もう夕方4時を過ぎた。 離れられなくなっている。 「夕飯一緒に食べて行く?」と聞いた。 すると、ヒロさんは、 「あ〜そうしたいんだけど、今日は帰るよ」 「そう?」 その言葉に、やっぱり少し寂しくなった。 「さすがに、ひまりも疲れたでしょう?」 「え、あ〜う、ん……」 カラダは疲れてはいたが、ヒロさんが帰ってしまう寂しさの方がまだ勝ってしまって、落ち込む。 もう少し一緒に居たいと思ってしまっている。 すると、 「一応今日、家族皆んなで家で食事する約束なんだよ、姉貴たちも出て行くからね」 「あ、そうなんだ」 それは、大切な時間だ。 「なら、早く帰らないと。ごめんね」 私の我儘で、ヒロさんを引き止めてはいけないと思った。 「ううん。本当はね、ひまりも今日連れて行きたかったんだけど……」と言うヒロさん。 「え?」 「さすがに突然過ぎて、ひまり驚くかな〜と思って……」 驚くに決まってる。そんなの緊張しすぎて心臓が飛び出しそうだよ。 「そりゃあ……」 「だよね〜? さっき、おふくろに30日に〜って電話したら、『え〜〜今夜連れて来てよ〜私だけ会ってないのに、ズルい! 早くひまりちゃんに会いたい!』って我儘言われちゃって」と、少し困った顔をしながら笑っている。 「え〜〜!」 ──嘘でしょう? それは、さすがにまだ心の準備が…… 「もちろん、我儘言わないで! って宥めたんだけどね」 そう言うと、ヒロさんのスマホが、ピコピコ鳴っている。 「メッセージ?」と聞くと、 「そう
ピーンと鳴ってエレベーターが到着した。 ヒロさんの姿がエレベーターの細い窓から見えたので笑顔で手を振る。 扉が開いて、 「おかえり〜」と言うと、 「ただいま〜」とぎゅっとハグされた。 周りには誰もいない、良かった。 「久しぶりだな!」と笑うヒロさん。 「ふふ、数時間ぶり?」 また手を繋いで部屋まで歩く。 ──やっぱり2人が良い 「お土産買って来た」と言うヒロさん。 「ありがとう! 何?」 「プリン」 「やった〜! 嬉しい」 ──ふふ、最初から来るつもりだったんじゃん 「どうぞ」とドアを開ける。 ヒロさんが先に入って、 「ハハッ、ホントだ。まさに片付け中だな」と笑っている。 「うん、全然進まない」 「ん? コレを見てたからでしょう?」と、写真シールのファイルを見つけたようで笑っている。 「あ、置いたまま忘れてた」 「見てもいい?」と言う。 「え、恥ずかしいな」 「良いじゃん」と微笑んでいるヒロさん。 「うん、後でね。先にプリン食べよ!」と言うと、 「うん」と、手を洗いに行くヒロさん。 そして、ソファーの上を見て、 「コレが噂のうさぎちゃんたちですか」と見ながら微笑んでいる。 「うん、可愛いでしょう」と言うと、 「うん、ひまりらしい」と微笑んでいる。 そして、ベッドサイドの自分のアクスタを見つけて、 「うわっ! コレかあ〜」と気まずそうな顔をして笑っている。 「ふふ、カッコイイでしょう! 私の推し」と
一緒にブランチを食べて、ヒロさんを送り出す。 「じゃあ、またあとで連絡する」 「うん、気をつけてね、滝沢さんによろしく」 「うん、じゃあ」 「うん」とまた、玄関ドアから見えなくなるまで手を振るが、 「ヒロさん!」と、 やっぱり走ってエレベーター前まで来ちゃった。 「ふふ」 「ふふ」 手を繋いで一緒にエレベーターが来るのを待つ。 ピーン とうとう、エレベーターが来てしまった。 「じゃあ、行って来ます」 「行ってらっしゃい」 私が悲しそうな顔をしていたからか、 チュッと軽くキスをしてくれた。 そして、私はエレベーターの小窓からヒロさんの姿が見えなくなるまで手を振った。 「あ〜あ、行っちゃった」 トボトボと部屋まで帰る時の心境は、何とも言えず寂しいものだ。 ──なんだ! この脱力感、喪失感は…… あ〜もう既に、ヒロさんロス! きっとまた、すぐに連絡が来るし明日からも会社で毎日会える。なのに、物凄く寂しい。今までとは違うからなのか。 この3日間、ずっと一緒に居たせいだろうか…… 「はあ〜。そうだ! お母さんに電話しなきゃな」 「電話してから、美香に聞いてもらおう」 とても1人では抱えきれない。 「お母さん!」と久しぶりに電話をかけた。 たまに、メッセージでは連絡をするが、電話はほぼ掛けない。 「あら、珍しいひまりから電話なんて、何かあったの?」と、やっぱり言われた。 「あ、今ちょっと良い?」 「うん、どうしたの?」
お風呂上がりに、とりあえず私の1番大きなシャツを着てもらう。 それでも、ヒロさんには小さめだが、なんとか入った。 パジャマのズボンのような物もないので、 私のジャージを履いてもらうと、やっぱり短い。 「ふふふふ、ヒロさんのも置いておかなきゃね」 と、笑っていると、 「うん、じゃあ引っ越しまで又泊まっても良いんだね」と笑っている。 「うん、良いよ」と抱きしめると、 「あ〜ひまり〜大好き」と言いながら、私のこめかみにキスをしている。 「ふふ〜」 ──だめだ、このままだと第3ラウンドになってしまう。もう無理〜! 私は、誤魔化すように、話し始めた。 私の家族は、両親と祖父母と、弟が1人居ると。 「そうなんだ! 弟くんが居るんだ。俺には姉貴しか居ないから、男兄弟って憧れる」と嬉しそうだ。 私の2つ下だからまだ大学2年で、ようやく今年20歳。 「そっかあ〜1番楽しい時期かもな」とヒロさんが言う。 ──ヒロさんもやっぱり大学生の頃が一番楽しかったのかな と思うと、ふとヒロさんの女友達と称した数々の女性たちと、歳上の元カノさんのアバターが私の頭の中に現れた。 「ひまり?」 「あ、ヒロさんも大学生の頃が1番楽しかった?」と聞くと、 「俺は社会人になって、ひまりと出会ってから今が1番楽しくて幸せ」と言った。 なんだか泣きそうになった。 「ん? どうした?」 ヒロさんをぎゅっと抱きしめた。
「「ご馳走様でした」」 「美味かった〜」 「良かった、あ、後でデザートも食べようね」 「うん」 使った食器をシンクまで運んで洗う。 ヒロさんも食器をすすいでくれた。 「ありがとう」 「ううん」とニコニコしている。 洗い終えると、 「じゃあちょっと滝沢に連絡するよ」とソファーに座るヒロさん。 「うん」 そうだった、あれからずっと一緒に居るから、まだ滝沢さんに連絡してなかったんだった。 私は、さっき買ったアイスを冷凍庫から取り出した。バニラとチョコと1つずつ選んだので、半分ずつ器に盛り付けて、苺を洗って2粒ずつ乗せた。 ヒロさんは、私にも聞こえるように、スピーカーフォンにしてくれて、滝沢さんに電話を掛けた。 「お疲れ〜」 『お疲れ! はいはい可愛い彼女とラブラブな田上さんですか〜?』と、いきなり弄られている。 「グッ、お前なあ〜」 『いや〜ん当たり〜? もしかして今もラブラブ中〜?』と言う滝沢さん。 「オイ!」と言いながら笑っている。 『ハハッ、すまんすまん、おひとり様の妬みだよ』と滝沢さん。 「ハハッ」 (ふふふふ)私は声を出さずに笑いながら、苺とアイスの器を持って、ヒロさんの隣りにそっと座る。 『で、どうする?』 「やっぱり2件目に見たマンションにするよ」 『了解〜! あれは2度と出ないぐらいの最優良物件だからなあ』と言う滝沢さん。 『じゃあ明日契約に来れるか?』 「うん大丈夫、昼前には行くよ」 『分かった』 私は、ヒロさんにも早く食べさせてあげたいと思ったので、バニラアイスをスプー
「何食べたい?」と聞くと、 「う〜ん、ひまりの得意料理!」と言う。 「え〜〜私の得意料理って、なんだろう?」 いつもは、1人だから本当に適当だし、常備菜を作ったら、あとは、味を付けたお肉や魚を焼くだけなどの状態にして、1食分ずつストックしている。 「え、どうしよう。今日のお昼は、ハンバーガーを食べたし、昨日の夜は、イタリアンをご馳走になったからピザもパスタもお肉もお魚もいただいたし……じゃあカレーは? チキンカレー!」 「うん、食べたい!」と、喜んでくれるヒロさん。 きっと私がどんなメニューを言ったとしても、優しいから『食べたい!』と言ってくれたんだと思う。 だって…… 「でも、ひまり疲れてない? 大丈夫?」と気遣ってくれたから。 「カレーなら切って煮込むだけだから、大丈夫だよ」 「なら良かった。じゃあお願いしま〜す」と、ニコニコしている。 「そのうち、ヒロさんも一緒にお料理しようね」と言うと「ふふ〜」と笑って誤魔化している。 お料理は、ほとんどしないようだ。 カレーの材料と、いつもの食材を買い込んで、今日は、ビールも買って…… 「コレで良いかなあ?」と言っていると、 「デザートも買おう」と、苺をカゴに入れるヒロさん。 「ふふ」 更に「あ、もう1つ」と手を引かれて、冷凍庫のコーナーへ 「え? アイス?」と言うと、 「うん、アイス食べよう」と言う。 「うん、食べよう」 ──やっぱり普段は、カッコ