All Chapters of 百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった: Chapter 111 - Chapter 116

116 Chapters

第111章:暴走と家族会議*蓮

学校から帰ってきて、すぐに自分の部屋にこもった。ノートパソコンを開いて、『Phantom Guard』のコードをいじり始める。 sophila――反町香澄社長のサーバーに侵入して、彼女の秘密を探る。最新のバージョンで、今度こそ突破してやる。 「よし……ファイアウォールの抜け道、昨日見つけたやつを使って……」 キーボードを叩く。画面にデータが流れ込んでくる。機密ファイル、ログ……そして、変なフォルダを見つけた。「Sealed Memory」って名前。封印された記憶? なんだこれ。 パスワードがかかってるけど、僕のアプリでクラック。開くと、中に古いプログラムのコードがいっぱい。洗脳プログラム……? プログラムの製作者の名前を見ると、“ryuichi”と記載されている。sophila自身が作ったものではない。 ログを見ると、sophilaが自分の意思でプログラムを起動して、過去の香澄の人格を封印した記録が残ってる。 「香澄は、自分の意思で過去の自分を封印してた……? どうして?」 さらに深く掘ってみる。プログラムのコメントに、sophilaのメモみたいなものが残ってる。「弱い自分を閉じ込めれば、私は強くなれる。遥花を傷つけないために」。 ……遥花? ママのこと? sophilaは、ママを傷つけないために、過去の香澄を封印した? でも、今のsophilaはママを傷つけるようなことばっかりしてる。矛盾してる。 「もしかして、封印したせいで、sophila自身がおかしくなっちゃったのかも……」 頭を掻く。この洗脳プログラムは、元々人格を操るためのものだったようだ。“ryuichi”というのが誰かはよくわからないが、ともかく第三者が作ったプログラムをsophila自身がいじったら、予想外の結果になったのかも。弱い自分を封印したつもりが、逆に強すぎる人格が暴走し始めた……みたいな。 「sophilaを倒すんじゃなくて、過去の香澄を解放すれば……元の香澄に戻れるかも」 閃いた。アプリをさらに改良して、封印データを解除するハッキングコードを書く。プログラムの構造を解析して、逆の動作をするように。理論上は可能だ。でも、実際にやるには、香澄のスマホかパソコンに直接アクセスしないと……。 「まずは、家族に話さないと」 リビングへ降りる。菖蒲はソファでSwitchや
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第112章:再会への旅*遥花

朝の陽射しがカーテンの隙間から差し込む。リビングのテーブルに、蓮と菖蒲の朝食を並べながら、私は静かに息を吐いた。今日は香澄に会いに行くと決めた日。「ママ、どこか行くの?」菖蒲が目をこすりながらリビングに入ってきた。彼女の髪は寝癖で跳ねていて、いつものように可愛い。私は微笑んで、菖蒲の頭を撫でた。「うん、ちょっと用事でね。一人で出かけてくるわ」菖蒲の目が、大きく見開かれた。「え……一人で? また、帰ってこないつもり?」「心配しないで、夕方には帰るから」菖蒲は、唇を尖らせた。「ママ……絶対帰ってきてね。菖蒲、ママがいないと寂しいもん」その言葉に、胸が締め付けられた。菖蒲の小さな手が、私の服の裾を握る。私はしゃがんで、菖蒲を抱きしめた。「うん、絶対帰ってくる。菖蒲と蓮とパパと、一緒にいるよ」蓮が階段を降りてきた。ノートパソコンを抱えている。「遥花……僕のアプリで、香澄さんの位置は追えるよ。リアルタイムで。危なくなったら、すぐに連絡する」蓮の声は、落ち着いている。でも、目が少し赤い。私の決意を、止める気はないみたいだ。「ありがとう、蓮。頼りにしてるわ」悠真は、朝から会社に出かけていた。昨夜、すべてを話した。香澄に会いに行くこと。過去の香澄を救うために、一人で行きたいと。彼は悩んでいたようだが、もう私を止めることはしなかった。ただ、「気をつけて。帰ってきてくれ」とだけ言った。家を出た。菖蒲は玄関で手を振って、「ママ、絶対帰ってきてね!」と泣きながら叫ぶ。蓮は「アプリで追ってるから、大丈夫だよ」と静かに言いながら、私に笑顔を向けてくれた。電車の中で、過去の記憶が蘇る。香澄と出会った子供の頃。彼女はいつも明るくて、私の厳しい家庭環境を笑い飛ばしてくれた。香澄は、私の初めての友達……そして私が双子を身ごもってから、とても短い間だけど、共に暮らし、共に双子を育て、そして愛し合った、かけがえの無い家族だ。今、香澄は反町香澄として、私たちの敵になっている。でも、私は信じている。彼女の中には、まだ過去の香澄がいる。sophilaが封印した、優しい香澄が。東京駅に着き、ネットブロード社の本社へ向かうタクシーの中で、蓮からLINEが来た。「遥花、香澄さんの位置は最上階の社長室。アプリでリアルタイム追跡中。……でも、解放アプリを入れるには、香澄さんのデバイ
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第113章:統合の瞬間*sophila

頭が割れそうだった。 膝をついた瞬間、世界が音を失った。社長室の床が冷たくて、指先が震える。遥花の声が遠くから聞こえる。 「香澄……過去のあなたを、解放するわ。もう、恐れなくていい」 その言葉が、胸の奥に突き刺さった。次の瞬間、私の意識は体から引き剥がされた。暗闇の中に落ちていく。まるで深い井戸の底へ、ゆっくりと沈んでいくような感覚。 そこは真っ白な空間だった。どこまでも続く白い床と、白い天井。まるで病院の無菌室のようだ。 私は立っていた。黒いスーツを着た「反町香澄」――sophilaの私が。 そして、向かい側にもう一人の私がいた。白いワンピースを着た、遥花の恋人だった頃の、柔らかい笑顔の香澄。 二人の私が、静かに向き合っていた。 「……やっと、会えたね」“過去の香澄”が、優しく微笑んだ。私は、唇を歪めた。 「会いたくなんてなかった。私は弱い。すぐにあなたに頼ってしまう。だから……」“過去の香澄”は、静かに首を振った。 「あなたが私を封印したせいで、遥花は泣いたわ。私が、遥花を悲しませてしまった」 怒りか、悔しさか、自分でもわからない。 「違う、あなたじゃない! 遥花を悲しませたのは私のせい……私は、あなたを独占しようとしたの!」 しかし“過去の香澄”が否定する。 「あなたはただ、強くあろうとしただけ。弱いままじゃ、遥花を幸せにできない。隆一に作られた道具のままじゃ、彼女を傷つけるだけだと思った。だから、私を封印したんでしょ。強くなって、すべてを壊して、遥花を自由にしてあげようとしたんじゃない」“過去の香澄”がゆっくりと近づいてきた。彼女の瞳は、涙で濡れていた。 「違うわ。私は、ただ怖かったのよ。弱いままで、遥花に嫌われてしまうのが。遥花に、愛され続ける自信がなかった。だから、あなたを閉じ込めて、強がった。復讐なんて、ただの言い訳。本当は、遥花に触れたくて、抱きしめたくて、でも怖くて……」 白い空間に、私の声が反響する。頭痛が、再び激しくなる。腫瘍が、脳を締め付ける。“過去の香澄”は、悲しげに微笑んだ。 「もう、いいのよ。遥花が来てくれた。彼女は、私たちを愛してくれている。sophilaも、香澄も、全部愛してくれているって……抱きしめてくれた」 その瞬間、外の世界から、遥花の温かさが流れ込んできた。彼女の腕の感触、唇の柔ら
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第114章:残された時間*遥花

【2025年11月】 病院の個室は静かで、白いカーテンが柔らかい陽射しを遮っていた。香澄はベッドに横たわり、点滴のチューブが腕に繋がれている。顔色はまだ青白いが、目だけは昔のままの優しさを取り戻していた。 私はベッドの脇に座り、香澄の手を握っていた。彼女の指は細くて冷たい。でも、握り返してくれる力が、確かにあった。 「遥花……ありがとう。来てくれて」 香澄の声は弱々しかったが、穏やかだった。私は微笑んで、首を振った。 「ありがとうはこっちよ。戻ってきてくれて」 香澄は小さく笑った。目尻に、涙が溜まる。 「戻れたのは、遥花のおかげ。蓮の作ったアプリがなかったら……私はまだ、sophilaのままでいた」 蓮のアプリ。あの子の執念が、封印を解いた。統合の瞬間、香澄の体が震え、過去の香澄とsophilaが一つになった。あのときの衝撃で、腫瘍が一気に悪化した。医師の診断は、残酷だった。 「脳腫瘍、末期です。手術はもう不可能。余命は……数週間から数ヶ月」 その言葉を聞いたとき、私は膝から崩れ落ちた。香澄はベッドの上で、静かに泣いていた。 でも、今は泣かない。泣いている暇はない。残された時間を、一緒に過ごすために。 「香澄……私たち、残された時間を一緒に過ごそう」 私は、香澄の額にそっとキスをした。彼女は目を閉じて、頷いた。 「うん……お願い」 ※ 病院の廊下で、蓮と菖蒲が待っていた。菖蒲はマネージャーの奥野さんと一緒に来ていて、今日は撮影の合間を縫って駆けつけた。 「ママ! 香澄さん、どう?」 菖蒲が駆け寄ってきて、私の腰に抱きつく。私は菖蒲を抱き上げて、頷いた。 「少し落ち着いたわ。ありがとう、来てくれて」 蓮はノートパソコンを抱えたまま、静かに言った。 「遥花……ステアリンググループの件、終わったよ」 私は目を丸くした。 「終わった……?」 蓮はパソコンを開いて、画面を見せてくれた。株価チャートが、急回復している。赤かった線が、緑に変わっていた。 「香澄さんのサーバーから抜き出した不正データ、全部公開した。ネットブロード社のハッキング証拠も、警察に提出した。ユナイトコーポレーションの買収計画は凍結。総帥に就任した悠真……父さんの采配もうまくいってる」 菖蒲が目を輝かせた。 「すごーい! ざあこお兄ちゃん、めっちゃカッコい
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第115章:私を恨んで*香澄

私の手は、遥花の細い首に絡まっていた。指先に、彼女の脈が伝わる。温かくて、速くて、生きている証。なのに、私はその脈を止めようとしていた。 「わかったわ、遥花……ありがとう。それなら私の手で、殺してあげる」 声は震えていた。自分の声なのに、どこか遠くから聞こえるようだった。sophilaの冷徹さも、過去の香澄の優しさも、もう混ざり合って一つの私になっているはずなのに、今この瞬間だけは、どちらでもない何かだった。 遥花の瞳が、驚きと悲しみで揺れる。彼女は抵抗しない。ただ、私を見つめている。その目が、私の心を抉る。 「……香澄……?」 彼女の声が、かすれる。首を絞める力が、徐々に強くなる。息が詰まる音がする。遥花の顔が、赤くなる。涙が、一筋、頬を伝う。 その涙を見た瞬間、何かが弾けた。 ――できない。 手から力が抜けた。指が、勝手に離れる。遥花は大きく咳き込み、ベッドに倒れ込んだ。彼女の胸が激しく上下する。息を吸うたび、喉が鳴る。 私は、自分の手を呆然と見つめた。 「ごめんね……」 声が、震えた。涙が、ぽろぽろと落ちる。遥花は咳をしながら、私を見上げた。首に赤い痕が残っている。それを見ただけで、また胸が裂けそうになる。 「遥花……ごめん」 私は、彼女の体を抱き寄せた。遥花はまだ息を荒げながら、私の胸に顔を埋めた。 「香澄……」 「遥花を殺すなんて、できない。あなたに生きていてほしいから。私はあなたと共に生きられない。それならせめて、一生私のことを想って、ずっと引きずったまま生きていて欲しいと思うの。ごめんね、それが私のワガママ」 遥花の肩が、震えた。彼女は、私の胸に顔を押しつけて、泣きじゃくった。 「そんな……そんなワガママ、許さない……」 「許さなくていい。でも、私の願いはこれだけなの。遥花が、私を忘れずにいてくれること。蓮と菖蒲が大きくなって、私のことを話してくれること。悠真が、遥花を支え続けてくれること」 私は、遥花の髪を撫でた。彼女の涙が、私の病衣を濡らす。 「遥花……最後に、ひとつだけお願い」 遥花は、顔を上げた。涙でぐしゃぐしゃの顔が、愛おしい。 「なに……?」 「私を抱いて。最後に、一度だけ……」 遥花の目が、揺れた。でも、すぐに頷いた。 「うん……」 私
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第116章(最終話):永遠の絆*遥花

【2026年1月】冬の陽射しは冷たく、墓地の石碑に白い影を落としていた。香澄の墓前には、家族みんなが揃っていた。悠真、蓮、菖蒲、そして私。今日は香澄の四十九日。去年の11月、彼女は静かに息を引き取った。墓石には「遠藤香澄」と刻まれている。香澄と反町家の関係は、香澄が亡くなる前からすでに切れていた。ネットブロード社がステアリンググループに対して起こしたハッキング攻撃は、すべて香澄の独断として責任を押し付けられる形となった。元夫であり、社長の創業者であった反町信弘氏は植物人間状態。それに代わり、会社の重役や幹部達、それに反町家の血縁者たちが徒党を組んで、香澄社長を追い出した。酷い話だが、香澄自身も死期が近かったとあって、マスコミなどの取材に煩わされることもなかった。ユナイトコーポレーションの買収の話も凍結され、ネットブロード社は今、再編に追われているが、もはや香澄とは無関係な話だ。ある意味では、香澄自身が望んだ通りの結末だったのかもしれない。彼女らしい、見事な幕引きだ。世間は、反町香澄なんて最初から存在しなかったかのように動き始めている。けれど私たちだけは――あの日、病室で最後に交わしたキスと抱擁の感触は、今も私の肌に残っている。菖蒲が小さな花束を墓前に置いた。彼女はもう10歳。去年のドラマが大ヒットして、天才子役としてますますオファーも増えて忙しくなっているのに、今日は撮影を休んで来てくれた。「香澄さん……お元気? 菖蒲、ちゃんと大きくなってるよ。ママとパパと、お兄ちゃんと、みんなで頑張ってるからね」菖蒲の声は少し震えていた。蓮は黙って菖蒲の肩を抱いた。蓮の『Phantom Guard』は警察のサイバー捜査に正式採用され、彼はもう「天才少年プログラマー」として有名人になり始めている。悠真は私の手を握っていた。総帥就任から数ヶ月、ステアリンググループは安定を取り戻した。社長令嬢である阿左美さんも蘇った霊視の力で手腕を振るいつつ、ユナイトコーポレーションの株価も回復傾向にある。「散々苦労かけさせられたが……ある意味では、お前のお陰で成長できたとも言える。ライバルとして、元友人として、お前を失って俺も辛く思っているよ、香澄……できればまた、若い頃の武勇伝でも語り合いたかったな」悠真の声は静かだった。私は彼の肩に頭を預けた。「カッコつけてるけど、昨日の
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