百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった

百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった

last updateÚltima actualización : 2026-03-04
Por:  道中ヘルベチカCompletado
Idioma: Japanese
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物流大手ルミナスコーポレーションを経営する養父母から「借り物の娘」扱いされながらも、運輸大手ステアリンググループの御曹司・悠真と政略結婚した遥花。本物の家族を手に入れられたと思っていたが、それは悪夢の始まりだった。グループの総帥の“帝王学”で、妻も信頼できず「娼婦」として扱う悠真。夫に無碍に扱われながらも双子を身ごもる遥花。悠真が他所の女(百合子)と一緒に屋敷にいることを目撃し、離婚を決意する。悠真が百合子を運命の女性と信じる一方、遥花は親友・香澄の支援で新生活を始め、養父母の圧力や脅迫メモに苦しむ。すれ違いの愛と双子の秘密、企業間の陰謀がドロドロに絡む愛憎劇。

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Capítulo 1

第1章:夢の終わり*遥花

"I'm sure you wouldn't want your husband to find out about this, would you, Mrs. Bamrick?"

My name is Riley Bamrick. I had just finished fixing my clothes in the restroom. As I stepped outside and turned toward the trampoline area where my husband, Julian Bamrick, and my daughter, Lydia Bamrick, were, a strange man with an evil smile blocked my path.

I instinctively shifted to the side to hide the damp patch on my blouse before looking up at him.

"What do you mean?" I asked.

My eyes flicked past him toward the trampolines. The sight of Julian and Lydia playing there gave me the courage to speak up.

The man chuckled.

"I'm Finneas Zurick, Zachary's dad. We met at the kindergarten parent meeting," he began. "I've been thinking about you ever since then. I've been wondering when we'd finally get a chance to talk."

His words grew more improper by the second.

A faint blush spread across my cheeks as I studied him.

When he mentioned his name, I realized that I did remember him.

Finneas was powerfully built, clearly a regular at the gym. His arms were thick with muscle, their shape visible even through his T-shirt.

The smile on his face widened when he noticed my gaze.

He stepped closer and fixed his gaze solely on my chest. "It looks like your blouse's soaked again, Mrs. Bamrick."

His hot breath brushed against my face, making my cheeks burn hotter than before. Without thinking, I asked, "W-What do you want?"

To my surprise, my voice had taken on a slightly teasing tone.

Realization snapped me back to my senses. Julian was useless. Ever since meeting Finneas, I had had a few shameful dreams—and every single one of them featured him.

Now that he was standing right in front of me, I was too embarrassed to speak. That was why my voice sounded so wrong.

Finneas raised an eyebrow. He was clearly pleased by my reaction.

"Mrs. Bamrick," he said lightly. "I've only seen you a handful of times, but I haven't been able to forget you. When I saw you rushing into the restroom just now, I followed you, thinking you might need some help. I didn't think I'd…"

He trailed off, pulling out his phone. "I didn't think I'd see this."

My head buzzed the instant I saw the screen.

On his phone were pictures of me with my soaked blouse as I went to change. The images left nothing to the imagination.

I reached for the phone, but Finneas lifted his arm. I almost fell into his embrace before stopping myself at the last second.

Finneas' arm was mere inches away.

I was still breastfeeding, so being pressed so close to a strange man triggered something in me. I was too afraid to move.

Even though Lydia was older now, I had continued breastfeeding her because it provided superior nutrition. On top of that, my body produced far more milk than most women's.

That was why my clothes tended to be damp with milk.

As I shifted slightly, I could feel my blouse growing wetter again. A faint aroma of milk drifted through the air.

Finneas inhaled deeply. "What a memorable scent. I noticed it on you during the parent meeting, Mrs. Bamrick. It's incredible. I didn't think I'd ever get to experience it this close."

How was he so blunt?

I could feel my cheeks flush.

"But don't worry," he added. "I won't make you do anything extreme. I just need some warm milk. Once I get that, I'll delete the photos."

He looked down at me from above. As if he'd had everything planned, he reached behind him and pulled out a clear disposable cup.

Seeing it made my face burn. I shook my head. "I… I can't."

"Mrs. Bamrick, don't blame me for what happens next if you refuse my request. Have you considered the consequences if these photos get out? What would your husband think? And your daughter?" he threatened.

My body started trembling.

The mere thought of those images being exposed made my blood run cold. I shook uncontrollably.

However, my reaction only seemed to please him more. Finneas slowly looked me up and down. "So, have you thought it through? Are you going to offer me something warm to drink?"

Faced with his repeated threats and deliberate teasing, I clenched my teeth.

If I didn't comply, the consequences would be unthinkable. If giving him some of my milk could stop him from pushing further, it seemed fairly endurable.

"W-Would you delete all those photos once you get what you want?"

My eyes drifted back to the trampolines where Julian and Lydia were. I was already prepared to agree to Finneas' request.
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第2章:離婚届*遥花
寝室の空気が凍りつく。離婚届を前に、悠真は明らかに動揺した様子だった。だが、しばらくして。彼は頭を何度か振り、大きなため息をつくと、急に嘲るような笑みを浮かべてこう言った。「お前が、俺を捨てる気か?」その声は低く、拳を握りしめた手はわずかに震え、取り繕っているのがわかる。しかしその口から発せられる言葉は、相変わらず無慈悲だ。「遥花、お前はいつもこうだ。何を企んでる? この結婚だって、お前の養父母の――ルミナスコーポレーションの計画だったんだろ? それが……今度は、離婚だって? そんなことしてどうする。慰謝料でもせびるつもりか?」胸が締め付けられる。慰謝料? 私がそんなものを欲しがる人間だと? 悠真を愛していた。心のどこかで今も愛している。なのに彼の目には、やはり私は養父母の道具としか映っていないのだ。「いいえ。そんなもののためじゃない」私も声が震えたが、もう後には引けない。「親の都合なんて関係ない。私自身がもう、この家にいる理由を見いだせないの。だからよ」悠真の目が細まる。「理由を見いだせない、か」次の瞬間、彼の手が私の首に伸びた。「また新しい策略か? 今度は何を狙ってる!」指が食い込み、息が苦しくなる。でも、私は目を逸らさなかった。「あなたには本物の愛が必要なんでしょう?」言葉を喉から絞り出す。「あなたは、私より百合子さんが大切なんでしょう? なぜサインできないの? 私なんかと別れて、堂々と付き合えばいいじゃない!」悠真は怯えるような顔をした後、首から手を離した。一瞬だけ私から目を逸らしたが、じきにハッとしたような表情を浮かべ、「……なるほど、スキャンダル狙いってわけか?」彼の声が、鋭く切り込む。「俺が彼女と不倫してるとでも思ってやがるんだな……離婚して、俺を週刊誌に売り出す気だろう。お前ならやりかねないな!」慰謝料の次は、スキャンダル目的だと――正気だろうか?私の愛したあの優しい笑顔を、ほんの一瞬でも見せてくれた彼は、もうそこにはいなかった。目の前にいるのは別の生き物。冷たく、疑い深い、知らない男だ。絶望に打ちひしがれる私から、悠真は離婚届を奪う。ペンを握る手を震わせながら、乱暴に署名を殴り書き、しっかりとこちらに見せつけてくる。「これで満足か、遥花? 役所には俺の方から出しといてやるよ。ほら、ついでにお前への“報酬”だ!」彼の
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第3章:過去の傷*悠真
ステアリンググループの後継者――それが俺の人生の全てだ。父の冷徹な目と、終わらない会議室の重圧の中で、俺はただ従うように育てられた。自分で選べたものは何一つない。好きな服も、友だちも、将来も。全部、父が決めた「帝王学」の一部だった。この豪華な邸宅も、ただの檻だ。遥花との結婚もそうだ。二年前、父が「ビジネスのため」と押し付けた政略結婚。彼女の養父母が大手取引先の物流系企業であるルミナスコーポレーションだと聞いた時、俺は素直に信じた。だが初めて会った夜、屈託のない笑顔を見せながら俺に身を委ねてきたその女性を抱きながら、かえって怖くなった。人は誰しも打算的に動くものだ。遥花もそんな人間に違いないと思ったのに、まるで裏表が無いように振舞う彼女を見ながら、「正体がつかめない女」だと怯えた。ひょっとしてこれは全部、遥花自身が仕組んだ罠じゃないのか? ルミナスコーポレーションも、2008年のリーマンショック以降、景気回復による物流需要と共に急成長した企業だと聞く。それ以前には名前も聞いたことのないような中小企業だったはずだ。叩き上げである養父母の企みもあるだろうが、それもすべて遥花の思惑で、俺を縛るための策略だったんじゃないのか? そう疑い続けて、俺は彼女に嫌悪と警戒を抱いてきた。「悠真……好きよ。あなたと一緒になれて良かった……。私の人生はすべて“借り物”だったわ。だけどあなたに出会えてようやく、ようやく私自身の人生を手に入れることができた。ずっと愛してる。いっぱい、いっぱい愛させて……」そう言われ、夜のベッドで情熱的に求められたこともあった。俺も男なら、誘われたなら応じてしまうのが性というものだ。正直、体の相性も悪くなかった。妻として愛せなくても、娼婦だと思えば最高の相手なのではないか。そんな考えが湧いては、醜悪な自分自身に嫌悪感を抱いたりもした。百合子が現れたのは、結婚して半年ほど経ったころだったろうか。転入してきた社員たちの研修で、「何か質問はありますか」と俺が尋ねた際、「はい!」と気持ちよい声を発して手を挙げた彼女の手首には、目立つような傷があった。今どき手首に傷のある女性なんて珍しくはない。ただ普通はリストバンドなどを巻いて隠しているものだ。確か、妻の遥花も巻いていたように思う。理由は知らない。ただ養父母の元でいろいろ厳しく躾けられたのもあるだろうし
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第4章:決意の代償*遥花
【2015年3月】前の客が吸ったのであろうタバコの香りが残る、安いビジネスホテルの窓から見える東京の街は、夜の光で冷たく輝いていた。こんなところに泊っているなんて悠真が知ったら、多少は気の毒に思ってくれただろうか。プチ家出の際も、贅沢はしなかった。冷たくされた腹いせに旦那の稼ぎで豪遊する妻も世の中にはいるようだが、それと同じことをするのは私のプライドが許さなかった。悠真に隠れて更新していたライフハック系ブログや、フリマアプリの収入ですべてまかなっていた。当然ながら、愛のない養父母の元へ帰るという選択肢は最初からなかった。今は悠真から渡された“報酬”でまとまったお金もあるが、すぐ手を出す気にはなれなかった――数日前のあの夜、悠真の冷たい瞳と百合子の影を背に、家を飛び出した私。スーツケース一つでこのホテルに身を寄せ、新居を探す日々を送っていた。双子を守るため、新しい人生を始めると決めたのだ。“報酬”は新生活の資金に充てたかった。だが同時に、心のどこかで、悠真への愛がまだ疼く。借り物の身分で縛られた私でも、彼を愛していたのは本当だった。彼から受け取ったお金に手を出せないでいるのは、まだ未練があるからかもしれない。それに、彼の言葉――「浅ましいよ、遥花」が、いまだに私の胸につっかえている。倹約も、その「浅ましい」という言葉を否定するための無駄な努力のように思えた。とにかく、この過渡期のような日々も、じきに終わる。新しい部屋を見つけたのだ。狭いアパートだが、双子と私の未来を築くには十分だ。翌日、契約のため、住民票を取りに区役所へ向かった。カウンターの職員が事務的な声で告げる。「道仲様――いえ、大道寺遥花様」と、いきなり旧姓で呼ばれて驚く。いや、旧姓はどちらだろう? 嫌な予感がした。「どうやらお伺いした内容と齟齬があり、あなたはまだ大道寺家の籍に入られたままのようです。離婚届、提出されてませんね」予感が的中し、心臓が止まりそうだった。悠真の怯えた瞳、最後の「離さないぞ」が頭をよぎる。あの言葉は、ただの気の迷いじゃなかったのか?それに「役所には俺の方から出しといてやる」と、彼の方が言ったのだ。そんな言葉を信じた私が浅はかだったのか。いずれにしても、私が動かなければこの借り物の婚姻関係は終わらない。双子の命を守るため、私はもう彼から独立すると決
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第5章:過去の記憶*悠真
【2015年5月】離婚から3ヶ月、俺の生活は空虚だ。ステアリングタワーの最上階に君臨する父の冷徹な目や、ガラス張りのオフィスでの会議の重圧に追われる日々。「後継者たれ」という父の命令や、書類の山、数字の羅列。それが俺のすべてとなった。俺の離婚報道は、ささやかながら世間を賑わせた。離婚のきっかけや原因は何だったのかという突撃の取材も電話で舞い込むようになり、社員達にはすべてシャットアウトするよう通達された。それでも「モラハラが原因か?」「夫の不倫か?」などの記事が書かれ、もしかして遥花や百合子が記者に情報を売ったのかと慌てて雑誌を買い漁り、読み込んだりもした。だが載っている情報はどれもデタラメで、記者の妄想の域を出ない話ばかり。SNSの反応を見ても、誰も信用してないようで胸をなでおろす。一方、ステアリンググループ企業の株価は、なぜか軒並み急騰したりもした。「総帥の息子が離婚したことで、グループとしても注目を浴びたんだろう」「これならどんどん入籍してもらって、どんどんバツを重ねてもらわないと」などと、株主たちの勝手なネットの書き込みを見ては、辟易とした。逆に遥花の養父母が経営するルミナスコーポレーションは、大きく株価を落とした。取引については離婚後も変わらず続けるという約束が交わされはしたが、その次の月には早速、出荷の枠が減らされていた。これを株価のせいだけと捉えてよいものか。会社と会社の関係性も、人間関係となんら変わることはない。信用を失えば希薄になっていくだけだ。父はさっそく、俺の次の婚姻先を考えているようだった。「心配するな。信用が絶たれたとしても、新たな信頼関係を築けば良いのだ」。珍しく優しい言葉をかけてくれながらも、太くて真っ白の眉毛は強張っていた。結局俺は、駒としか見られていなかった。また繰り返しだ。別の取引先と政略結婚が結ばれ、またグループの利益のためだけの、愛のない生活が始まる。遥花との生活の方がよほどマシだったと思うだろう。夜になると、遥花の涙が頭をよぎる。あの夜、俺は彼女を「浅ましい」と嘲り、銀行カードを投げた。妻だった女性にそんな態度を取ってしまったことが、自分でも信じられなくなる。「離婚しましょう」と突きつけられた声、去っていく彼女を乗せた車のテールランプ。それらの記憶が、いまだに胸を締め付けてくる。あの時の俺は、何かに憑りつかれ
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第6章:追憶の傷跡*悠真
カップの中のコーヒーは、すでに冷たくなっていた。カフェの個室で、百合子から打ち明けられた話を頭の中でまとめながら、ズズッとすする。「やっぱり、困っちゃいますよね……こんな大昔の話をされても」彼女の目が、俺の過去を覗き込むように光る。慌てて逸らし、個室のガラス窓越しに、冷たく輝く東京のビル群を見つめる。彼女が打ち明けたのは、俺が10歳のころに遭った、誘拐事件の話だった。思い出したくもなかった恐怖と絶望の過去。あのとき、俺の人生は終わっていてもおかしくなかった。それを助け出してくれたのが、一人の少女――当時まだ6歳の、佐野百合子だったというのだ。「もう少し、詳しく聞かせてくれないか――その、思い出せる範囲でいいし、辛くなるなら、途中でやめてもいい」百合子は頷く。「大丈夫ですよ。ぜんぶ覚えていますから……それにこれは、私にとっては大切な記憶でもありますから。その、不謹慎に思われたら申し訳ないですけど」俺は首を振る。感情なんてどうでもいい。今はただ、真実が知りたかった。「あの日実は、私も誘拐されて、別の部屋に閉じ込められていたんです」「――君も?」「ええ。驚かれるでしょうが、当時、私の父が経営するダスクコーポレーションは、ステアリンググループの過去の取引先だったんです。だけど、リーマンショック以降の投資の失敗で没落してしまって」ダスクコーポレーション。遥花の養父母が経営するルミナスコーポレーションは、リーマンショックのあとで急成長していた。一方でダスクは没落。ルミナスもダスクも、どちらも運輸で財を成したステアリンググループに関係する、物流関連の企業だ。業界の明暗を分けた二つの企業が、こんな形で俺の人生に絡むとは皮肉だ。「あの日、暗闇の中で、私は一人でした。手足を縛られ、冷たいコンクリートの床に座って、ただ震えていたんです」いつもは耳障りなくらい高めの百合子の声が、強く抑え付けたようにグッと低くなる。「でも、そのとき男の子の叫び声を聞きました。私だけじゃない、他にも誘拐された子がいる。助けなきゃと、不思議な気持ちが湧いたんです。自分よりも誰かのことを優先したいという気持ちに駆られたのは、ひょっとしたらあの時が初めてかもしれません」徐々に記憶が戻ってくる。叫んでも誰も来ない。喉が枯れ、飢えと恐怖が俺を蝕んだ。父の顔も、母の声も、頭から消えて、絶望
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第7章:笑顔の支え*遥花
【2015年8月】離婚から半年。お腹はかなり大きくなり、鏡を見るたび命の重みを痛感する。ハイリスク妊娠であることの不安は消えないが、医師の「ストレスを避けて」という言葉を守り、狭いアパートの部屋で静かな生活を心がけていた。生計は、ブログやフリマアプリの収入でなんとかして立っている。悠真の銀行カード――正式に離婚をしてからは、もう私の名義にも変更されてはいるものの、いまだ手つかずだ。あの屈辱の夜を思い出すと、ギリギリまで使う気になれなかった。彼の「浅ましい」という嘲笑や、百合子を抱きながら庇う姿……それらが、カードに手を出すたびに何度もチラつくのだ。それに離婚から数週間後、ルミナスコーポレーションの養父からLIINEでかかってきた通話の件もある。お前の離婚で信頼を失い、取引が減って株価が落ちた。ステアリンググループとの取引も減らさざるを得なくなった。新たな提携先を見つける必要があるが、どこの会社も取り合ってくれない。出てくるのはお前の離婚の話ばかりだ。お前のせいでこんなことになってる。責任を取れ――1時間近く、口やかましくいろいろ言われたが、まとめるとそんな内容だった。娘の離婚で、本人に向かって責任を取れなんて言う親がいるとは。いくら血がつながっていなくてもありえない。そもそも、株価の暴落は本当に私が関係しているのだろうか? 確かに離婚の件が週刊誌のネタになっているのは見かけたが、話題はたいして続かなかった。別に芸能人ほどの知名度があるわけでもないのだから。「一千万用意しろ」と、養父が具体的な金額を口にして怒鳴る。悠真から受け取った銀行の貯金額を思い出すと、用意できない額ではない。しかし、これは私と双子のために必要なお金だ。「もう駒にしないで!」私は、今まで養父に向かって叫んだこともないような強い口調で拒んだ。養父も呆気に取られたのか、何も言い返してこなくなった。そんなに怒鳴るとお腹の子にも障る気がしたが、通話を切ったあとはむしろすがすがしく、気持ちよく眠りに就けた。以降も何度か、養父か、時には養母から通話がかかってくることはあったが、完全に二人ともアカウントをブロックしてやった。もう彼らと話すことは何もない。ルミナスの株価は、ジリジリと下落し続けた。それが自然なことなのか、不自然なことなのか。経済というものはとにかく複雑なものだ。少なくとも、もう
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第8章:謎の封筒*香澄
遥花とは小学校からの幼馴染みで、高校までの腐れ縁だった。クラスでも、体育の列に並んだら一番前になるのは当たり前なくらい、背も低かった遥花。「ちっちゃくてカワイイ!」と思って、私が誰よりも先に友達申請したような記憶がある。「私、香澄っていうの! 遥花ちゃん、めっちゃかわいいね! お友達になろっ!」今でも思い出す。いくら子供だったとはいえ、よくもまぁそんな絵に描いたような陽キャな誘い方を出来たものだなと、当時の私に感心する。うん、偉いぞ香澄。遥花は血のつながらない両親と暮らし、とても厳しく躾けられているとかで、最初はなかなか心を開いてくれなかった。けれども私が多少強引にグイグイせまり、学校でも一緒に遊ぶようになって、ゆっくり、少しずつ仲良くなっていったと思う。他の友達にはなかなか心が開けず、「鋼の女王」だなんて異名を持っていたけど、私にとっては小動物みたいな? あるいはポヨポヨしたマスコットキャラみたいな愛らしさだった。そんな遥花が、いつの間にか結婚して、離婚して。だけどお腹に双子がいて、めっちゃお腹も大きくなって。大人になるって怖いことだ。けれど、凄いことだとも思う。離婚した直後の遥花と再会して、最初は「ここに子供がいるの」なんて言われてもぜんぜんピンとこなかったし。ちょっとだけポヨッとした感じのお腹が、小学生の頃の遥花の体型を思い出してカワイイなぁとすら思ってたんだけど。そのお腹もだんだん大きくなっていって、もう今では「ここに二人も入ってるんだ!」とわかるくらい。それと同時に、私の中でもだんだん不思議な愛おしさのようなものが感じられるようになっていった。ゲームに例えるなら、最初はヨワヨワで、ザコ敵にもすぐやられてたような主人公が、いつの間にか魔王と戦えるような強さに覚醒した感じ。まさに主人公! カッコイイ! って思える。でも同時に、「この人を絶対守らなきゃいけない」って、かけがえのないものになったとも感じている。魔王を倒せるのはこの人だけなんだ。だから、私がパーティの女剣士として? いや、魔法使い? 遊び人? ……わからないけど、とにかく支えてあげなきゃという強い意識が芽生えたのだ。特に離婚直後、遥花はあまり笑わなくなっていた。子宮の閉じる力が弱くて、ハイリスク妊娠だという話を聞いて、なのに支えてくれるハズのパートナーもいない。そりゃあストレスし
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第9章:遅れてきた青春*悠真
【2015年9月】定時はとうに過ぎてしまっていた。百合子から受け取ったLINEに従い、慌ててステアリングタワーを出ると、エントランスで待っている彼女を見つける。「待たせて悪かった……出る直前で、急に客先から電話がきてしまって……」「もう、悠真さんったら、謝らないでいいのに」百合子はクスリと笑う。「ぜんぜん待ってないわ。スマホで読書も英会話もゲームもできるし、ドラマの消化までできちゃうもの。それに私たち、もう付き合い始めて4ヶ月よ。気兼ねなんてする必要ないじゃない」“付き合い始めて4ヶ月”というワードにドキッとし、つい周りを見回してしまう。社員の誰かが聞いていなかっただろうか。俺たちが恋愛関係にあることは、ネットでも一部で妙な噂になっていた。今さら隠そうとしても手遅れだとは思うが、こう、百合子のように明け透けにするのもどうかと考えてしまう。「行きましょ、悠真さん。それとも……ダーリンって呼んだ方が良い?」「ダーリン……は、止めてくれ……ともかく、行こうか、百合子君……」「もう、照れ屋なんだから」俺の腕に捕まりながら彼女は言う。何やら今日は一段と甘えてくる。恋人同士になったのに、いまだに変な気恥ずかしさを感じてしまうのはなぜか。何やら、遅れてきた青春の中にいるような感覚だった。これまではグループの総帥である父に従って生きてきた。百合子と付き合うということは、それと反した行動だ。初めて俺は、自分の意志で一人の女性を好きになり、「恋人」という甘酸っぱい関係になっている。ただ、そういう風に女性と付き合ったことなど今までなかった俺は、百合子に導かれるままだ。今日はドライバーにも暇を出し、夜景がきらめく東京の街を、徒歩で予約していた高級フレンチレストランへ向かう。それを提案してきたのも百合子だった。道すがら、百合子が商業ビルのショーウィンドーを指さし、「見て!」と声を上げる。そこには純白のウェディングドレスが飾られている。「ねえ、悠真さん、私に似合うかな?」その笑顔を見て、彼女が真に求めているものを思い、生唾を飲んだ。百合子との関係を続ければ当然、結婚という話も出てくるだろう。しかし、総帥――あの父親が、ダスクコーポレーションという落ち目の企業の娘との婚姻を許してくれるわけがない。だが、彼女の希望に満ちた瞳を見ていると、やはり彼女こそ運命の女性だ
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第10章:父の影*悠真
ベッドの上で、俺と百合子は激しく互いを求め合った。百合子はこれまで、何人の男を抱いてきたのだろう。俺は完全に、彼女にリードされるがままだった。遥花との行為とはまるで違う。ぎこちない遥花も、俺との相性は良かった。ただ、俺と結ばれるまでは未経験だと言った。つまり“たまたま”合ったというだけだ。百合子はいくつものテクニックを知り尽くしているように思えた。俺のようなタイプの男だって、確実に喜ばす術をもっている。偶然の相性か、必然の相性か。コトに関して、二人の女性を比べるものではないのだろう。ただ、娼婦のようなものとして受け入れていた遥花よりも、運命を感じて共にいる百合子の方がよほど娼婦のように思えてしまうのも、なんともチグハグな話にも思えた。百合子を抱きながら、確実に俺の肉欲は彼女で上書きされていく。もはや遥花の喘ぎ声さえも思い出せなくなっていた。「ね、こんなこと、ホテルのスイートなんかじゃ遠慮しちゃってできないでしょう?」コトが終わった直後の、放心状態の俺に百合子が微笑みかける。まだまだ余裕そうな彼女の様子に、劣等感を覚えてしまう。“私が、あなたを強くする”と言われたのは、そういう意味ではないだろうと思いつつも、まだまだ強くならねばと思ってしまった。ふとベッドの上で百合子のスマホが光り、通知音が静寂を破る。「何だ?」と尋ねると、裸の彼女は、「仕事の連絡よ。明日返せばいいんだから、気にしないで」と答える。「まだ入社2年目なのに、順調にキャリアを積んでいるんだな……」素直に感心しながら言った。「そうなの。私、案外、ちゃんと仕事デキる女なのよ。すごいのはベッドだけじゃないんだから」自信満々の百合子。こうして俺との時間を作ってくれていることも、やはり感謝しなければならないんだろう。彼女こそ俺の光だ。“ねえ、悠真さん、私に似合うかな?”食事の前に、ショーウィンドーのウェディングドレスを見ながら言った百合子の、眩しい笑顔を思い出す。俺も覚悟を決めねばならない。自分の道は、自分で選ぶのだ。再び、百合子を抱きしめる。「キャッ……悠真? なぁに、またシたいの?」彼女の蠱惑的な笑みに、また俺の欲望が疼き出す。今夜は俺だって、積極的にいこう。再び俺は、百合子という大きな海の中に身を委ねた。※数日後、ステアリングタワーの最上階、父のオフィ
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