脅迫状が届いた日の翌日。連休のはずだったのに、警察に届け出を出したり、マンションのセキュリティにエントランスの監視カメラをチェックするよう依頼したり、朝から何かと大忙しだった。遥花は部屋で双子の面倒。ただ、生まれたばかりの双子のワンオペ育児は大変すぎるし、何より脅迫状が届いた翌日で「部屋で大人しく過ごしててね」なんて言えるはずない。「奥野。ちょっとベビーシッターやらない?」と、前日の夜から会社の若い男性社員に依頼をかけていた。奥野は双子が生まれた日に、私が遥花と同棲中であることをカミングアウトすることになった例のメンバーだ。“先輩、もう今日は早退しましょう。恋人さんのところに行かれてください! 上長には、僕から伝えておきますんで!”プログラミングの技術に関してはまだまだだが、芯の強いところがあるのを私は買っていた。当日も朝の8時ごろから来てくれた奥野に感謝をしつつ、念のため、釘は刺しておいた。「いい? 遥花が可愛いからって、変な色目使ったりしたら殺すからね」「そ、そんなことしませんって……! それに、お子さんいる前でそんなことできるわけないじゃないですか」「んあー、それもそっか。というわけで遥花、こいつのこと、パシリだと思って自由に使っていいから」「パ、パシリって……香澄、そんな……」遥花は遠慮がちに言ったが、「報酬はポケカの最新パック3つでどう?」「やります。やらせてください。遥花さん、焼きそばパンでも何でも買ってきますんで、何なりとお申しつけください」「……ね? こういうやつだから大丈夫」忠誠心に満ちた奥野を前に、遥花も、「あ、あはは……焼きそばパンより、チーズバーガーとかの方が良いかなぁ……」などと笑って返していた。 ※さて、あっという間に午後。私は中野にある雑居ビルに出向いた。エントランスにはいくつかの会社や事務所の名と共に、「T探偵事務所」の表札がある。「Googleマップで見た通り、ボロそうなビルだけど……ここの連中が私たちを脅迫したのかしら」「さぁな。あくまで仲介しただけということも考えられるが、ナメてかからない方が良いだろう」隣に立つのは、私よりも頭2つ分ほど身長差のある大男――熊谷将司だ。「まぁそうね。だからこそあなたに付き添ってもらってるんだけど、『bear』」と、ハッカーネー
Last Updated : 2025-11-05 Read more