All Chapters of いつもあなたのそばにいたい: Chapter 1 - Chapter 3

3 Chapters

第1話 私の憧れ

──2022年春 いつもの電車に揺られて、通勤する。 都内にある会社の最寄り駅、そこから徒歩5分 途中、同じ会社の人たちに会う。 「おはようございます」 「おはよう〜」 「おはようございま〜す」 朝の挨拶から始まる一日 そのひとことのテンションで、 相手の今日の体調が分かるようになった。 欠伸《あくび》をしながら、眠そうにしている人、 物凄く大きな声で、とても元気な人、 何か急いでいるのか、小走りで走りながら挨拶する人。 そして、会社に着くと、 私の推しは、今日も爽やかだ! 「おはようございます」 「おお、おはよう! ひまり」 今日も元気だ! そして、カッコイイ! いつも、なぜか私を下の名前で呼んでくれる。 ──う〜ん、今日もイケメ〜ン 名前呼びは、めちゃくちゃ嬉しい〜 それだけで顔が綻《ほころ》ぶ 嬉しい1日の始まりだ。 椿ひまり もうすぐ22歳 入社して2年目の一般事務員、 去年、一部上場企業の建設工事会社、工事部に配属された。 丸1年経っても未だに推しへの思いは変わらないのだ。 私の推しは、同じ部署で働く4歳年上の今年26歳 田上大翔さん 憧れの先輩だ。 ──はあ〜今日もカッコイイ〜 なんて美しいお顔なの? 毎日拝めるなんて、それだけで十分幸せ 本当は、ずっと眺めていたいけど、そうもいかない。 それに、 決して私から告白することなど、ないだろう。 だって彼には…… 会社No.1の美人彼女さんが居るのだから。 それを知ったのは、入社後1週間の研修期間が過ぎ、この部署に配属された初日だった。 同時に私は、その日、田上さんに一目惚れしたのに、告白もせずに撃沈したのだ。 ─────1年前 2021年4月 同期の女子が話しているのを聞いた。 田上さんは、かなりのイケメン具合で同期の間でも有名だった。 「工事部の田上さんって、会社でNo.1の美人彼女さんが居るんだって」 「!!!」思わず目を見開いた。 ──嘘! 「え? そうなの?」と、興味津々で聞いている同期の女子たち 私は、思わず「終わった……」と呟いた
last updateLast Updated : 2025-09-18
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第2話 ご飯

会社のエレベーターの中で2人きり、私はそれだけでドキドキする。 「悪かったな、仕事してもらった上に待たせて」 「いえ、全然大丈夫ですよ」 思ったより、落ち着いて話せている。 「腹減った〜ひまり! イタメシ大丈夫?」 「はい、大好きです」 ──うわ〜田上さんとイタメシだなんて、最高過ぎるよ。たとえコレが最初で最後だとしても、きっと一生の思い出になるよ。 神様仏様ご先祖様、ありがとうございます。 私のニコニコは、止まらない。 そして、田上さんがタクシーを停めてくれたので、2人で乗り込んでお店へと向かった。 私は、どうしても1つ気になって仕方がなかった。 モヤモヤして、やっぱり聞かずには、居られなかった。 なので、思い切って聞いてみた。 「あのう〜」 「ん?」 ──うわ! 近っ! 田上さんがすぐ左隣りに座ってる〜 あ〜なんだか良い香りがする。 見つめられるとドキドキしてしまう。 長い時間、見つめ合うのは恥ずかしくて耐えられないので、一旦目線を外してから質問をした。 「私なんかと2人で食事に行っても大丈夫なんですか?」 全部言い終わるか否かで、もう一度目を合わせた。 「え? どうして? ダメなのか?」と、 田上さんは、上体を私の方に向けて座り直し、食い入るように大きな目で私を見つめている。 ──あ〜ダメだ〜それは反則だ。 「いえ……」 ──あ〜この先がやっぱり怖くて聞けない。 あの綺麗な彼女さんとのこと。 「あ、ごめん、ひまり彼氏居るのか?」 と、誤解をさせてしまったようだ。 「え? いえいえ、そんなの居ませんよ」と、また私は、両手をぶるぶるさせた。 ──どうして、そうなるの? 「そっか、なら良いよな」 と、なぜか下を向いて笑っている田上さん ──ん? 良いの? あなたの方が彼女に妬かれたりするのでは? え? とても寛大な女性なのかしら? 私ならたとえ部下だと分かっていても女性と2人キリでなんて食事に行って欲しくはないな。 それとも、まさか別れたの? いや、まさかだよね、そんな噂は全く聞かないんだけど…… かといって、今、いきなり『彼女は?』とは聞きにくい。 う〜ん、まだ楽しい食事も始まってもいないのに、 雰囲気を壊
last updateLast Updated : 2025-09-18
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第3話 告白を受けて…

「……」 突然の言葉に気が動転した。 というか、まだこの時点では、どういうことなのか? 私は理解出来ていなかった。 「ん? ダメ?」とちょっと自信なさげに聞いてくれている田上さん 「はい〜〜〜〜?」 私は、頭が混乱して何がなんだか意味が分からず、変な声を出してしまった。 「え? あの〜今、俺、渾身の告白をしたんだけど……」 とテーブルの向こう側で困った顔をしている田上さんが私を大きな目で見つめている。 そして、更に 「ん?」ともう一度優しく聞き直しながら、笑顔で私を見つめている。 ようやく私に言ってるのだと理解して、 「え〜〜〜〜〜〜!」と、 今日一番大きな声を出してしまった。 「あ、ごめんなさい」と思わず自分の口を両手で覆って、周りをキョロキョロ見たが、半個室なので、お隣りの席の方のお顔は見えない。 田上さんは、不思議そうに、 「ん? どういうこと?」と言っている。 「いやいやいやいや、それはこっちのセリフですよ! 田上さん彼女さんと別れたんですか?」と聞くと、 「え? 彼女? 誰の?」と言う。 「え、田上さんの!」と、私は右手の掌を上に向けて、『あなたですよ』と言わんばかりに、田上さんの前に右手を差し出した。 すると、 「なあ〜ひまり! なんだかさっきから、ずっとひまりは、俺に彼女が居る体で話してるみたいだけど、誰のこと? 俺、彼女なんて居ないよ」と言われた。 「え? 嘘! いつから?」 と、驚き過ぎてタメ口をきいてしまった。 「う〜ん、会社入ってからだから、丸3年かなあ?」 「え〜〜〜〜!」 噂は嘘だったんだという驚きで、 また、大きな声を出してしまったので、 慌てて自分の口を覆った。 この1年間は、いったい何だったのだろう。 「なあ、彼女って、一体誰のことを言ってるの?」 と聞かれたので、 「会社No.1美人秘書の……」と言うと、 「もしかして、山本 菜緒美のことか?」と言う田上さん。 確かそんなお名前だったなと思い、 「はい、おそらく」 と答えると…… 「グッ、ハハハハッ」と田上さんは、笑っている。 どうして笑っているのだろう? と不思議な顔で見ていると、 「あ、ごめん。それ、俺の姉貴」と言った。 「え〜〜〜〜っ!」 さすがに3度目ともなると田
last updateLast Updated : 2025-09-19
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