もし澄江の前で切り出したら、きっと私は澄江を利用して彼を脅していると思われるだろう。実際、そんなことはしたくない。しかし、どうやって彼と二人きりで話す機会を作ればいいの?食事が終わるまで、結局いいタイミングは一度も見つからなかった。食事を終え、高司が最初に箸を置いた。「おばあちゃん、先に部屋へ戻るよ。みんなはゆっくりどうぞ」高司が立ち上がった瞬間、澄江が声をかけた。「そんなに急がなくていいでしょ?このあと昭乃を庭に連れて行って、少し歩いてきなさい。食後の運動よ。うちの小さな庭、最近また花を植え替えたの。冬に咲く花ばかりで、珍しいのよ」高司は一瞬言葉に詰まり、澄江に促されるまま、渋々元の席に座り直した。その視線が意味ありげに私をかすめる。どうやら、澄江の提案を私が断るのを期待しているらしい。普段、澄江が私たちをくっつけようとする時は、いつも私のほうから断っていた。しかし今は、私は俯いて食事を続け、彼の視線にも合図にも気づかないふりをした。今日はどうしても、彼に頼みたいことがある。しかも二人きりで話さなければならない。そうでなければ、こんな多忙な人に、庭で一緒に散歩しようなんて厚かましい真似、するはずがない。夜の庭は淡い月明かりに包まれ、夜風にほのかな花の香りが混じっていた。高司は落ち着いた足取りで歩き、近寄りがたい冷たい空気をまとったまま、一言も発しない。私は半歩後ろをついていき、彼のまっすぐな背中を見つめながら、どう切り出すべきか考えていた。そのとき、左足が右足に絡まり、思わず声を上げて、体が前のめりに倒れそうになった。次の瞬間、手首を力強くつかまれた。分厚いカシミヤのコート越しでも、その力ははっきり伝わり、しっかりと支えられているのがわかった。体勢を立て直すと、慌てて手を引っ込め、頬が熱くなるのを感じながら小さく言った。「ありがとうございます、高司さん」彼は淡々と「うん」とだけ答え、視線を外してまた歩き出した。沈黙が二人の間に広がる。心菜のことが頭に浮かび、私はついに覚悟を決めた。「高司さん、あの……実はお願いしたいことがあしましてて……」高司は足を止め、振り返って私を見た。月明かりが彼のシャープな横顔を縁取り、金縁の眼鏡の奥の視線は、どこまでも距離がある。「プライベートで、仕
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