源治ほどの逸材なら、引く手あまたなのは当然だ。彼がもし他のパートナーを選んだとしても、それは仕方がないことだと腹を括っていたが……どうやら心配はなさそうだ。源治の態度は明確だった。詩織にとって、これほど心強いことはない。その後、ミキから電話があり、夕食に誘われた。すでに店は予約済みだというので指示された場所へ向かったが、着いてみて驚いた。なんと先客がいたのだ。「やあ、こんばんは」賢が紳士的に立ち上がり、詩織のために椅子を引いてくれる。詩織は怪訝な視線をミキに向けた。当のミキはバツが悪そうに、皿の上の料理を黙々とつついている。見兼ねた賢が助け舟を出した。「近藤さんがね、江ノ本には詳しくないし、君は仕事で忙しいからって、どこかお勧めのレストランはないかって連絡をくれたんだ。ちょうど僕も時間が空いてたから、案内させてもらったよ」詩織は平静を装って席に着くと、ミキを冷たく見下ろして言った。「江ノ本に詳しくない?あんたの大学四年間は無駄だったわけ?」だが、そこは女優・近藤ミキ。親友に嘘を見抜かれても動じない。こういう修羅場の演技はお手の物だ。「だってほら、卒業してからずっと外で仕事してたし?久しぶりに帰ってきたら浦島太郎状態なのよ。それに、賢さんみたいなやり手がいるおかげで、江ノ本は爆速発展中でしょ?街の景色なんて一日で変わっちゃうんだから、詳しくなくて当然じゃない」その口八丁に、詩織は呆れて溜息をつくしかなかった。料理はすでに注文済みだったらしく、詩織が席に着くとすぐに、賢がウェイターに合図を送ってサーブさせた。運ばれてきた料理はどれもあっさりとした味付けで、詩織の好物ばかりだ。ミキはニヤニヤとあからさまな笑みを浮かべた。「注文する時に賢さんが『江崎さんの好きなものは?』って聞くから教えてあげたんだけど、まさか全部あんたの好物で埋め尽くすとはねえ。愛が重いってば。ちなみに私の好みは一度も聞かれなかったけどね」賢は苦笑いしながら慌ててメニューをミキに差し出し、追加注文を促した。「いーのいーの。私、『ご馳走様』な見せつけでお腹いっぱいになるタイプだから。何でも食べるし」詩織はテーブルの下でミキの足を蹴飛ばした。「あ痛っ!」ミキが大袈裟な声を上げる。捻挫した箇所を蹴ってしまったかと詩織は一瞬焦
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