「それで、結局何のために私をこの部屋に連れてきたんです? そもそも梨ヶ瀬《なしがせ》さんは私に、怪我一つ無いって気づいてたんですよね」 まさか私の注意力が足りないとか言う類の、お説教が始まるとか? それなら資料室で済ませてもらいたかったわね、こっちは私の部署から少し離れてるし。 一人でブツブツと、そんな事を考えてたら……「もし君がさっきので、ショックを受けてたら休ませなきゃって思って」「……え?」 さっきのって、閉じ込められたことよね。梨ヶ瀬さんは私がそれで、精神的なダメージを受けてないかと心配してくれたの? えっと、貴方ってそんな過保護な人でしたっけ?「……そう考えてたけど、全然必要なかったよね。横井《よこい》さんそういうとこ、意外と図太そうだし?」 にっこり笑顔でそういう梨ヶ瀬さん、自分が嫌味を言うのはOKなんですか? さっきのは前言撤回、彼の場合は過保護なんかじゃなくただの気紛れに違いない。「ええ、梨ヶ瀬さんの性根の歪み方には負けますけど。お互い様ですよね?」「そうだね、でもそれって意外と相性良さそうだと思わない?」 何でそうなるんです、いくらなんでもこじつけが酷すぎませんか? この人の頭の中がどうなってるのか、本当に理解出来ない気がする。「私は全く思いませんね。では、先に部署に戻らせていただきます」 言われっぱなしでいるつもりはない、そう言われたらこう返すだけ。そしてまた梨ヶ瀬さんの本気か冗談か分からない遠回しな言葉を聞き流して、彼を置いてけぼりにして仕事場に戻る。 それでも、助けに来てくれた時の梨ヶ瀬さんは普段よりカッコよく見えたのは、彼には絶対黙っておくことにしようと思った。「ああ、横井さん無事だったんだね? さっきは梨ヶ瀬が血相を変えて走って行くから、君に何かあったのかと思って……」 梨ヶ瀬さんから離れ、部署に戻る途中で鷹尾《たかお》さんに出会う。 鷹尾さんが私のことを梨ヶ瀬さんに知らせてくれたおかげで、資料室の件が大事にならずに済んだのよね。彼には一言お礼を言わなければと思っていたので、ここで会えたのは都合が良くて。「はい、鷹尾さんのおかげで助かりました。閉じ込められてすぐ梨ヶ瀬さんが来てくれたので、私も怖い思いをせずに済んだんです」 そう言うと、感謝の気持ちを込めて深々と頭を下げる。梨ヶ瀬さんには素直な行動は
Terakhir Diperbarui : 2025-10-06 Baca selengkapnya