「あの件は、私が無理を言ったと思い込んでいたから、何事も譲って、ひたすら自分を押し殺してきた。時間が経てば、私の良さに気づいて、この気持ちをわかってくれるって信じていたの。それが、ますます誤解を深めるだけだったなんてね。興衆に入ったのも、夫婦で力を合わせたかったからなのに。あなたから見れば、何か別の企みがあるようにしか映っていなかったのね」過去を振り返る真琴の声も、表情も、ひどく淡々としていた。まるで前世の出来事を語るかのように。すっかり吹っ切れていた。信行の目の前で、これほどあっさりと当時のことを口にできるのは、すでに心が完全に吹っ切れている証拠だった。すぐ隣でその言葉を聞いていた信行は、真琴へと顔を向けた時、その瞳に複雑な色を浮かべていた。誤解していたのは自分だ。自分のやり方が間違っていたのだ。ごくりと唾を飲み込み、信行は口を開いた。「……すまない。俺が悪かった」その謝罪にも、真琴は気にも留めない様子でふっと笑みをこぼした。笑った後、静かに口を開く。「過去のことよ。全部終わったこと。私はもう乗り越えたから」一人で病に耐え、一人で病院へ通い、一人で誰もいない部屋を守り、一人で悲しみに暮れ、一人で女性関係の尻拭いをし、一人で東都市を去った……終わった。すべての出来事は、もう過去のことだ。その「終わった」、「乗り越えた」という一言に、信行の胸の内には千の言葉が渦巻いたが、何から口にすればいいのかわからなかった。申し訳が立たなかった。自分では、行動で気持ちを示してきたつもりだった。財産を譲ることこそが、自分の誠意の証明だとすら思い込んでいた。だが結果として、真琴はそんなものに少しも見向きもしなかった。それどころか、元々持っていた自分の物でさえ、最後はすべて手放してこちらに明け渡してしまった。長年連れ添ってきたのだから、真琴のことは誰よりもわかっているはずだった。だが、わかろうとしていなかった。押し黙る信行を見て、真琴はふうっと長く息を吐き出すと、さっぱりと笑って言った。「もういいのよ。命を救ってもらったこともあるし、とっくに貸し借りはなしよ」言い終えると、今度は少し念を押すように続けた。「ただね、私が最大限歩み寄れるのも、仕事上の協力関係まで。なんだかんだで昔からの知
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