七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した의 모든 챕터: 챕터 1221 - 챕터 1230

1235 챕터

第1221話

ひんやりとした外気を纏った澪士の長い指が、無防備になった腰の隙間から滑り込んでくる。冷たい指先が滑らかな肌に密着し、下腹部を這うようにゆっくりと撫で上げられた瞬間、ミキの背筋を強烈な悪寒と戦慄が突き抜けた。だめ……っ!恐怖と焦燥に駆られ、ミキの身体は本能的に防御態勢をとった。男を突き飛ばそうと、思い切り膝を蹴り上げる。狙うのは腹部だ。しかし、澪士はあまりにも大きすぎた。モデルとして長身を誇るミキでさえ、192センチという圧倒的な体格を持つ彼を前にしては、ひどく華奢で小柄に感じてしまう。その絶望的な身長差のせいで、ミキの渾身の一撃は彼の腹部ではなく――あろうことか、男の急所へと見事にクリーンヒットしてしまった。「……ッ!」鎖骨に噛み付いていた澪士が、くぐもった短い呻き声を漏らす。ガクン、と大きな身体が沈み込み、荒々しい息遣いがミキの耳元に降りかかった。それでもなお、彼を支える太い腕はドア枠を掴んで離さず、ミキを自らの腕の中にきつく閉じ込めたままだ。襲いかかる鋭い痛みが引くのを待ってから、澪士はゆっくりと顔を上げた。端整な顔立ちにはまだ僅かに苦痛の色が残っていたが、その眼差しには――どこか背徳的で歪んだ悦びすらギラギラと蠢いていた。彼は荒い息を吐きながら、低く掠れた声で笑う。「……っ、随分と威勢がいいな。俺を不能にする気か?」こんな状況で、まだ笑うなんて!怒りで頭が沸騰しそうになったミキは、はだけた胸元を片手で必死に掻き合わせながら、もう片方の手で彼の分厚い胸板を力いっぱい押し返した。「何がおかしいのよ!?あなた、一体どうしちゃったのよ!」だが、澪士の身体は岩のようにびくともしない。ミキの力では押し退けることなど到底不可能だった。「……さっき、白彦が来ていただろう。あいつと、部屋で何をしていた?」嫉妬で理性を焼き尽くされていた男は、強烈な痛みによって、ようやくほんの少しだけ正気を取り戻したらしい。だが、その声に滲むねっとりとした執着と独占欲は、少しも薄れてなどいなかった。「まるまる二時間だぞ……!」密室での二時間。男と女が過ごすには、あまりにも長すぎる時間だ。しかも、目の前にいるミキはシャワーを浴びたばかりで、濡れた髪から水滴を落とし、火照った肌から甘い匂いを漂わせて
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第1222話

「……ああ。噛んでいいぞ」脅したはずなのに、澪士の眉間の皺はすっと解け、どこか甘く機嫌の良さそうな声が降ってきた。耳たぶを掠めるように、低い声が鼓膜を震わせる。「どこでも好きなところを、思う存分噛みちぎってくれ」「……っ!?」絶句するミキの唇を奪う代わりに、澪士はまるで甘えるような仕草で首筋に顔を埋めた。ちゅっ、ちゅっ……と、頬から首筋にかけて、執拗に啄むようなキスを落としていく。「お前、すごくいい匂いがする……」微かに鼻にかかった声は、理性を失った獣のように貪欲だ。「どうしてこんなに、甘くていい匂いがするんだ……?」淡いボディソープの香りと、ミキ自身の体温が混じり合った柔らかい匂い。それが今の澪士にとって、嫉妬で狂いそうだった神経を鎮める唯一の特効薬だった。あまりの甘やかな空気にミキから抵抗する力が抜け、されるがままになっていると、澪士は容赦なく彼女の白い肩口に牙を立てた。先ほどよりも深く、くっきりと「自分の所有物」であるという赤い刻印を刻みつける。その熱い痛みと引き換えに、澪士の胸の奥で燻っていた最後の嫉妬の炎が、ようやく完全に鎮火した。ふっと拘束が解かれ、高く持ち上げられていた脚が自由になる。解放されたミキがとった最初の行動は――目の前の大男を思い切り廊下へと突き飛ばすことだった。そして第二の行動。バタンッ!!容赦なく、そして見事なまでにドアを顔面スレスレで閉め出し、きっちりと鍵をかけた。激しい拒絶の音。しかし今度ばかりは、澪士の顔に怒りはなかった。むしろ、ひどく満ち足りたように口角を上げ、ミキの甘い熱を奪った自分の唇を、名残惜しそうに指先でなぞる。 ああ……本当に、いい匂いだった。脳髄を蕩かすような、あの甘い香り。――昔のままの、ひどく懐かしい匂いだった。......薄暗い高級ラウンジのVIPルーム。テーブルには空になった高価なボトルの数々が転がっているが、主役であるはずの白彦の顔はどん底のように暗かった。誰の目から見ても、今日のバースデーボーイが最悪の精神状態であることは明らかだ。同席していた武志は、白彦が荒れているのは璃々子が来ていないからだと勘違いし、ひどく場違いな提案をした。「なぁ、そんなに元気ないなら、今から璃々子ちゃんでも呼ぼう
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第1223話

健は鬱陶しそうにその手を振り払うと、氷のように冷ややかな声を落とした。「あいつはお前に会いたくないそうだ」「今日は彼の誕生日なのよ。私、どうしても一緒にお祝いしたくて……お願い、少しだけでいいから入れて!私の顔を見れば、絶対に追い出したりしないから!」璃々子は必死に食い下がった。あの病院での騒動以来、璃々子は白彦と一度も会えていなかった。あらゆる手段を使って接触を試みたが、ことごとく冷酷に拒絶されている。それどころか、電話番号もメッセージアプリも完全にブロックされ、連絡を取る手段すら絶たれていた。見知らぬ番号からかけても、彼女の声だとわかった瞬間、まるで汚物でも避けるかのように無言で通話を切られてしまうのだ。焦った璃々子は、いつも自分の味方をしてくれていた彼の秘書である美奈子にも泣きついた。しかし、今回ばかりは美奈子でさえまともに取り合ってくれず、業を煮やして自宅まで押しかけた結果、ようやく聞き出せたのは絶望的な事実だった。――白彦がすでに、璃々子を海外へ追放する手配を済ませているということ。しかも出発は来週。早急に荷物をまとめろという、冷酷な通告だった。璃々子にとって、それは死刑宣告にも等しい。このまま黙って海外に追い払われるなんて、絶対に嫌だった。だからこそ、今日という日に懸けていたのだ。なんとしてでも白彦に会って、この目で彼を見つめながら涙を流せばいい。そうすれば、あの男は絶対に絆されて自分を許してくれるはずだと信じ切っていたからだ。だが、健の表情は微塵も動かない。哀れむどころか、ますます冷酷な視線で見下ろしてきた。「言ったはずだ。あいつはお前に会いたくない。これ以上、付き纏うのはやめろ」「嫌よ!」引き下がれない璃々子は、健の体を突き飛ばして無理やりドアをこじ開けようとした。「いい加減にしろ!」健が容赦のない力で彼女の手首をねじり上げると、その声はドス黒い威圧感を帯びた。「お前も自分の価値がどこにあるのかくらい、わかってるはずだ。これ以上醜態を晒して、あいつの中にあるお前のその最後の価値すら使い果たす気か?」息を呑む璃々子に構わず、健は淡々と事実を突きつける。「もう海外へ行く手配は済んでるんだろう?大人しく手切れ金をもらって消えるんだな。身の丈に合わないもの
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第1224話

まるで、妻を心から愛し、気遣う「完璧な夫」のような、甘く優しい声だった。その見覚えのあるロゴと甘い香りに、ミキの胸の奥で苦い記憶が蘇る。――あれは以前、ミキから彼に届けたものとまったく同じだった。当時、ミキは過酷な撮影スケジュールの真っただ中にいて、連日深夜に及ぶ撮影でボロボロになっていた。そんな時、サワおばあちゃんから「白彦がインフルエンザに罹って、酷く咳き込んでいる」と電話があったのだ。心配で気が気でなくなったミキは、すぐに監督に休みを申し出た。だが「スケジュールが押しているから」と却下され、最終的にミキは無理やり現場を飛び出し、白彦を看病するためだけに急いで北里市へと戻ったのだ。喉の痛みに効くというこの人気店の特製コンポートを買うために、大行列に一時間以上も並んだ。そして、冷めないようにと大切に抱えながら、彼のオフィスまで急いで届けに行ったのだ。その時、白彦がミキにどんな言葉を投げかけたか。ミキは今でもはっきりと覚えている。「さっき甘いものを口にしたばかりだから、もういらない。自分で処分してくれ」彼はそう冷たく言い放ち、温かいスイーツのカップを持ったまま立ち尽くすミキを一人オフィスに置き去りにして、会議へと向かったのだ。書類を取りに社長室に入ってきた美奈子は、まだ立ち尽くしているミキを見ると、あからさまに迷惑そうな顔をして追い出しにかかった。「社長室は関係者以外立ち入り禁止です。退出してください」さらに彼女は、勝ち誇ったようにこう言い放った。「社長には先ほど、璃々子様から差し入れのスイーツが届いたばかりなんです。社長は璃々子様の差し入れしか召し上がりませんから、無駄な気遣いはやめていただけます?」信じないならこれを見ろと言わんばかりに、美奈子は本棚の片隅を指差した。「ご覧なさい。あそこにあるのは全部、璃々子様のお好きな雑誌や外国製のお菓子です。社長の心の中には、璃々子様しかいないんですよ」ミキがどうやってその部屋を出たのか、今となってはよく覚えていない。ただ、一階に下りた時、受付のスタッフが恭しく頭を下げ、璃々子を案内している姿だけは鮮明に脳裏に焼き付いている。彼女が案内されたのは、白彦の専用エレベーターだった。美奈子の言う通りだ。この会社で、璃々子は顔パスでどこへ
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第1225話

午前中から肉体を酷使していたスタッフたちは、思いがけない極上のスイーツの差し入れに大いに沸き立った。アシスタントの萌も、自分の分とミキの分のカップを二つ抱えて、嬉しそうに駆け寄ってきた。「ミキさん!二階堂社長からの差し入れです。温かいうちにどうぞ!」澪士から?この映画のメインスポンサーの一人なのだから、陣中見舞いとして差し入れが届くこと自体は不思議ではない。ミキは少しだけ躊躇したが、目の前で顔を強張らせている白彦への当てつけのように、わざとらしくそのカップを受け取った。そして彼を見据えたまま、一口ゆっくりと味わう。その瞬間、白彦の瞳が嫉妬でドス黒く沈んだ。「……どの二階堂だ?」地を這うような低い声の尋問に、ミキは隠すことなくあっさりと答えた。「あなたが想像している通りの、二階堂社長よ」「……俺の買ってきたものは捨てて、あの男が買ったものは飲むのか?」白彦はギリッと奥歯を噛み締め、顎の筋肉をひきつらせながら吐き捨てた。その未練がましい嫉妬の言葉は、ミキにとって心底滑稽でしかなかった。「私が何を飲もうと自由でしょ?」ミキは冷ややかに彼を挑発する。「あなたが以前、私のものを見捨てて、璃々子のスイーツを選んだのと同じようにね」「っ……!」その言葉に、白彦は息を呑んだ。あの日のことなど、とうの昔に過ぎ去ったことだと思っていた。それなのに、彼女が今でもあんな些細なことを鮮明に覚えていて、心の奥底でずっと恨んでいたなんて思いもしなかったのだ。「あ、あれは……お前がわざわざ買いに行っているなんて知らなかったんだ。それに、彼女の差し入れの方が先に届いていたから……」慌てて弁解を口にしたものの、それがかえって言い訳がましく響いたことに気づき、白彦はさらに声を張った。「俺と璃々子の間には、本当に何もないんだ!」「……それが、今の私にとって重要だと思う?」ミキはひどく凪いだ声で問い返した。今更だ。二人の間に肉体関係があろうとなかろうと、もう何の意味もない。たとえ本当に何もなかったのだとしても、彼がこれまでミキの心をズタズタに引き裂き、見殺しにしてきたという事実は絶対に消えないのだから。ミキは鬱陶しそうにため息をつき、冷ややかな視線で元夫を見下ろした。「完全に離婚したのに、
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第1226話

「このプールの真上をワイヤーで飛んでもらう。空中でバランスを崩さないように、視線は真っ直ぐ前。手にした長槍の角度はこうだ」アクション監督が、ミキの目の前で実際にポーズをとってみせる。「このプールは結構幅があるからな。かなり体力を削られるぞ。少しでもキツいと思ったら、迷わず声を上げろ」「わかりました。やってみます」ミキが静かに頷くと、横にいたアシスタントの萌が、足元で揺れる水面を覗き込んで青ざめた。「ミ、ミキさん……ここ、結構深いですよ。もし落ちたらどうするんですか?」「大丈夫よ。ハーネスの安全帯があるじゃない」心配性の彼女に、ミキは苦笑してみせた。「それはそうですけど……ミキさん、泳げないじゃないですか」萌が鼻の頭を掻きながらボソッと言い放ち、ミキは思わず言葉を詰まらせた。万が一にも事故が起きないよう、モエはミキの腰に巻かれたハーネスの金具を、これでもかというほど入念にチェックした。ワイヤーの操作に入る前にも、専門のスタッフが二重三重に安全確認を済ませている。ウィンチが巻き上げられ、ミキの身体がふわりと宙に浮く。アクション監督の指示通り、ワイヤーの張力に逆らわず、体幹に力を込めて空中で回転する。見事に水面を滑るように飛躍した。「いいぞ!その角度だ!もっと殺気を出せ、眼光を鋭く!」トランシーバー越しに飛んでくる監督のゲキに応えるべく、ミキは極限まで集中力を高め、姿勢を微調整していく。――だが、その直後だった。パツンッ。腰の辺りで、何かが弾け飛ぶような嫌な音がした。次の瞬間、身体を支えていた浮力がふっと消える。え……?悲鳴を上げる間すらなかった。糸の切れた操り人形のように、ミキの身体は冷たい水面へと真っ逆さまに落下していった。ザパーーーンッ!!激しい水しぶきと共に、容赦なく水が鼻腔と喉の奥に流れ込んでくる。息がっ、できない……!カナヅチのミキはパニックに陥り、本能のままにもがいた。だが、いくら手足をバタつかせても、重い衣装が水を吸い、容赦なく彼女を暗いプールの底へと引きずり込んでいく。「ミキさんっ!!」「誰か!早く引き上げろ!!」岸から聞こえる絶叫も、機材が倒れる鈍い音も、水という分厚い膜に阻まれてひどく遠く感じられた。意識が、水底へと沈んでい
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第1227話

このまま着替えても、気持ち悪いし身体が冷えるだけだ。数秒だけ躊躇い――ミキは思い切って、下着も全て脱ぎ捨てた。どうせ着替えは、オーバーサイズのゆったりとしたスウェットパーカーだ。胸だってそんなに大きいほうじゃない。ノーブラでも、外からは絶対に見えないはずだ。着替えを終えてから、ミキはようやく口を開いた。「……着替えたわ」その声に、背を向けていた澪士がゆっくりと振り返る。「まだ冷えるか」「少しだけ」強がる余裕もなく、彼女は正直に答えた。濡れた髪からは、まだぽたぽたと水滴が落ちている。澪士は清潔なタオルを手に取ると、彼女の頭からすっぽりと被せ、乱暴だがどこか慈しむような手つきで水気を拭き取り始めた。「あなただって、ずぶ濡れじゃない……」ミキは彼を見上げて言った。澪士の服も、水を吸って重く肌に張り付いている。だが、ここには彼の着替えなど用意されていない。「お前の髪を乾かすのが先だ。俺の着替えは家に戻ってからでいい」「ダメ!」ミキは思わず彼の手首をギュッと掴んだ。「あなたまで風邪を引くじゃない」その瞬間――澪士の眉間に刻まれていた、あの底知れぬ殺気と苛立ちが、ふっと解けた。低く響く声には、隠しきれない甘い悦びが滲んでいる。「俺の心配をしてくれるのか?」普段のミキなら、絶対に素直には認めないだろう。しかし、彼がこんなに濡れているのは、自分を水底から救い出してくれたからだ。ここで意地を張るのは、いくらなんでも恩知らずすぎる。だから彼女は、小さくコクリと頷いた。「……そうよ。だから、早く帰って着替えて」少し間を置いてから、照れ隠しのように慌てて付け足す。「もしあなたが風邪でも引いたら、私が看病しなきゃいけなくなるでしょ」命の恩人を放っておくわけにはいかないからだ。だが澪士は内心で不敵に笑った。看病してくれるというなら、いっそこのまま高熱を出してやってもいい。結局、ミキに押し切られる形で、澪士は彼女の髪を半乾きにしたところで家へ戻ることに同意した。ただし、ミキも同行するという条件付きだ。「お前が一緒に来ないなら、俺はこの濡れた服のままでいる」などと理不尽な脅しをかけられたため、ミキもついて行く羽目になったのだ。澪士の自宅を訪れるのは、これが初めてだ
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第1228話

ぼんやりと考えていたミキの視線が、ふとそこへ引き寄せられた。ハッと我に返った時には遅かった。自分が彼のはだけた胸元をガン見していたことに気づき、火がついたようにバッと目を逸らす。だが、耳の裏まで一気に熱くなるのは止められなかった。澪士は彼女の目の前で足を止め、その可愛らしい動揺を余すところなく見下ろした。すぐには声を発さず、真っ赤に染まった小さな耳をじっと見つめながら、口内でゆっくりと舌を転がす。その瞳には、からかうような、そして底知れぬ熱を帯びた愉悦の光が揺れていた。ミキは顔を背けたままでも、彼がこちらを見ているのが痛いほどわかった。しかも、遠慮というものが全くない、舐め回すような視線だ!悔しいことに、彼のセクシーな大胸筋にうっかり見惚れてしまった自分も悪いのだ。イケメンの肉体美、恐るべし……!心の中で何度も呪文のように唱えながらも、ミキは密かに認めざるを得なかった。澪士のスタイルは、本当に圧倒的だ。これまで芸能界で数え切れないほどの人気俳優を見てきたが、彼の色気と均整の取れた体躯は、誰一人として足元にも及ばない。限界寸前の彼女を察したのか、澪士がふと空気を緩めるように口を開いた。「部下に着替えを手配させた。もうすぐ届くから、座って待ってろ」「……わかったわ」まともに顔を見られないミキは、モゴモゴと曖昧に返すのが精一杯だった。「水、飲むか?」「……うん」澪士は白湯を注いだグラスを手渡すと、ごく自然な動作でミキのすぐ隣に腰を下ろした。距離が、近すぎる……!彼の身体から伝わってくる熱気に、思わず息を呑む。冷たく澄んだシダーウッドに、微かなミントが混ざったような洗練された香り。シャワーを浴びたばかりで毛孔が開いているからか、その匂いは彼の首筋から生々しく立ち上っていた。決して強烈ではないのに、大人の雄のフェロモンが極めて高い侵略性を持って、ミキの鼻腔を支配していく。グラスを握るミキの指先が、無意識にキュッと白くなった。その危険で甘いシダーウッドとミントの香りが、音もなく彼女の全身を包み込み、絡め取っていく。彼女は動悸を誤魔化すように、グラスの白湯を一気に飲み干した。それでようやく、胸の奥で暴れる不整脈を少しだけ落ち着かせることができた。グラスをテーブルに置
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第1229話

どうせ、ごまんといる遊び相手の誰かに買ってあげたんでしょ。まあ、今回はありがたくお下がりをもらっておくけど。もう一つの小さな袋には、ランジェリーが入っていた。タグを確認したミキは、ギョッと目を剥いた。なんと、彼女のサイズと完全に一致していたのだ!なんで知ってるの!?……あぁ、なるほど。普段から若い女の子にこういう物を買い与え慣れてるから、目測だけで正確にサイズを割り出せるってわけね。さすがは稀代の女たらし!さらに驚いたことに、服のサイズまで彼女の身体にピッタリだった。ということは、この服の本来の持ち主はルナではない。ルナはミキより背が低いし、何より胸のボリュームが違う。ルナ以外にも、別の相手がいるってことか。ほんと、どんだけ手広く遊んでるのよ!すっかり勘違いを拗らせたまま着替えを終え、一階へ降りると、澪士も服を着替えていた。どうやら、これから外に出かけるつもりのようだ。それを見て、ミキは密かに首を傾げた。これから外出する予定だったなら、なぜさっきはわざわざあんなシルクのルームウェアに着替えたのだろうか?無駄に色気なんか振りまいて……ほんと、あざとい男なんだから。「服の手配、ありがとう。代金は後で振り込むから」ミキはそっけない声でそう言い捨て、さっさと帰ろうとした。その声は冷たく、表情もあからさまにツンケンしている。澪士は不満げに眉をひそめた。まだあの洋梨のコンポートのことで腹を立てているのか?さっき腰の手当てをしてやった時も、あれほど理性を総動員して紳士的に振る舞ったというのに、まだ機嫌が直らないらしい。ミキ自身も、自分がひどく刺々しい態度を取っていることには気づいていた。私、いったい何をイライラしてるの?冷静になって自己嫌悪に陥る。澪士と自分は、ただのスポンサーと女優の関係だ。彼が誰と付き合おうが、誰に新作の服を買い与えようが、誰に高級スイーツを差し入れしようが、彼の自由じゃないか。頭ではわかっているのに、どうしても胸の奥がモヤモヤして、面白くない。「待て。少し付き合え」踵を返そうとしたミキの腕を、澪士が引き留めた。彼女が不満げに振り返るのを待ってから、彼は静かに告げた。「落下事故の調査結果が出た」そのまま半ば強引に、待機していた黒の
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第1230話

澪士は彼女を完全に逃げ場のないシートの隅まで追い詰めると、片手でその柔らかい頬をむにっと挟み込み、強引に自分と視線を合わせさせた。「……なぜ怒っている」「怒ってなんか――気のせいじゃないの!だいたい、私が怒る理由なんてないでしょ!?あなたって、ほんとにおかしい……」条件反射のように、ミキは矢継ぎ早に言葉を並べ立てた。だが、顔を上げると、澪士がじっと彼女を見つめ下ろしていた。その涼しげな瞳の奥で、仄暗い情念のような光が揺らめいているのを見て、ミキは理由もなく心臓を跳ねさせた。急に口調がしどろもどろになる。「な、なによ、その目は……怒ってなんかないわよ。そもそも、私があなたに腹を立てる資格なんて……」言い訳を重ねれば重ねるほど、自分の心が透けて見えそうで焦った。焦れば焦るほど、声は尻すぼみになっていく。澪士の視線は、慌てて開閉する彼女の愛らしい唇に釘付けになっていた。喉仏が、ゴクリと上下に動く。至近距離まで詰め寄ったせいで、理性が吹き飛びそうだった。香水などつけていないはずなのに、ひどく甘くていい匂いがする。まるで上質なケーキのように。……こいつはさっきから、何をギャーギャー喚いているんだ?――キスしたい。その衝動が脳裏を掠めた次の瞬間、彼はミキの顎をぐっと引き寄せ、有無を言わさずその唇を塞いでいた。「んっ……!」ミキは抗議の声を漏らし、身を捩って逃げようとした。だが澪士は容赦なく追撃し、車内に燻っていた危険な火種が一気に燃え上がる。唇と唇が重なり、理性を欠いた荒々しい口づけが交わされる。熱を帯びた彼の吐息が、何度もミキの頬を撫でた。ミキは必死に彼を押し返そうと、その分厚い胸板に指先を立てる。だが、圧倒的なオスとしての力の前では、そんな抵抗はひどく滑稽で無意味なものだった。キスの角度が変わり、さらに深く貪られる。澪士の大きな掌が背中のラインをなぞるように滑り落ち、ミキの身体をまるごと抱き込んだ。まるで彼女を自分の骨肉に溶け込ませてしまおうとするかのような、狂気じみた力強さで。いつしか彼の呼吸は、飢えた獣のように荒く重くなっていた。本能的な危険信号にミキはパニックになり、何か叫ぼうと口を開いた拍子に、うっかり彼の唇をガリッと噛んでしまった。「……
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