「……で、やっぱり今日もついて来るんですね? 昨日の男性が、今日もいるのかは分からないのに」 昨日より早い時間の電車の中、当然という顔で私の隣に立っている梨ヶ瀬《なしがせ》さん。それにしても、この人って本当に考えている事が読めないわね。 正直な気持ちを言えば、こうして傍にいてくれるだけでも有難かったりする。いくら気の強い事ばかり言っていても、私だって不安を感じないわけじゃないから。 ……しかもそれが、全く面識の無いストーカー男だったりするのだから。今のところ実害はないけど、やはり警察に相談した方がいいのかもしれない。「あの男が、いつ現れるのか分からないから。でもある程度、彼の行動時間が分かりさえすればこちらからでも……あ、やっぱり今日もいるね」 梨ヶ瀬さんの呟きに頷き、そっと周りに視線を巡らせる。ストーカでも昨日と同じ服装ではないでしょうし、注意しなくては。「今日は俺の斜め後ろ、白のシャツにチェックのスラックス。鞄が……」 梨ヶ瀬さんの後ろを、不自然ではない程度に視線を巡らせていく。背の高い男性サラリーマンに隠れるようにして、あのストーカー男は立っていた。「本当にいますね。今日はこっち見てませんけど、ただの乗客って可能性は?」「その可能性は低いだろうね。そう思いたい横井《よこい》さんの気持ちは分からないではないけど。きちんと今の状況を把握するのも大事な事だよ」 ぐうの音も出ない、梨ヶ瀬さんの言っている事は正しくて……なんだかんだで、私のためを思ってくれての発言だから。「それで、これから私はどうしたらいいんでしょうか? このまま気づかないふりして、放っておくってわけにも……」 認めたく無い気持ちのあるけど、置かれている状況はきちんと把握しておかなければならない。だからこうして、ついて来てくれるこの人を頼ろうと思ったのに……「それ、俺に聞くの? 横井さんは、それで後悔しない?」「はい? また訳の分からないい方をして、私が現状に困ってるのくらい分かりますよね?」 どうして梨ヶ瀬さんの意見を聞くのが、私の後悔に繋がるのか理解できない? それともストーカーはそのままにでもしてろって事なのか、ここまで関わっておいてそれは酷くない? 梨ヶ瀬さんの反応にムッとして、背の高い彼を睨みつけていると……「いいよ、俺が考えてあげても。だけど俺にとって
Terakhir Diperbarui : 2025-09-13 Baca selengkapnya