたら、「どうぞ」 最初から差し出してくれても良くない?「めっちゃ分かりやすいとこ置いてありましたよ。ワークスペースの上」 置いたような置かなかったような。「タケルさんてADHDの気あるんですよね」「うん、注意欠陥の方のがね」唐突な指摘に思えるけど、そのことは一度エッセーに書いたことがあったのだ。Dはおそらくそれを読んだのだろう。あんなマイナーなサイトに置きっぱになってるやつをよくぞ読んでくれたと逆にありがたかった。学生時分の成績表には必ず、「忘れ物が多い。授業中よく窓の外を見ている」と注記されていた。そんなことある? と思われるかもだけど、実際私の学校の記憶は、教室の風景よりも窓から見えた景色のほうが鮮明に残っている。目を閉じると畑ばかりの地平の中をどこまでも続く鉄塔の列が今でも思い浮かぶ。どんだけ見てたんだか。そんなで勉強が出来るはずもなく、学生のころはずっと中の下か下の上、運動も苦手な私は人から褒められたことなどなかった。 ホテルのエレベーターの中でDが、「ずっと鉄塔の数を数えてたんですよね」「「『鉄塔武蔵野線』に影響されて」」 シンクロした。エッセーの文そのままを二人で口にした。「読みましたよ。鉄塔の最初を探して冒険する少年たちの話」『鉄塔武蔵野線』。ノスタルジー溢れる少年冒険小説の金字塔だ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-18
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24.N市の中の辻沢

 私とDは蘇芳ナナミからの電話を受けてからも、4時間以上9番出口を眺めるこの席に居座り続けていた。ずいぶん前から会話もなくなり、ついでに飲み物もなくなっていた。「何か注文してくるよ。ミヤミユは何がいい?」「私はいいです」 少し気まずかったのは今日、4度目のレジで4度目のバリスタさんだったから。それでと言うわけではないが、今度は新作を頼むつもりでいた。さっきレアで名高いアンケートレシートをもらって、これに答えるとトールのドリンクなんでも無料になりますと言われたのだ。アンケートは回答ずみだ。「ふわふわクリーム幸水フローズンください」 メニュー一番上のキラキラなドリンクを注文した。女子がこぞってインスタに上げる映えドリンク。注文するだけでこそばゆい。会計をするとバリスタさんが、「わ、ありえない。またです。アンケートレシートでアンケートレシート出たのなんて初めてです」 何事? と側に来た年配のバリスタさんが説明されて、「そんなことある?」 と驚きを隠さず私が手にしたレシートを見た。 受け取りカウンターで新作ドリンクを受け取り席に戻った。レシートを財布にしまいながらDに、「アンケート、またあたったよ」 Dは何杯目かの抹茶系ドリンクをすすって、「あたしもさっき。あのレジ、バグってるかも」 ふわふわクリーム幸水フローズンを飲むと口の中に甘い味が広がった。後味もくどくなくすっきりとしていた。同時に歯茎の痛みを思い出した。「タケルさんは、せっかく新作買ったのにインスタに上げないんですね」 と言われた。「インスタは自作宣伝用だから」「スタバの新作上げればインプレついて宣伝も見てもらえるのに」 その発想は全然なかった。おっさんが新作上げても失笑されるだけだと思ってた。「自信持ちましょ」 励まされた。 蘇芳ナナミの電話から次の手
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-20
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25.ドクターチョコレート

 新幹線の車内アナウンスが流れる中、Dと私は東京へ戻るか、このまま進むか話していた。「進みましょう」 Dは戻っても宮木野線の車両、ドクターチョコレートに乗れないかもしれないと言った。「戻って試してみよう」 私は見過ごすということが嫌いだ。ボタンがあったらためらわず押す。向こう見ずというより押した瞬間のワクワク感が好きなのだ。新幹線はすぐに品川駅に着いた。今引き返せば間に合うかもしれない。荷物棚からコロコロを下ろして席を立ち、「降りよう」 Dが動いてくれるかと通路に出る素振りを見せたが立ち止まったところで入ってきた乗客に押し戻されてしまった。Dは降りるつもりが全然ないらしく、品川駅に初めて来た人のように窓の外に見入ってしまっている。私が行き場なく突っ立ていると、「タケルさん、あれ」 Dが窓の外を指さす。私は立ったままDの前に体を屈めて外を見る。 あった。茶色の汽車、ドクターチョコレート。東京品川間で追い抜かれた? いったいいつ?「ここであいつを掴まえよう」 と言ったが、今度は見ているうちにドクターチョコレートが発車してしまった。私はようやくコロコロを元の棚に載せて席に着いた。 ドクターチョコレートは車内灯で中が見えた。車内に人はいなかった。無人の汽車が規格が違う新幹線線路を走り去る姿は、やはり異様だった。ただその異様さがかえって私たちが辻沢への道の上にいることを感じさせもした。「どっちかな」 シンクロか、セレンゲティーか。「セレンディピティーですね。幸福な偶然の発見」 おそらくこのまま目的の駅まで乗ってていいとDは言った。私もそれに同意した。 それからは時々Dが窓の外を指さす動作に合わせて車外を想像するだけで満足した。私はアーモンドチョコをかじりながらスマフォにDLしたジーン・ウルフの『拷問者の影』を読んだ。拷問者ギルドに所属する見習い拷問者のセヴェリアン青年が罪により追放され旅に出る話だ。私のお気に入りはセヴェリアンが師匠から譲り受けた斬首刀テルミヌスエスト(これが世界の分割線)。生と死の分断を表すネーミングも好きだが、セヴェリアンがテルミヌスエストを振るって、人の絆やしがらみを断ち切って新たな地平を切り開いて行くのがいい。「チョコレート、一つもらっていいですか?」 Dに言われてケースごと差し出すと、「ラス
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-22
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26.レイカ

 今夜泊まるヤオマン・インに行く前にコンビニに寄った。洋食屋でエビフライをかじった時に犬歯が抜けた跡を思いっきり刺激してしまい、それからずっと疼痛が続いている。そのせいでせっかくスイーツ棚の前にいるのに楽しい気分になれない。いつもならスイーツを大量に籠に放り込んでこんなに誰が食べんの? ってなるのに、夜食用のおにぎり2つとすっきり濃いすぎ緑茶だけで会計を済ませて終わった。ついでにATMで現金を下ろす。ホテルの支払いのためだ。 ヤオマン・インのフロントで、「先ほど鞠野で予約した者です」 と言うとフロントマンが私とDのことを見比べた後、端末を操作し出した。「ダブルのお部屋でお取りしています。お支払いは?」「現金で」 Dが財布から出した渋沢2枚に同額を乗せて払った。2日でホテル代3万、新幹線代を合わせると4万、底辺作家には痛い出費だ。来月バイトしないと電気代が払えなくなりそう。 カードキーをもらって部屋へ向かう。部屋は12階だった。見覚えのある赤絨毯の廊下を歩いて、突き当たりの一つ前の部屋だった。中に入ると想像以上に広かった。真ん中に白いシーツのダブルベッドが鎮座していた。大量の枕が置いてある。カップルだったら一瞬でテンションが上がるだろうけれど、私たちはそうでないので微妙な空気が流れただけだった。荷物を置いて窓からの景色を見ると駅前の賑わいが下にあった。ホテルがあるのは洋食屋とは反対側なので見えるのはビルばかり、さっきの山脈は見えなかった。「順番でシャワーにしましょう」 Dがレストルームの中を覗いて言った。「ミヤミユからどうぞ」 私はもう少し落ち着いてからがよかった。 Dがシャワーをしている間、スマフォを見た。Xのアプリを開いて、昨晩無断で更新を休んだことに対するフォロワーの反応を探したが一つもなかった。無名作家が勝手に決めた更新日程など、誰も気にとめてはいないのだ。今更と思いつつ、事情によりしばらく更新を休みにする旨をポストした。それにはすぐにいいねがついたけど、それは内容を見たわけではなくいわゆる脊椎反射なのだ。LINEアプリの通知カウントが増えていたけれどヨーコからのものはなさそうなので開いて見ることはしなかった。シャワーをしたのは12時を過ぎてからだった。バスタブに座って滝行のようにシャワーに打たれてい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-24
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27.N市駅

 チェックアウトを済ませて駅に向かう。今回も素泊まりだったので何も食べていなかった。コンビニの前でDに、「朝ごはん買わない?」「あたしはいいです」立ち止まる気配もない。私もDに合わせることにしてコンビニをやり過ごす。夜食のつもりで買ったおにぎりが残っているから、あとで食べることにしよう。 駅チカの食料品街の手前に地下鉄の表示があった。そこからかなり深くまでエスカレーターで降りてようやく改札に行き着いた。エスカレーターに乗っている時から気になっていたが、そろそろ通勤時間だと言うのに人がまばらだった。地下鉄のホームは天井が低く壁面が煤けたレンガのせいで暗かった。ボルトだらけの鉄骨が剥き出しになっていて、いつか見た銀座線の古い写真のようだ。それで宮木野線のチョコレート色の汽車が入線してくるのではと思ったけれど、来たのはアルミの車体にオレンジ色のラインが入った普通の車両だった。 乗車して最初に感じたのは、車内狭い、天井低いだった。「狭くない?」「タケルさんが大きいからですよ」 これまで私は地下鉄で圧迫感を味わったことはなかったのだが。 車両の一番端のボックスシートにDと並んで座る。二人のコロコロを網棚に載せようと思ったら、そんな幅はなくて仕方なく足の間に挟むことにした。これでは前の席に誰も座れないと思ったけれど、発車するまで混むほど人は乗ってこなかった。ピンポロピイン、ピンポロピイン。発車のベルが鳴る。ガシュー、ガコン、ガガガ。ドアの音がうるさい。〈ねぬすえく。は、っさすあぬ〉プファン。アナウンス分っかんねーとギャルのレイカなら言うだろう。普通は何を言ったか分からないと思う。ところが私は完全に理解した。「N市行き。発車します」と言ったのだ。私は横のDを見た。Dも私を見ていた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-26
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28.辻沢バイパス

 N市駅の北口にDと佇んでロータリーに入ってくる車両を眺めていた。そのほとんどが会社員風の人や学生を送りに来た車だった。「なんかワクワクしますね」「なんで?」「藤野家の人が来るかもだから」 藤野家の人とはN市に家があるフジミユとその養女の夏波と冬凪のことだ。この既視感だらけのロケーションだとそれもありえそうだが、私の中ではまだそこまでは思わなかった。とは言え、「辻沢シリーズ」の読者ならではのDの夢を壊すことはない。「そうだね」 と答えておいた。 時間は9時を回り送りの車も段々少なくなって、ロータリーに入ってくる車も途絶え始めていた。「どうします?」「さしあたって朝ご飯は?」 さすがに地下鉄でおにぎりは食べられなかったので空腹のままだった。でも北口は寂れていて食べられる店などどこにもない。「南口のヤオマン・カフェでどうです?」 コンテナハウスで営業するコーヒーショップ、ヤオマン・カフェ。「それは辻沢駅だよ」 私もよくやる勘違いだった。「あ、そうだった。よく分からなくなるんですよね。キャラはいま辻沢にいるのかN市にいるのか」 それって私の描写がわかりにくいってこと?「でも南口のほうが開けてるから何かありますよ」 とDはさっさとコロコロを引いて駅のエスカレーターに向かった。私もそれを追いかけて改札の前を通って南口に出た。N市駅の正面だけあって、人も多くバスの停留場やタクシー溜まり、食べるところもいくつかあった。「あれ!」 Dが指さした右手に目を向けると雑居ビルの一階にヤオマン・カフェが入っていた。「やっぱり、行ってみたい」 Dが言うので朝食はヤオマン・カフェですることにした。 店内に入るとコーヒーの香りがして地元のスタバを思い出した。客はまばらで席を取ることもなさそうなので、そのままレジで注文した。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-28
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29.犬歯

 私とDは大通りにしては交通量が少ない、埃っぽい道を二人してコロコロを引きながら歩くことになった。やがて前方にガードレール型のバリケードが現れて行く手を阻んだ。 倒れかけた工事看板には、「辻沢バイパスの工事をしています。ご協力お願いします。 工事期間:平成〇〇年3月31日まで 発注者 国土交通省 ○○〇地方整備局 電話番号(略) 受注者 ヤオマン建設 株式会社 電話番号(略)」 と書かれてあった。 バリケードの向こうはセイタカアワダチソウが繁茂する空き地が続いていて、工事期間はとうに終わっているし、看板の表面に苔が付着しているところから見て工事自体中止になったようだった。 Dがバックパックを下ろして、中からレインウェアを取り出し着始めた。雨でも降り出すのかと空を仰いだけれど、空は晴れていて降りそうではなかった。さらにマスクをしたのを見て理解した。セイタカアワダチソウ対策だ。これだけ花が咲いていたら中に入ったら全身黄色くなりそうだから。 私もDの真似をしてコロコロの中から長袖を出して着こみ、メッセンジャーバッグからマスクを出して装着した。「行きましょう」 Dがバリケードを乗り越えて向こう側に立った。私も続いてガードレールに手を掛けようとしたらスマフォが鳴った。見るとヨーコからのLINE通知だったのでアプリを開くと、(脳みそ大丈夫そ?)(大丈夫 まだしばらく帰れない) すぐに既読が付いて、(脳みそ大丈夫そ?) と同じ内容が返って来た。(お金が必要なら食器棚の通帳使って) (脳みそ大丈夫そ?) どうやらヨーコはそれ以外の言葉を返す気がないらしいので、(さよなら) と送信してスマフォを仕舞った。 Dがバリケードの向こうから私を見ていた。早くこっちに来いと言っているように見えたので、「お待たせしたね。今そっちにいく」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-30
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