とうとう高村教授が駒を放り出した。「やめだやめだ!こんな気のない奴と指してられるか!」「すみません、先生。ちょっと急用ができまして……また日を改めて、お相手させていただきます」悠人は申し訳なさそうに頭を下げた。高村教授は彼を一瞥もしないまま、さっさと書房へと引き上げてしまった。悠人は急いで江ノ本大学へと駆けつけた。どこにいるか電話で確認しようとスマホを取り出した矢先、人混みの中に志帆の姿を見つけ出す。彼はすぐさまスマホをしまい、彼女のもとへと歩み寄った。卒業シーズンは就活シーズンでもある。大学側はキャンパス内の広場を開放し、企業ブースを設けて合同説明会を行っていた。詩織は良い場所を確保しようと、ミキと共に早朝から乗り込んでいた。その甲斐あって、大講堂へ続くメインストリート沿いという、絶好のポイントを陣取ることができた。今はスタッフと共にブースの設営を急いでいる最中だ。正門から入ってきた志帆は、すぐに詩織の姿に気づいた。その瞬間、表情が翳る。だが、詩織が何をしているのかを見て取ると、唇の端を吊り上げて嘲笑を浮かべ、すぐにウィリアム教授の後を追った。教授の傍らには、学長の曲山和宏(まがりやま かずひろ)が張り付いてご機嫌取りをしている。志帆がウィリアム教授の教え子だと知ると、曲山は彼女に対しても揉み手をするような態度を見せた。志帆はそれを利用し、さりげなく切り出した。「曲山学長、実は弊社のリクルート活動でも、少しご相談がありまして……よろしければ、いい場所を手配していただけないでしょうか」曲山は二つ返事で快諾する。「お安い御用ですよ。すぐに人を向かわせましょう」「ありがとうございます、助かりますわ」礼を述べると、志帆はすぐに『エイジア・ハイテック』の人事部へ電話を入れた。エイジア・ハイテックの人事担当も今日はここに来ていたが、到着が遅れて良い場所を確保できず、頭を抱えていたところだった。そこへ志帆から「特等席を用意したから、すぐに来なさい」という連絡が入る。志帆はスタッフを引き連れ、詩織たちがいるブースへと向かった。詩織たちはちょうど設営を終え、学生たちへの呼び込みを始めようとしていた。そこへ、志帆が取り巻きを連れて現れる。彼女自身は何も言わず、ただ黙ってたっているだけだ。代わりに、曲山
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