──2022年春 いつもの電車に揺られて、通勤する。 都内にある会社の最寄り駅、そこから徒歩5分 途中、同じ会社の人たちに会う。 「おはようございます」 「おはよう〜」 「おはようございま〜す」 朝の挨拶から始まる一日 そのひとことのテンションで、 相手の今日の体調が分かるようになった。 欠伸《あくび》をしながら、眠そうにしている人、 物凄く大きな声で、とても元気な人、 何か急いでいるのか、小走りで走りながら挨拶する人。 そして、会社に着くと、 私の推しは、今日も爽やかだ! 「おはようございます」 「おお、おはよう! ひまり」 今日も元気だ! そして、カッコイイ! いつも、なぜか私を下の名前で呼んでくれる。 ──う〜ん、今日もイケメ〜ン 名前呼びは、めちゃくちゃ嬉しい〜 それだけで顔が綻《ほころ》ぶ 嬉しい1日の始まりだ。 椿ひまり もうすぐ22歳 入社して2年目の一般事務員、 去年、一部上場企業の建設工事会社、工事部に配属された。 丸1年経っても未だに推しへの思いは変わらないのだ。 私の推しは、同じ部署で働く4歳年上の今年26歳 田上大翔さん 憧れの先輩だ。 ──はあ〜今日もカッコイイ〜 なんて美しいお顔なの? 毎日拝めるなんて、それだけで十分幸せ 本当は、ずっと眺めていたいけど、そうもいかない。 それに、 決して私から告白することなど、ないだろう。 だって彼には…… 会社No.1の美人彼女さんが居るのだから。 それを知ったのは、入社後1週間の研修期間が過ぎ、この部署に配属された初日だった。 同時に私は、その日、田上さんに一目惚れしたのに、告白もせずに撃沈したのだ。 ─────1年前 2021年4月 同期の女子が話しているのを聞いた。 田上さんは、かなりのイケメン具合で同期の間でも有名だった。 「工事部の田上さんって、会社でNo.1の美人彼女さんが居るんだって」 「!!!」思わず目を見開いた。 ──嘘! 「え? そうなの?」と、興味津々で聞いている同期の女子たち 私は、思わず「終わった……」と呟いた
Last Updated : 2025-09-18 Read more