真琴は技術開発にのみ関わっているため、細かな事務手続きには関与せず、口出しもしなかった。ただひたすら自分の業務に専念していた。その日の午後、真琴がアークライトのビルから出てきた時、貴博がやって来た。真琴がビルから出てすぐ、見慣れた黒い車の前に立ち、自分を待っている貴博の姿が目に入った。貴博の姿を認めた瞬間、真琴はやはり口角を上げて彼に向けて明るく微笑み、歩み寄って声をかけた。「五十嵐さん」真琴の何事もなかったかのような明るい笑顔に、貴博は助手席のドアを開けてやり、笑って言った。「博士、一緒に夕食でもどうかな」貴博の話し方は、相変わらず大らかで、それでいて優しかった。風が二人の服の裾や髪を揺らしている。貴博の誘いを無下にはできず、真琴は軽く頷いた。「喜んで」そう言って、車に乗り込んだ。ほどなくして車が走り出すと、貴博が何を食べたいか尋ねた。真琴が気取らない和食が食べたいと答えると、貴博は彼女を会員制の落ち着いた小料理屋へと連れて行った。個室に入り、店員が料理を運び終えた後、貴博は細やかに取り箸を使って、真琴の前に料理を取り分けてから、口を開いた。「お爺様が会いに行った件は、こちらの予測が足りなかった。私の落ち度だ。今後は二度と同じようなことは起こさせない。自分のことは、すべて自分で決められる。だから、どうか私を信じてほしい」真琴に振り向いてほしい、いつか結ばれたいと願っているからこそ、貴博は彼女の前では常に細やかな気配りを欠かさなかった。仕事で見せるような、すべてを自分で取り仕切り、周りに気を遣わせるような威圧的な態度は一切見せなかった。真琴に対して、いつだって真剣だった。二年前も、そして今も。今日、貴博が自分に会いに来た目的は、真琴も彼の姿を見た瞬間にすでに察しがついていた。貴博の言葉を聞き終えると、真琴の食事をする手も止まった。少し考え込んだ後、静かに言った。「東央は今、アークライト、それに興衆と次世代遠隔操作技術の提携について話し合っているところなの。私はこれから先、ますます仕事に没頭することになると思うから、他のことに割く時間も気力も、なくなっちゃうと思う」過去を吹っ切り、新しくやり直そうと考えたことも、貴博と一緒になることを考えたこともあった。だが、五十嵐
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