一方その頃、京介が自宅マンションに戻ると、リビングのソファには寝転がってスマホゲームに興じる太一の姿があった。ドアの開く音に気づき、太一は画面から数秒だけ視線を外して声を上げた。「京介兄貴、おっそいよ。どんだけ待たせんの?」「何か用か?」太一は迷わずゲームを終了させた。チームメイトから罵倒されることなどお構いなしだ。彼が求めているのは、勝利よりも真実だった。「昼間の電話のことだよ。志帆ちゃんが言ってたあれ、マジなのか?」太一は好奇心で爆発しそうだったのだ。居ても立ってもいられず、答えを聞き出すためだけに京介の家に押しかけたのである。もちろん、彼なりに待ち時間の間に推理はしていた。あれこれと考えを巡らせた結果、たどり着いた結論はこうだ。『京介は、志帆を煽って嫉妬させるために、あえてあんなことを言った』それ以外の理由は見当たらない。やはり、その線が濃厚だ。男というのは、別れた元カノに対しても奇妙な独占欲を持つ生き物だ。いわゆる「喪失感」や「剥奪感」に近い。自分の手元から離れた途端に惜しくなり、心にもないきつい言葉を吐いて、相手の気を引こうとする──よくある話だ。「嘘だろ?志帆ちゃんへのあてつけだよな?兄貴が詩織のこと好きだなんて、ありえねーし」太一は自ら導き出した結論に、深く安堵の息を吐いた。「──誰が嘘だと言った?」京介はコップ半分の水を飲み干してから、一言一言、噛み含めるように、だが悠然と太一の問いに答えた。その口調はいつもより緩やかだったが、これまでになく揺るぎない確信に満ちていた。一瞬、太一の思考が空白になり、次いで頭の中を猛烈な耳鳴りが埋め尽くした。脳がショートして爆発寸前だ。表情は完全に凍り付いている。電話越しに聞くのと、本人の口から直接聞かされるのとでは、破壊の桁が違った。彼はあんぐりと口を開けたまま、しばらく声すら出せなかった。「……じゃ、じゃあ志帆ちゃんは?」ようやく絞り出した声で、太一が真っ先に口にしたのはやはり柏木志帆のことだった。「あの人は六年も、兄貴に尽くしてきたんだぞ!人生で一番貴重な時期を六年だぞ!?」京介の声は冷徹で抑揚がなく、その表情すら冷めきっていた。「お前は、彼女の言うことをすべて鵜呑みにしているのか?」「だけど……」太一は何か反論して証明し
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