「そういう梨ヶ瀬《なしがせ》さんは、いつでも余裕ですよね?」 まるで手のひらで転がすように私を操って、結局最後は彼の思い通りにしてしまう。扱いにくいはずの私をこんなにも容易く、笑顔のままで……「んー、そうでもないけど? まあ……カッコ悪いのは見せたくないよね、特に気になってる相手には」「へえ、そうなんですか。梨ヶ瀬さんでもそういう事考えるんですね、意外でした」 こんな癖のある男性を夢中にさせるような女性とは、いったいどれほど魅力的な人なんだろう? この人がその相手に、どんなふうに愛を囁いたりするのか。 正直なところ、気にはなるけど全く想像がつかない。「ねえ、横井《よこい》さんのその反応ってわざと? それとも、天然?」 ちょっと困ったような笑みを浮かべる梨ヶ瀬さんは、その私への問いかけで何かを試そうとしているみたい。「少なくとも私は、天然と言われることはありませんね。むしろ勘が鋭い方だと、よく言われます」 これでも他人の微妙な変化には、わりと気が付く方だと思ってる。 逆に天然だと言われるようなことはほとんどなく、気の強さも手伝って可愛げのない女にみられることが多い。 それなのに……「ふーん。その割に自分のことには、随分鈍いように見えるけど?」「鈍いって、どこがですか? 梨ヶ瀬さんの言う事って、いまいち分かりにくいんですけど」 もちろん彼が、わざとそんな言い方をしているのは分かってる。梨ヶ瀬さんの言葉に含まれた、私に対してのそれも何となく気が付いてはいるが……あえて知らないふりをしていて。 そうやって鈍感な女を演じて、何もわかってないように見せていなければ。きっとこの人に本気を出されたら、今みたいな状況の私なんて簡単に流されてしまうから。「あはは、本当にいいね。横井さんのそういうところ、退屈しないよ。君と一緒だと、これから毎日が楽しくなりそう」「私は構わないでくれたほうが嬉しいんですけど? 楽しいのはきっと、梨ヶ瀬さんだけですし」 私が誤魔化そうとしたことも、多分バレているのだろう。梨ヶ瀬さんはわざと問い詰めるようなことはせず、この会話を楽しんでいるようだった。 意味深な言い方で、私を揺さぶろうとする梨ヶ瀬さん。早く私みたいな平凡な女から、興味をなくしてくれるといいのだけど……「ああ、そうかもね? 俺って結構自分優先で物事を
Terakhir Diperbarui : 2025-09-27 Baca selengkapnya