All Chapters of 夫と子を捨てた女、離婚後に世界の頂点に立つ: Chapter 11 - Chapter 20

院長先生はポケットからキャンディーを取り出し、孫のように可愛い脩太を笑顔で声をかけた。「ほら、脩ちゃん、これ見て？」ところが、脩太の顔は一瞬で曇った。鼻を手でつまみながら嫌悪感を露わにして距離を取る。「やだ！そんなくさったキャンディーいらない！くっさい！ばあちゃんがくさいから、キャンディーもくさい！」脩太は鼻をつまんだまま路加に向って文句を言った。「路加おばさん、ここやだ！遊園地に行きたい！」「はいはい、あとでね」路加は穏やかに笑いながら、バッグから高級チョコを取り出して脩太の口に運んだ。「これおいしいでしょ？あっちでちょっとだけ待っててくれる？」脩太は素直に頷き、パタパタと走り去って

将臣は一歩前に出て亜夕美の腕を掴み、声を抑えてはいたものの厳しく叱責した。「俺の前で何を言っても構わない。でも、子供の前ででたらめを言うな！『私にこんな息子はいない』だと？自分が何を言っているのか分かっているのか？」脩太は平手打ちを受けて呆然としていたが、亜夕美の言葉を聞いた瞬間、路加の懐から飛び出し、小さな拳で亜夕美の身体を何度も叩き始めた。「いらないいらないいらない！！優しいママじゃないくせに！お前なんて世界で一番悪いママだ！！う……うえーん！！……僕もママの息子なんて絶対嫌だ！」亜夕美はその小さな拳に叩かれて、よろめきながら後退したが、もう脩太を見ようともせず、身体を引きずるよう

富裕層と一言でいっても、そこには「格」がある。将臣がピラミッドの第一層にいる名家だとすれば、佐武静樹はピラミッドの頂点に君臨する存在だ。小夏弁護士は静樹が一からに育てたと言われており、彼の愛人だという話も一部ではささやかれていた。よほどのことがない限り、将臣は昔からの友人である静樹とこんなことで対立したくはなかった。亜夕美は口元の血を指で拭いながら、何も言わず無視を貫いた。だがそんな彼女の無視する態度は、将臣の怒りを爆発させた。「小夏美羽を頼るとは、さすが鼻がきくな。だが、忠告しておく。もし路加を傷つけるような真似をすれば、俺は昔の情なんて忘れて、手段を選ばずいくからな！」そう言っ

将臣の不倫とDVのニュースは、再び突如としてネット上でトレンド入りした。辰川グループの後継者で、ハンサムで金持ち。もともと注目を集める存在だ。前回のスキャンダルは、まだ信じない人もいたが、今回、小夏弁護士が妻側の代理弁護士として正式にコメントを発表すると、ネットユーザーは荒れに荒れた。将臣が情報の封じ込みを図れば図るほど、逆効果となり、ネットユーザーの反感を買った。最終的には「隠ぺいするな」という論調が爆発。逆風が吹き荒れた。その直後、亜夕美のXアカウントが6年ぶりに更新され、事件はクライマックスへと突入した。彼女が投稿したのはたった一件だったが、その内容は自身が受けたDVの事実、そ

将臣は片手に脩太を抱き、もう片方で路加を抱き寄せ、カメラに向かって路加は他人の家庭を壊した張本人ではないと話していたその頃、亜夕美は自分の口座残高を確認し終えたところだった。そしてすぐに芸能ニュースの通知が届き、何気なくタップすると、将臣が路加を庇う発言をしている場面が流れてきた。彼はこう言った。「僕と路加の家は昔からの付き合いで、僕たちは幼馴染です。ネットで出回っている噂とは全く違います！デマを流した者については、徹底的に法的責任を追及します。絶対に見逃しません！」記者がさらに追及した。「ということは、辰川社長のお話では、路加さんが幼馴染の本命で、亜夕美さんが横入りした、ということにな