寂光寺にて、周歓は斉王の前で事の顛末を余すところなく報告した。 深夜になってようやく寂光寺を後にした周歓は、楚邸へ戻ろうと歩き出した。その時、久しく見ていなかった人影が目に留まる。 そこに立っていたのは沈驚月だった。 鮮血を思わせる真紅の軍装に身を包み、その赤いマントは夜の闇の中でもひときわ目を引き、風を受けて大きくはためいている。 彼は少し離れた場所に静かに佇み、まるで誰かを待っているかのようだった。 「これは沈驚月様ではありませんか。こんな夜更けまでお休みにならず、どなたをお待ちで?」 周歓は数歩手前で足を止め、含み笑いを浮かべながら、沈驚月を頭の先から足元まで眺めた。 沈驚月はわずかに横顔を向け、眉をつり上げて言った。 「少し気晴らしに外へ出て、景色を眺めていただけだ。何か文句でもあるのか」 「いえ、とんでもありません。文句などあるはずがないでしょう」 周歓は、夜露ですっかり濡れた沈驚月の裾をちらりと見やると、事情を察して小さく笑った。 「では、景色を楽しんでおられるところへ水を差すのも野暮ですね。夜更けは露も深く冷え込みます。どうぞお風邪など召されませんよう」 そう言って踵を返しかけた、その時だった。 背後から沈驚月の低い声が飛んできた。 「周歓、私はお前を見損なったぞ」 「……何ですって?」 周歓は眉をひそめて振り返る。 沈驚月は軽蔑しきった眼差しを向けながら言った。 「お前は人を
Last Updated : 2026-07-24 Read more