エリンの指先では、緑の石の髪飾りが光っている。「な、ど、どうして!?」 光壁を例外とすれば、ほとんど初めて能力の自発的な発現に成功したエリンは、驚きと焦りで言葉が出ない。「話を聞いてピンと来たのよ」 と、ベルタ。「エリンの能力が発動したのは、いつも何か望みや願いがある時ばかり。 寒かったから火が欲しかった。ティララに落としたスプーンをぶつけたくなかった。手の届かない木の実を取りたかった。ってね。 白獣の時もそうよ。必死に子どもたちを守ろうとしたのでしょう? 能力の初期においては、欲求と発現が紐づいていることが多い。ごく自然な反応だわ」「やれやれ、精神感応能力者<テレパシスト>顔負けの分析ですね」 ラーシュが苦笑している。 エリンはしばらくぼんやりして、やっと我に返った。「ベルタさん! いくら訓練でも、大事な髪飾りを放り投げるなんて、やめて下さい! 私がちゃんとできなかったら、どうするつもりだったんですか!」「シグ兄が拾ってくれたと思うよ」 セティに冷静にツッコミを入れられて、エリンの顔が真っ赤になる。「そうだけど、そうだけど! 急にやるから、びっくりしましたっ! はい、返します!」 やや乱暴に緑の髪留めを突き出すが。「いらないわ。能力成功のお祝いに、エリンにあげる」 熱のない口調で言われ、エリンは戸惑った。「え、でも、お父さんからの贈り物だって……」「ああごめん、エリンはお父さんとお母さんを探したいのよね。でも、悪いけど。うちの親父はろくでなしで、正直、関わりたくないのよ。その髪留めは、父にしてはセンスが良かったから使っていたけど。エリンの方が似合いそうだから、あげる」「そんな……」「ベルタ姉がいらないなら、じゃあ、俺がもらう!」 横からセティの手がひょいと伸びてきて、緑の石をつまんだ。「おおー、これ、ベリルじゃん! 緑柱石! 色も瞳にそっくりだし、下の方にちょっと金入ってて、ベルタ姉
Last Updated : 2025-09-01 Read more