「それが、近藤ミキっていう女優さんなんです。しかも、集めてた男の子たち、全員二十歳そこそこのピチピチな若い子ばっかりで!」芸能界に疎い張本社長は、「へえ」と興味なさそうにグラスを傾けた。――その瞬間。パキィッ!!鋭い破裂音が部屋に響いた。澪士の右手に握られていた分厚いクリスタルグラスが、粉々に砕け散っていたのだ。鋭利なガラスの破片が指の腹に深く食い込み、滲み出した赤い血が琥珀色の酒と混ざり合う。それが真っ白なテーブルクロスに滴り落ち、不気味な暗い染みを作った。「きゃっ!?」|隣にいた女が短い悲鳴を上げ、慌てておしぼりに手を伸ばした。「に、二階堂社長!動かないでください、今私が……!」「……触るな」澪士は無造作に彼女の手を払いのけた。決して乱暴な動作ではなかったが、そこには一切の拒絶を許さない、背筋が凍るような冷気が満ちていた。彼は胸ポケットからシルクのハンカチを抜き取ると、指先にこびりついた血と酒を、ひどくゆっくりとした動作で拭き取り始めた。視線すら上げない。まるで、たった今素手でグラスを握り潰したのが自分ではないかのように。やがて、指先から鋭い痛みが遅れて脳に届いたとき、澪士はほんのわずかに――周囲には気づかれないほど微かに、眉根を寄せた。「に、二階堂社長……大丈夫ですか?」さすがの張本社長も血の気を引かせて固まっていた。「……ええ、大したことはありません」澪士は静かに立ち上がった。仕立ての良いスラックスの折り目が、ナイフのように鋭く影を落とす。先ほどの、ほんの一瞬だけ見せたどす黒い失態は、すでに深淵のような瞳の奥へと完全に押し込められていた。彼の声はいつも通り平坦で、口元には慣れた笑みすら張り付いている。「少し、急用を思い出しまして。……お先に失礼します」隣のVIPルームのドアはわずかに開いたままで、中から若く、媚びるような男たちの声が漏れ聞こえてきた。「ミキ先輩、クランクインしたら絶対俺のこと贔屓してくださいね。分からないことだらけなんで、手取り足取り教えてくださいよ」澪士の瞳が、さらに昏く沈み込む。ガラスの破片が食い込んだ指先の傷が、じくり、と熱を持って疼いた。一方、その頃。若手俳優たちのあまりの熱量に、ミキはすっかり圧倒されていた。元々そ
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