エリンは困ってしまった。壁を出して見せてと言われても、具体的なやり方が分からない。 追い詰められたあの時ならば、できそうな気がしたのだが。安心してしまった今では逆に分からなくなってしまった。 半ば無意識にペンダントを握って、どう説明したものかとまごついてしまう。「能力に目覚めたばかりで、まだ使い方が分かんないかな?」 セティが助け舟を出してくれたので、エリンはほっとしてうなずいた。「ふむ、それもそうですね。無理を言ってすみませんでした。少しずつ使いこなすようにしていきましょう」 ラーシュが穏やかに言って、シグルドも同意した。「十三歳で力に目覚めるのは、相当に早い。セティは十二歳で、記録上のエインヘリヤルの中で最も早かったよ。エリンはそれに次ぐだろう。 白獣を狩る機会は、これからいくらでもある。実戦前に訓練をして、様子を見ながらやってみよう。それでいいかな、エリン?」「はい!」 こうやってエリンの意思を確認してもらえるのは、村ではほとんどなかった。彼女はいつも、決定事項を告げられるだけだった。 そして孤児であるのを気にせず、能力を気味悪がらず、対等に話してくれるのも。 エリンの心に、暖かいものがじんわりと込み上げた。 この人たちと一緒に行きたい。この人たちとなら、友だちになれる。そう感じる。「司祭殿、村長ご夫妻。そういうわけで、エリンは我々が預かる。この村から主神オーディンの戦士を輩出したこと、栄誉と思っていただきたい」「は、はい」「仰せのままに」 司祭と村長は平伏するばかりの勢いで、頭を下げた。 ……私にも、居場所ができるかもしれない! エインヘリヤルたちの話を聞いた夜、エリンは興奮してなかなか眠れなかった。 すぐ隣では、小さなティララが健やかな寝息を立てている。 子どもたちとお別れになるのは心残りだったが、二度と会えないわけではない。エリンが望めば
Last Updated : 2025-08-24 Read more