「今は人と話す時、まともに顔も見ないってわけか」顎をぐいと持ち上げられ、無理やり視線を合わせられた真琴は、微かに眉をひそめると、その手を冷たく払いのけ、表情一つ変えずに忠告した。「言動には少し気をつけて。変な誤解を招くような真似はしないでくれる?」その大真面目な顔に、信行は思わず吹き出すように笑って言った。「俺が何を誤解させたって?」そして言葉を継ぐ。「まあいい。その『誤解』とやらが解けたなら、俺たちもう手打ちにしようぜ」実のところ、誤解でも何でもない。真琴が感じたあの曖昧な空気はすべて、彼が意図して作り出したものだった。わざと揺さぶりをかけ、気を引こうとしていたのだから。視線を再びパソコンの画面に戻し、キーボードを叩きながら真琴は返した。「別に何の誤解もしてないわ。だから、手打ちにするも何もないの」信行が口を開くより早く、さらに気だるげに言い放つ。「今日あなたを呼ぶつもりなんてなかったの。ただ拓真さんたちが呼んだ手前、場をしらけさせるわけにいかなかっただけ。だから、一人で勝手に盛り上がって、変な勘違いしないでよね。私とあなたの関係は、もう完全に終わった過去の話。この先、何かが起こる可能性なんて万に一つもないわ」その一切の揺るぎもない態度に、信行は怒りと苛立ちで腸が煮えくり返りそうだった。だが、いくら腹が立っても、それを直接真琴にぶつける勇気など今の彼にはない。そのままデスクに寄りかかり、しばらく真琴を見つめていたが、胸の奥にはただやり場のない鬱憤が渦巻いていた。やがて立ち上がり、真琴の背後に回り込むと、デスクに両手をついて覆いかぶさるように身をかがめ、彼女を腕の中にすっぽりと閉じ込めた。そして、耳元で艶っぽく囁いた。「まさか昔のこと全部忘れたなんて言わないよな。俺たちの間にあった、あの『気持ちよかった』ことすら思い出せないなんてさ」さらに煽るように挑発する。「本当はいろんなこと、ちゃんと覚えてるくせに」耳元に吹きかかる熱い吐息に、キーボードを叩いていた真琴の両手がぴたりと宙で止まった。はっきりと口に出さずとも、その言葉が何を指しているのかは嫌でもわかった。かつて何度かあった、あの濃密なスキンシップのことだ。手を止めたまましばし沈黙し、やがて少しだけ顔を向けて信行を見上げ
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