素羽が力尽きて倒れ込む寸前、清人はその身体をしっかりと受け止めた。一方、一足先に手を伸ばしていたはずの司野の指先は、ただ彼女の袖をかすめることしかできなかった。「素羽……」司野は身体を強張らせたまま、清人の腕の中に収まる素羽を見つめる。彼女の全身へ視線を走らせ、両脚が無事であることを確認した瞬間、喉元までせり上がっていた心臓がようやく元の位置へと戻った。だが次の瞬間、血に染まった彼女の腕が目に入り、その胸は再び激しく締めつけられる。司野は痛ましげな声で言った。「怪我をしているじゃないか」極限まで体力を削られた素羽の身体は、筋肉が本能的に細かく震えていた。だが彼女は司野の白々しい気遣いを完全に無視し、ただ清人だけに救いを求めるような視線を向けた。「先輩……ここから連れ出して……」清人は血の気を失った素羽の顔と、その弱り切った身体を見つめ、彼女を抱く腕にそっと力を込めた。「分かった。今すぐここを離れよう」そう言うなり、力なく垂れ下がる彼女の身体を横抱きに抱え上げる。司野がその後を追おうと一歩踏み出した、その時だった。背後から響いた利津の凄惨な絶叫が、彼の足を止めた。声につられるように視線を落とした司野は、そこで初めて利津の両脚が不自然な方向へねじ曲がっていることに気づく。さらに別荘の奥からは、白衣を自らの鮮血で真っ赤に染めた男が、部下たちに抱えられながら運び出されてきた。その凄惨な光景を目の当たりにし、司野の漆黒の瞳孔が鋭く収縮する。――これを、素羽がやったというのか。利津の悲鳴は長くは続かなかった。やがて激痛に耐え切れず意識を失い、そのまま地面へ崩れ落ちる。司野は氷のような冷たい表情のまま、周囲の部下たちに利津を至急病院へ搬送するよう命じた。彼が現場の後始末に追われている間に、素羽はすでに清人の車の助手席へ収まり、その場を離れていた。遠ざかる景色の中で、慌ただしく動き回る司野の姿が視界の端に映る。素羽の表情には何の感情も浮かんでいなかった。だが、その胸の奥では、決して収まることのない激しい感情の嵐が荒れ狂っていた。---病院。医師は手際よく素羽の手首に刻まれた痛々しいメス傷を処置し、全身に散らばる大小の擦過傷へ包帯を巻いていった。しかし、彼女の身体に
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