Lahat ng Kabanata ng 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した: Kabanata 371 - Kabanata 380

717 Kabanata

第371話

【誠、見たか?俺はやり遂げたぞ!】【電話にも出られないほどビビってるのか?】【長年のよしみだ、ラストチャンスをやるよ。『アーク』に戻ってこい。俺の下で働くなら歓迎してやる。お前の能力だけは評価してるんだからさ】しつこく通知が続き、陽介がさらに何か言いたてようとしているのは明白だった。誠は溜息をつく間もなく彼をブロックし、通知を切って心安らかにディナーの続きを楽しんだ。一方、メッセージが送信エラーになったのを見て、陽介の顔色が一瞬にして曇った。「身の程知らずが。一生負け犬でいろ!」吐き捨てるように毒づいていると、志帆から声がかかった。いよいよイベントが始まるようだ。陽介は即座に表情をへつらい笑いに変え、揉み手でもしそうな勢いで駆け寄る。その背中は自然と卑屈に丸まっていた。「柏木さん、開催宣言はやはり柏木さんにお願いしたいのですが」志帆は優雅に微笑む。「何を言ってるの。創設者はあなたでしょう?あなたがやるべきよ」「とんでもない!『ドリーム・クラウド』が今日という日を迎えられたのは、全て柏木さんのご尽力のおかげです。あなたがテープカットをしてこそ意味があるんです」「……そう?なら、お言葉に甘えるわ」志帆は満更でもなさそうに頷いた。司会者が開会を告げる直前、志帆のスマートフォンが鳴った。太一からのビデオ通話だ。応答すると、画面の向こうには見知った顔ぶれが揃っており、彼女の気分はさらに高揚した。「志帆ちゃん!俺ら今、江ノ本で集まってるんだ。みんなでリモート前夜祭ってことで、ここからお祝いさせてよ!行けなかった埋め合わせってことでさ」「ふふ、ありがとう。みんなによろしく伝えて」「水臭いこと言うなよー。これ全部、柊也の発案なんだぜ?」太一はカメラを回し、柊也を画面の中心に捉えた。「だろ?柊也」柊也は画面越しにグラスを軽く掲げ、無言のまま祝杯の仕草を見せた。志帆はとろけるように目を細める。「受け取ったわ」すると太一が、ここぞとばかりに囃し立てた。「ひゅー!やっぱり俺らがいると照れちゃって、甘い言葉は言えない感じ?はいはい、愛の囁きは二人の時まで取っといてくれよな、俺らがお邪魔虫になるし!」志帆は口元を緩めたまま、幸せそうに返す。「もう、調子いいんだから。そろそろ本番が始まるから切るわね」「頑張れよー!」
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第372話

よく言えば内縁の妻。悪く言えば、ただのキープだ。所詮は婚約止まり。法律は何ひとつ彼女を守ってくれない。「最後の一瞬まで、何が起こるか分からない」ということを、佳乃は骨身に沁みて理解していた。だからこそ、志帆に何度も「気合を入れなさい」と発破をかけるのだ。「それと、気になる噂を耳にしたの。海雲さんが弁護士を呼んで、遺言書の作成に入ったって……柊也くんは何か言ってなかった?」佳乃の声が低くなる。「いいえ、何も」「知らないのかしら、それとも……」「知らないだけよ。柊也くんは私に隠し事なんてしないもの」その点に関しては、志帆は絶対の自信を持っていた。しかし、佳乃は慎重だった。「とにかく、西川から戻ったら何かしら理由をつけて、海雲さんの元へ挨拶に行きなさい。そしてそれとなく探りを入れるのよ」「ええ、分かったわ」志帆はまだ仕事が残っていたし、言いたいことはすべて伝えたので、佳乃はそれ以上会話を引き伸ばすことなく電話を切った。一方、LINEグループでは太一が中心となって志帆のお祝い祭りを繰り広げていた。おびただしい数のスタンプが画面を飛び交っている。太一はさらに、イベントの生配信リンクを父・厳に転送し、『俺が投資したプロジェクト、マジでロケットスタート決めたから。親父は安心して療養しててくれよ、俺が衆厳メディカルを立て直すからさ』と意気揚々とメッセージを送っていた。現地の花火が燃え尽きると、陽介が志帆をエスコートしてステージに上がり、スピーチが始まった。配信の同時接続数はうなぎ登りに増え続けている。今回のイベントがいかに大成功を収めたかの証明だ。オフィスに残っていた密は、配信画面を録画しながら悪態をついた。「このコメント欄、どう見てもサクラが沸いてるでしょ?批判的な意見がひとつもないなんて、ありえないって」「同接十万人のうち、八万人はbotじゃないの?」「あーもう無理、やってられない!こんな仕事、誰か代わりにやってよ」彼女は憤然と立ち上がり、荒ぶる心を鎮めるために給湯室へ氷水を飲みに行くことにした。画面の中では、志帆が高らかに宣言している。『ドリーム・クラウド』は今後五年間で、国内最大のアクティブユーザー数を誇るスマホゲームになるでしょう、と。観客の拍手が沸き起こるのを待った、そのコンマ一
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第373話

密は声を潜め、探るような目で詩織を見た。「ねえ詩織さん、もしかしてこれ、あなたの仕業……」「やめてちょうだい。私がそんな暇人に見える?」詩織はぴしゃりと否定した。確かに志帆とは競合関係にあるが、詩織は最初から最後まで正々堂々と戦うことを信条としている。陰でこそこそ足を引っ張るような真似は一度たりともしたことがない。密もすぐに納得した。「ですよね。詩織さんがそんなセコい手を使うわけないか」こちらが何も手を出していないのに、相手が勝手に自爆したのだ。そう考えると、痛快さは倍増する。まさに「自業自得」という言葉がこれほど似合う状況もないだろう。詩織は興奮冷めやらぬ密を仕事に戻らせると、百合子との通話を再開し、M&A案件の細部を詰めた。通話を終える頃には、定時を少し過ぎていた。スマホを確認すると、通知画面が埋め尽くされている。その大半が、親友のミキからのものだった。『ねーねー詩織ちゃん!午後の配信見た!?柏木の性悪女、生ゴミぶつけられたんだけど!うけるwwwww』文字だけでは飽き足らなかったらしい。彼女からはさらに六十秒ちょうどのボイスメッセージまで送られてきていた。何か重要な補足情報でもあるのかと思い再生してみたが、聞こえてきたのはミキの悪魔のような高笑いだけだった。延々と六十秒間、腹を抱えて笑い転げる声が続く。なぜ自分はこの貴重な一分間を無駄にしてしまったのか。詩織は遠い目をしてスマホを見つめた。【これが令和の企業戦争ってやつ?商売繁盛の招き猫を叩き割った仕返しに、生ゴミを投げ返すとか?】【私は何もしてないわよ。彼女がいきなり自分の首を絞めるような真似をしただけ】詩織はきっぱりと身の潔白を主張する。ミキからは「分かってるって」と言いたげな、したり顔のスタンプが送られてきた。【ま、これが柏木への天罰ってやつでしょ!】それには詩織も同感だった。車に乗り込むと同時に、松本さんから電話がかかってきた。仕事帰りに煎じ薬を取りに寄ってほしいと言う。賀来家の屋敷に到着すると、夕食の支度が整っており、詩織が来るのを待っていたようだった。食後、上機嫌な海雲から、一局手合わせをしようと誘われた。碁石を打ちながら、彼は『華栄キャピタル』の近況について尋ねてきた。詩織が中博テックとの合併交渉を進めていること
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第374話

配信の同時接続数は膨大だったが、運営側の対応も早かった。即座に画面を切断したため、決定的な瞬間の拡散は最小限に抑えられている。柊也の権力と財力をもってすれば、この程度の火消しは造作もないことだ。ましてや、彼にとって志帆は何より大切な存在。湯水のように資金を投じて彼女の行く道を舗装しているのだ。トラブルが起きれば、たとえ地の果てであろうと駆けつけて、彼女の足元に散らばった茨を素手で取り払う。その献身ぶりには、皮肉抜きで感服するしかない。だからこそ、ミキは腹の虫が治まらないのだ。「さすが賀来のクソ野郎だわ!あいつ、名前変えた方がいいんじゃない?『尻拭い専門業者』とでもさ!ほんっと、あんたが昔あいつに尽くした時間がもったいない!」詩織は深く頷いた。「本当ね。誰かに優しくするのは、巡り巡って自分にも優しさが返ってくることを期待してるからだけど……今思えば、直接自分自身に優しくしてあげたほうが効率的だわ。その方が見返りも確実だしね」ミキは親友の言葉を聞き、彼女が本当に過去の呪縛から解き放たれていることを感じ取った。心底ほっとした表情を浮かべる。だが、どうしても聞いておきたいことがあった。「……後悔してない?」なにせ、彼女の人生の七年間もの時間を捧げた恋なのだ。詩織は少し考え、静かに答えた。「この世に『後悔』なんてものは存在しないわ。あるのは『置き場所を間違えた希望』だけよ」その潔い答えに、ミキは破顔した。「あんたのそういうとこ、ほんと好き!とにかく、今日は祝杯あげなきゃね!あとで空港まで迎えに来てくんない?無理なら勝手にあんたの家行って、晩ごはんでも作って待ってるけど!」「あなたが帰ってくるなら、いつだって迎えに行くわよ」「愛してる!一生ズッ友!」詩織は、柊也の手腕をもってすれば、この騒動もなんとか揉み消せるだろうと高を括っていた。だが、事態の悪化するスピードは、彼の対処能力を遥かに上回っていた。翌朝にはもう、花火の一件がトレンドのトップを独占していた。『ドリーム・クラウド』に対する大規模なボイコットと低評価の嵐が巻き起こり、無数のネットユーザーが公式サイトに殺到する。「無責任すぎる」「環境破壊だ」といった罵詈雑言が書き込まれ、その負荷に耐えきれずサーバーは瞬く間にダウンした。それだけではない。リリー
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第375話

詩織が人垣の隙間から目を凝らすと、そこにはメディアと興奮した群衆に揉みくちゃにされている柊也と志帆の姿があった。飛行機から降りて、急いで外へ出ようとしているところらしい。マスコミはどうやらフライト情報を嗅ぎつけ、早々と張り込んでいたようだが、情報が漏れているなら、メディアだけでなく環境保護団体が駆けつけるのも当然だった。先ほど罵声を浴びせていたのは彼らだ。彼らは周到に準備しており、抗議の声を上げながら、騒動の元凶に向けて腐った卵を投げつけ始めた。柊也は終始、志帆をカメラから隠すように守っていた。そして、腐った卵が飛んできた瞬間――彼は自らの体を盾にして、真っ先に志帆を庇ったのだ。その一部始終を、詩織は遠くから冷ややかな目で見つめていた。だが、ふと彼女の表情が緩む。既視感のあるその光景に、意識が一瞬だけ過去へと引き戻された。かつては、自分がこうして我が身を顧みず、彼のために飛んでくる悪意を受け止めていたのだから。その時、ミキから着信があった。詩織は視線を戻して電話に出る。先ほどの一瞬の感傷はきれいに消え失せ、あとに残ったのは凪いだ水面のような、何の波風も立たない静けさだけだった。「ミキ?もう出てこれそう」電話の向こうから、ミキの泣きじゃくるような声が聞こえてきた。「うぅ……詩織ぃ、足挫いちゃったぁ」ミキと合流した詩織は、足を引きずる彼女を連れてすぐに病院へ向かった。診察中、担当の医師は渋い顔をして、ミキの無事な方の足――そこに履かれたピンヒールを何度も横目で見ていた。ついに我慢できなくなったのか、呆れたようにお説教が始まる。「おしゃれしたいのは分かるけどね、ちょっとヒールが高すぎやしませんか?あなた元々背が高いんだから、そんな無理して履かなくてもいいでしょうに。これじゃ捻挫してくれって言ってるようなものだよ」ミキはばつが悪そうに鼻の頭をこすった。「いやあ……実は今度、女スパイの役をやりまして。ハイヒールでアクションしなきゃいけないんで、今のうちに慣れておこうかと」これには医師も、返す言葉を失っていた。診察を終え、詩織はミキに肩を貸しながら病院の階段を降りた。病院の屋外駐車場の片隅で、太一が一本また一本とタバコを吹かしている。ほんの三十分ほど前のことだ。父の厳は激しい感情の昂りから血
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第376話

「そんなのダメだ!」太一は叫んだ。父にとって衆厳メディカルがどれほど大切な存在か、誰よりも理解しているのは自分だ。もし本当に破産なんてことになれば、父の命の灯火も……一緒に消えてしまうかもしれない。「俺がなんとかする!絶対になんとかしてみせるから!もう一回だけ、チャンスをくれよ!」厳は虚ろな瞳を息子に向けた。「今さら何ができると言うんだ?お前になんとかできるなら、そもそもこんな事態にはなっていなかったはずだろ」父の言葉に、太一は喉を詰まらせた。何も言い返せない。「江崎さんにスマート医療の件を持ちかけろと言っただろう。あの時、私にはわかっていたんだ。あれが衆厳に残された最後の希望だと。……だが、お前はその好機を自ら手放し、衆厳を終わらせた」「……すまない」「あれだけ江崎さんとは良好な関係を築けと言い聞かせたのに、お前は聞く耳を持たなかったな。彼女は有能だ。あの海雲さんですら一目置いているほどだぞ。彼女と組めば、お前にとってもメリットしかなかったというのに」太一は自分の胸に顔が埋まるほど深くうなだれた。一生、顔を上げて歩けないかもしれない。あの時、確かに何度か詩織のところへ足を運んだ。だが、彼女は取り付く島もなかった。当時の自分はそれを「私怨で仕事を断られた」と腹を立てたものだ。そもそも、詩織の能力なんて鼻から信じていなかった。大した学歴もない、見るべきキャリアもない。ここ七年ほど秘書として雑用をこなしていただけの女じゃないか、と。だから詩織を見切り、太一は志帆を選んだのだ。志帆なら、海外大学院卒の博士号持ちで、国際的なトップバンクでの職歴もあり、巨大な港湾買収案件を主導した実績もある。経歴書は文句なしに華やかだ。そんな彼女と組めば、衆厳の危機を救うどころか、自分自身の実力を証明して、父や一族を見返すことができると信じていた。だというのに、現実はどうだ。「G市にお前名義で五千万ドルの信託を残してある。私が死んだ後は、無駄遣いせず大事に使え」父の、あまりに疲弊しきった老人のような声が、錆びたナイフのように太一の心臓をえぐる。生まれて二十数年、彼は初めて、心臓を直接抉り取られるような痛みに悶えた。……午後には重要な会議が控えていたため、詩織は仕方なくミキを連れて出社することにした。
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第377話

華栄キャピタルのエントランス前で、太一は長いこと行きつ戻りつしていたが、ついに覚悟を決めてその足を踏み入れた。受付スタッフは太一の顔なじみだ。以前は頻繁に出入りしていたから当然だろう。スタッフが「社長は不在でして」と言いかけたその時、横から小馬鹿にするような声が飛んできた。「おや、これはこれは。宇田川家の太一さんじゃないの」暇を持て余したミキが、社内を偵察しようと出てきたところだった。じっとしていられない性格の彼女は、捻挫した足を引きずりながら、ひょこひょことロビーまで出てきて、運悪く太一と鉢合わせしたのだ。ミキは太一の顔を見間違えるはずがない。正確に言えば、こいつが灰になっても見分けられる自信がある。なぜなら以前、彼が散々、最愛の親友をいびり倒していたからだ。ミキという人間は、何事も中途半端だが、「根に持つ」ことにかけては天下一品である。本人曰く、「私の脳みそが勉強を覚えられないのはね、容量のすべてが恨みつらみで埋まってるからなのよ!」とのことだ。「ちょっと確認させて。今日は太陽が西から昇ったのかしら」彼女は本当に窓際まで行って空を確認するふりをし、異変がないと分かると、胡散臭そうな目で太一を見た。「あんた、目が悪いんじゃない?オフィス間違えてるわよ」「出口はあっち。さようなら」太一の顔色が土気色に変わる。以前の彼なら、間違いなく踵を返していただろう。こんな屈辱に耐えられるタマじゃない。だが今の彼は、この侮辱を飲み込むだけでなく、さらに下手に出なければならなかった。「……江崎さんに、会いに来たんだ」「え?なんて?よく聞こえなーい」太一は奥歯を噛み締め、声を張り上げる。「江崎さんに用があると言ったんだ」「あー、そう。でも残念ね、暇じゃないのよ。お引き取りを」ミキはしっしっと犬を追払うような手つきで、適当にあしらった。太一は拳を強く握りしめた。「彼女とは仕事の話があるんだ」「あんたにどんな用事があろうと、詩織は忙しいの」「君みたいな部外者には……」ミキは彼をねめつけた。「部外者がなんだって?」太一は込み上げる怒りを必死に抑え込み、猫なで声を作った。「江崎さんと話すべき、とても重要な案件なんだ。頼むから、取り次いでくれないか」「ふーん、重要な案件ねえ。じゃあ内容を言ってみなさいよ
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第378話

詩織は少しの間考え込んでから、ぽつりと答えた。「できるんじゃない?」結局のところ、柊也はいつだって志帆の尻拭いをしてやるのだから。悪い噂は広まるのが早い。詩織が退社する前には、もうエイジア・キャピタルの内部情報が耳に入ってきた。花火の一件でエイジア・ハイテックの株価は下がり続け、その余波は親会社であるエイジア本体にも及んでいた。当然、株主たちは黙ってはいない。緊急の株主総会が開かれ、柊也が矢面に立たされているらしい。聞くところによれば、株主たちは口を揃えて志帆の責任追及を求めているという。「説明責任を果たせ」とは、要するに「辞表を出せ」という圧力だろう。しかし柊也は首を縦に振らず、株主全員からのプレッシャーを一人で受け止めているそうだ。そこまで行けば、もはや真実の愛と言ってもいいかもしれない。ただ、彼がいつまで持ちこたえられるのかは未知数だ。詩織は少し楽しみな気持ちで、その行方を見守っていた。騒動の影響は拡大の一途を辿り、エイジアの本社ビルは二十四時間体制で明かりが消えることはないという。そんな中、張本人の志帆は体調不良を理由に入院してしまった。翌日、ミキの捻挫の治療に付き添って病院を訪れると、彼女は「せっかくだから野次馬したい」と言って聞かなかった。どうやら志帆も同じ病院に入院しているらしい。詩織は慌てて彼女を止めた。ミキは不満げにぷうっと頬を膨らませる。「なんで止めるのよぉ。私、あの女が落ちぶれたツラを拝んで笑ってやりたかったのに」「これから会社に戻って会議なの。お願いだから大人しくしてて、お姫様」「会議」という単語を聞いた途端、ミキはげっそりした顔になった。「また会議?あんた毎日会議ばっかりじゃない。ここに来て二日経つけど、ずっと会議会議で全然かまってくれないし」「終わったら遊んであげるから」「……」そのセリフ、昨日も聞いた気がする。ミキが抗議しようと口を開きかけた瞬間、詩織は財布から一枚のブラックカードを取り出し、彼女に手渡した。「あとでアシスタントを行かせるから、買い物でもしてなさい。好きなだけ使っていいわよ」ミキの態度は百八十度変わった。「了解!詩織ちゃん、お仕事頑張ってねん。私のことは気にしないで」病院のロビーは面会の人々でごった返していた。それでも
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第379話

詩織には感傷に浸っている暇はなかった。腕時計を確認して、足早になる。「やばい、このままだと会議に遅刻しちゃう」「なら先に行きなよ」「ミキはどうするの?」ミキは先ほど手に入れたブラックカードを得意げに掲げた。「もちろん、爆買いツアーに出発よ。足もだいぶ良くなったし、あんまり歩き回らなければ平気だから。安心して行ってきなさい」本当に時間がなかった詩織は、いくつかの注意事項を早口で伝えると、慌ただしく会社へ戻っていった。一人残されたミキは、すぐには病院を離れなかった。踵を返して院内へ戻ると、何食わぬ顔で歩き回り、ついに志帆の病室を特定する。そしてスマホを取り出し、SNSの裏アカウントでログイン。大炎上中の花火騒動のハッシュタグを開くと、一文を投稿した。【炎上花火の責任者がどこに隠れてるか、私知ってるんです】ほとぼりが冷めるまで雲隠れ?させるわけないでしょ、バーカ!病室のベッドの上で、志帆はずんドヨーンと沈み込んでいた。どうしても納得がいかない。たかが花火を打ち上げただけで、なぜこれほどの大炎上騒ぎになるのか。それに、その炎上が引き起こした連鎖反応があまりに深刻すぎることも、彼女の理解を超えていた。エイジア・キャピタルの株主たちが圧力をかけてきていることは耳に入っていた。柊也は何も言わないけれど、隠しきれるものではない。悠人から電話があったが、出る気になれず、着信音が鳴り止むのをただ待った。その後、心配するメッセージが届いたが、それも未読のまま放置している。「もう、いつまでいじけてるの。そんなことより、今は柊也くんが婚約をどうするかの方が大事でしょ」母の佳乃が苛立ち混じりに諭してくる。「さっき柊也くんに電話したから、もうすぐ来るはずよ。ちゃんと顔を作っておきなさい」志帆が力なく返事をしたのとほぼ同時に、病室のドアが開いた。「具合はどうだ」入ってくるなり、柊也は志帆を気遣った。志帆は弱々しく首を横に振り、「大丈夫」とだけ答えた。すかさず佳乃が横から口を挟む。「四十度も熱があったのに大丈夫なわけないじゃない。私が気づいたから良かったようなものの……この子ったら、あなたが忙しいから余計な心配をかけたくないって、連絡するのを止めるのよ」「お母さん……」志帆は母を制した。実際に柊也が疲労困憊しているの
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第380話

口ではそう言ってみせる佳乃だが、内実は焦りでいっぱいだった。海雲はすでに遺言書の作成に取り掛かっているという噂だ。不確定要素が多すぎる。いくら柊也が婚約維持を明言したとはいえ、一寸先は闇だ。不測の事態が起きないとは限らない。念には念を入れなければ。志帆が眠りについたのを見計らい、佳乃は病室を抜け出して一本の電話をかけた。「ちょっと、あんたこの事態をどうにかする気はないの?腐ってもあなたの娘でしょ」相手の返答も待たずに、彼女はさらに畳み掛ける。「それから、江崎詩織とかいう女。あいつ、いっつも志帆の邪魔ばかりして目障りなのよ。なんでも行政がらみの港湾プロジェクトに関わってるらしいじゃない。あんたのコネで妨害工作でもしてやってよ。これ以上いい気にさせないで」……詩織が会議を終えて部屋に戻ると、密が報告に入ってきた。「衆厳の宇田川太一さん、また来てましたよ」詩織は視線だけで反応する。密は慌てて付け加えた。「追い返しておきましたけど」詩織は興味なさげに視線を戻し、パソコンを開いて仕事に取り掛かった。「あいつ、何回まで粘ると思います?」「さあね」そんなくだらないことを推測する暇はない。だが密は興味津々だ。「私の賭けでは、せいぜい三回ってとこかな」詩織はキーボードを叩く手を休めず、顔も上げずに答えた。「どうかしらね」衆厳メディカルの状況は火の車だ。太一の中にまだ良心というものが残っているなら、そう簡単には諦めないはずだ。密が部屋を出てから五分もしないうちに、慌てふためいて戻ってきた。「詩織さん、たいへんです。天宮グループの神宮寺社長がいらっしゃいました」詩織の指が止まる。眉間にしわを寄せ、怪訝な顔をした。「神宮寺が?何しに」「業務提携の件で、と」その言葉に、詩織は少なからず驚いた。これまで彼女は何度か天宮グループとの提携を模索したが、そのたびに悠人にはやんわりと、しかしきっぱり拒絶されてきたのだ。それが今さら、向こうから提携話を持ちかけてくるだって?華栄キャピタルを何だと思っているの。スーパーの特売野菜じゃないんだから。好きな時に選り好みできると思ったら大間違いよ。ここにはここの敷居がある。詩織は即答した。「お断りして」「了解です!」密はロビーへ戻り、詩織の拒絶を悠人に
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