部屋へ入ると、楚行雲は使用人に命じて周歓のためにスイカを切り分けさせた。一方で自らは衝立の脇へ歩み寄り、目を細めて奥の間をそっと窺う。 寝台の傍らには脱ぎ散らかされた衣が乱雑に落ち、幾重にも垂れた帳の隙間からは、白い腕が一本、力なく寝台の端へと投げ出されていた。 薄暗い紗帳の向こうには、しなやかな身体の起伏がほのかに浮かび上がっている。 楚行雲がその妖艶な光景を心ゆくまで眺めようとした、その時だった。 背後から、ひとつ咳払いが聞こえた。 楚行雲は慌てて振り返る。 そこには片脚を大きく組み、礼儀などどこ吹く風といった無造作な格好で椅子に腰掛ける周歓がいた。 頬杖をつき、口元にはからかうような笑みを浮かべながら、興味深げに楚行雲を見つめている。 「楚行雲殿、こっちへ来て一切れどうだ」 周歓は、すでに切り分けられたスイカを指さした。 楚行雲は足早に歩み寄り、周歓の向かいへ腰を下ろす。 周歓は礼儀などお構いなしに、楚行雲が手を付けるのも待たず、自らスイカを頬張って満足そうに頷いた。 「これは上物だな。実によく熟れている」 楚行雲はしばらく周歓の様子を窺っていたが、やがて目を細めて笑みを浮かべた。 「周歓様、お顔の色もすっかり良くなられましたな。この私の手配、お気に召していただけましたかな」 周歓はあっという間にスイカを一切れ平らげると、果汁の滲む唇を手の甲で拭った。 「楚行雲殿には、何もかもお見通しというわけか」 そう言って、楚行雲へ向かって指をくいっと曲げる。
Last Updated : 2026-07-01 Read more