All Chapters of 百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった: Chapter 41 - Chapter 50

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第41章:サンタの帽子と黒のレクサス*遥花

【2015年12月25日(金) 昼】時刻はお昼を回っているのに、香澄はまだ帰ってこない。蓮と菖蒲はベビーベッドで仲良く手足をバタつかせている。赤ちゃんってこうやって、自然に体の動かし方を覚えていくんだな。感心して二人を交互に見ながら、時折スマホもチラチラ見てしまう。「香澄、早く帰ってきて……」思わず呟くと、蓮が「うー!」と手をバタバタ。菖蒲も「きゃー!」と叫びながら真似するように体を動かす。まるで“香澄ママ、早く!”と言っているみたいで、思わず笑ってしまう。ふと、インターホンが鳴った。香澄は鍵を持ってるから鳴らさない。一瞬ドキッとするが、モニターに映った顔を見てホッとした。「奥野さん……今、開けますね」奥野さんを部屋に招くと、両手に買い物袋を提げ、息をハァハァさせながら言う。「いやぁ、僕も有給取っちゃいましたよ! パーティなんて久しぶりで、気合い入れすぎちゃって!」キッチンに袋をドサドサ置くと、中からローストビーフ用の肉塊、シャンパン、ケーキ、さらにはサンタの帽子まで出てきた。「奥野さん、これ、すごい量! 大人3人で食べきれるかな……」「えへへ、尊敬する遠藤先輩のご家族ですから! きっちり腕を震わせていただきます! 残ったらまぁ、休日用の作り置きにでも!」奥野さんはエプロン姿でキッチンに立つ。さすがは香澄の部下、驚くほど手際がいい。「ローストビーフは低温調理でじっくり! ケーキは後でデコります!」蓮と菖蒲もベッドの中で寝そべりながら、興味津々でキッチンを眺めている。菖蒲が「うー!」と手を伸ばしてグーパーしていると、奥野さんが「あら、手伝いたいのかな? 未来のシェフ!」とニコニコしている。時計は12時半。そろそろ授乳の時間だ。私は一瞬、いつものように「タンデム授乳やるから手伝って」と言いたくなったが、奥野さんは男性ゲストだ。さすがに授乳のサポートなんてお願いできない。それに「今からおっぱいあげますから、こっち見ないでください」と言うのも何だか失礼な気がした。ありがたいことに、向こうは料理を始めている。その間にパパッと済ませようと、まずは蓮を持ち上げてリビングまで運ぶ。一生懸命、母乳を吸う蓮。蓮も菖蒲も体重はほぼ同じだけれど、蓮の方がやはり力強く吸う気がしている。ついまじまじと見てしまうが、目元は何となく私にソックリな気がする。男の子は
last updateLast Updated : 2025-11-18
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第42章:防刃手袋とテニスボール*悠真

ステアリングタワーの重役室。大きな窓から見える東京は、完全にクリスマスカラーに染まっていた。ただ、妻も恋人もいない俺にとっては関係のない話だ。書類の整理をしていると、スマホに電話がかかってきた。相手はT探偵事務所。「もしもし……」「大道寺悠真! あなたの専属ドライバーは今どこにいるの!?」出ると、田中ではなく、若い女性の声が俺の耳を耳をつんざく。この声は……遥花の恋人、香澄か? 一体何なんだ、藪から棒に……と思いつつ、「俺の専属ドライバーがどうかしたのか? 彼なら今休暇を取っている」答えるなり、香澄はまたヒステリックに叫ぶ。「何ですって!? どうして今日に限って……!」「そりゃ、休む権利は誰だってあるだろう……例年のことだしな。クリスチャンだと言っていたから、讃美歌でも歌いに行くんじゃないか?」言いながら、あのほとんど会話らしい会話もマトモにできないような無口なあいつが讃美歌を? と想像し、つい笑ってしまったが、「何笑ってんのよ! こっちは一大事なんだから!」香澄に怒られた。「ああ、それはすま……いや、今のは俺が悪いのか? ちゃんと説明してくれ。一体、何があった? どうして俺の専属ドライバーの所在なんて……そもそも、君と彼とは面識もないんじゃないか?」通話の向こうから大きなため息が聞こえる。失礼な女だ。わけもわからないことを訊かれてため息を吐きたいのはこっちだと言うのに。だがその直後、彼女はもっとわけのわからないことを言い出したのだ。「あなたが探偵に依頼して突き止めた私たちの住所……情報提供した人物がわかったのよ。ネットに書き込んだやつ。それが、神崎一二三……あなたが専属ドライバーとして雇っている人物だったってワケ!」神崎一二三……ドライバーのあいつが? なんであいつが、遥花の住処を知っていたんだ?「それは本当なのか? どうやって調べた?」「あのね……いちいち経緯まで説明しなきゃいけないの? ともかく、そいつが今休暇を取ってるって言うなら、もしかしたら遥花のことをストーキングしてるかもしれないわ」神崎が遥花のストーキングを……だめだ、信じられない話ばかりでついていけない。「遥花は今、どこだ?」「マンションよ。双子の面倒を見ているはず」「なんだ、外ではないんだな……」部屋の中なら安心だ。そう思ってホッとしかけたが、「そ
last updateLast Updated : 2025-11-19
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第43章:パーティの匂いと忍び寄る影*香澄

【2015年12月25日(金) 夕方】マンションに戻ると、部屋はすっかりクリスマスの匂いに包まれていた。奥野が張り切って焼いたローストビーフの香ばしい煙と、温め直したチキンソテーのバター香。生クリームたっぷりのケーキと、シャンパンの泡の音。蓮と菖蒲は小さなサンタ帽をかぶせられ、赤いクリスマススタイ(よだれかけ)を着て「うー!」「きゃー!」と大はしゃぎだ。「ただいまー! 遅くなってごめん!」玄関で靴を脱ぐなり、遥花が飛びついてきた。いつもより強く抱きしめ返し、耳元で囁く。「大丈夫? 怖かったよね」「……うん。でも香澄が帰ってきてくれたから、もう平気」遥花の震えが少しずつ収まっていくのを感じて、胸を撫で下ろす。奥野はキッチンで「先輩、おかえりっす!」と手を振ってくれたけど、まだ事情は話せていない。きっと遥花からも、何も説明できなかったに違いない。朝イチでT探偵事務所に乗り込んで得られた衝撃の事実……探偵に遥花の情報を横流しした神崎一二三は、大道寺悠真の専属ドライバーだった。しかも今日、遥花がマンション前で目撃したという黒のレクサスは、神崎が乗り回す車種とも一致していたそう。雇用主の悠真本人にも確認したが、神崎は休みを取っていて連絡が取れない。悠真のすぐそばにいる人間が私たちを監視していたのは事実。そして神崎が脅迫状を送ってきた本人である可能性が高い。 一応、遥花の元夫である悠真自身が脅迫犯ではないかという疑いもかけたが、電話で会話した限りではシロと見て良さそうだ。むしろ彼は子供の養育費などの工面まで考えていたが、そこは遥花の意向で断りを入れたところだ。別れた元夫になんて、助は乞わない。私も遥花も、彼とは今後も無関係でいくつもりだ。「それで、香澄……どうするの?」遥花が小声で聞いてくる。私はサンタ帽をかぶった蓮の頬をつつきながら、できるだけ明るい声で答えた。「今夜はまずパーティ楽しもう。奥野も来てくれてるし、犯人が本当に今夜動くなら、むしろチャンス。人数が多い方が安全でしょ?」「……でも、無関係な奥野さんまで巻きこんじゃって……」「それは私も申し訳なく思ってたけど……一先ず、できる限りの準備はしてあるから」私はバッグから、帰る途中でホームセンターで買い揃えたものをそっと取り出す。黒いビニールテープ、結束バンド、玄関ドア用の補助ロック(二重
last updateLast Updated : 2025-11-20
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第44章:鍵と蹴り*悠真

遥花から助けを求められていないことは、100%わかっていた。それでも俺は阿左美に背中を押される形で、遥花と香澄のマンションまで向かった。車の運転席に座る佐伯は無表情のままハンドルを握り、バックミラー越しに一度だけ俺を見た。「悠真様、本当によろしいのですか……あのような形でお別れになった元奥様と、このような形で会いに行かれるなど……」「黙って運転しろ」それ以上は佐伯も、何も言わなかった。普段通り、機械のように黙々と指示された仕事をこなす。マンションの前に着くと案の定、黒のレクサスが停まっていた。神崎の車……か? 確信は持てなかった。ナンバープレートを確認しようとしても、番号なんて覚えているわけがない。神崎の車になら何百回と乗っているはずなのに、一度も意識したことがなかったのだ。そもそも俺は神崎のことを、まるで知らなかった。名前すら、最近まで「ドライバー」としか呼んでいなかった男だ。反省している場合じゃない。俺は車を降り、マンションに近づいた。佐伯はエンジンをかけたまま待機してもらう。持っているのは、阿左美に言われた三種の神器――テニスボール、ポリ袋、防刃手袋。どれも意味がわからないが、持っているだけで少しだけ落ち着く。まるで子供がお守りを握りしめているような気分だ。オートロックのエントランスの前で立ち尽くす。インターホンを押す勇気はない。遥花が出たら、どう顔をすればいい? 香澄が出たら、もっと最悪だ。どうやって中に入るか……。考えてあぐねていると、突然、後ろからゾロゾロと人が押し寄せてきた。「さて、やって参りました! こちらの物件、お値段いくら!?」マイク、カメラ、三脚を抱えた十数人の集団が、まるでロケバスから吐き出されたようにマンションに雪崩れ込んでいく。テレビクルー? 俺は反射的に後ずさったが、「おお、買ってきてくれたかテニスボール! 早かったな。早く渡せ」突然、カメラマンに腕を掴まれる。抗議する間もなく、俺が持っていたテニスボールが奪い取られた。一瞬でカッターで切り裂かれ、中の空気も抜けてペシャンコになる。「にしても、いくら出演アイドルのスキャンダルが出たからって、わざわざこんな夜に撮り直すこともないのにな……」「まぁ、時期が時期ですしね……にしても、ディレクターの事務所があるマンションを借りるなんて! いくらロケ地が抑えられ
last updateLast Updated : 2025-11-21
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第45章:裏切りの仮面*悠真

ポリ袋を頭にかぶったまま、抵抗を続ける神崎。 「ぐっ……あぁっ……!」 明らかに苦しそうな声を上げる。と、マンションの中からもう一人、見知らぬ男が出てきた。 「僕が手足を抑えます! あんまりやり過ぎない方がいいです、死んでしまいます!」 「……お前、誰だ⁉」 「奥野です! 遠藤先輩の、職場の後輩です!」 こんな状況でも礼儀正しく自己紹介する男、奥野。もちろん有言実行で、神崎の両手は抑えつけている。 「はいっ、これで縛り付けて!」 と、香澄から何かを渡された。結束バンドとビニールテープだ。なかなか用意周到……いや感心している場合ではない。俺と奥野で、テキパキと神崎を縛った。 やがて、ガックリと力を無くす神崎。 「えっ……死んだ⁉」 「いや、失神してるだけです。とりあえず、顔の袋は外しましょう」 奥野から言われるまま、恐る恐るポリ袋を外す。その下から出てきたのは、目が血走り、泡を吹いている神崎だ。予想が的中した。俺を裏切り、遥花たちを脅かしていたのは、やはり長年俺のすぐそばにいたこの男……やるせなさが胸を締めつける。間違いであって欲しかった。 「悠真……一体、どうやって入ってきたの?」 震える声で遥花が尋ねる。俺は言葉を濁した。 「それは……まぁ、いいじゃないか」 偶然やってきたテレビクルーに、テニスボールを渡すことで得られた鍵で……なんて、いま話しても信じてもらえないだろうし、混乱を与えるだけだ。 香澄は不満そうな顔をしながらも、震える声で言った。 「助けは要らないなんて言ったけど……助かったわ。ありがとう」 俺は首を振る。 「礼には及ばんさ。むしろ、俺のせいで君たちにこんな危険が及んでいるんだと思う。すまなかった」 俺の謝罪に、遥花は怯えた声で言った。 「やっぱり、大道寺家の子供を私が産んだから、こんなことになってるのね……? 神崎さんも、どうしてこんなことを?」 俺は、のびている神崎を見ながら答えた。 「俺もうまく説明できない……だが、俺をハメた女に言われたんだ。百合子さ。俺のことを狙っている“組織”がいると。少なくとも俺は……そしてステアリンググループは、そういう脅威にさらされている」 言葉を失っている遥花と香澄。俺は続けた。 「こいつの犯行も、こいつ単独じゃ
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第46章:大晦日の亡霊*悠真

【2015年12月31日(木)】屋敷のリビングは、暖炉の火も消えて冷えきっていた。俺は缶ビールを片手に、ソファに沈み込んでいる。もう紅白も終わり、NHKでは『ゆく年くる年』を放送している。あと10分で新年だそうだが、どうでもいい。缶ビールをもう一本開けようとしたとき、スマホが鳴った。画面に表示されたのは、末継阿左美のLINEだ。彼女の方から一体、何の用だ?ため息をつきながら、通話ボタンを押す。「悠真さん? 今一人ですか?」「ああ、一人だ」「よかったら一緒に初詣行きません?」「何で俺とお前が」「どうせ部屋でテレビでも見ながら、ビール飲んでたんでしょ」図星だ。俺は苦笑いしながら、ソファに深くもたれかかった。「わかった、付き合ってやる……と言いたいところだが、生憎、足が無いんだ。ドライバーは例の事件で捕まったし、秘書の佐伯もさすがに年末年始は休暇を取ってる」「えー、つまんない……あ、じゃあ、年明けまでダベってましょうよ」「何で俺が女子大生なんかと……」「あ、いま馬鹿にしましたけど、これでも一度、お見合いした仲ですよね。それに悠真さんだって、私のことをちょいちょい頼ってくるくせに」……そう言われたら、言い返せない。「わかったよ……ただ、一応、気になってることを聞いておくぞ。お前、前に言ったよな? お前に予知能力はない、霊感があるだけだって。どうして霊感でそこまで読めるようになった。それに……この間のクリスマスだって」「ああ、役に立ったでしょう? テニスボールとポリ袋。防刃手袋は……むしろ無くても困らなかったようですけど。まぁ、備えあれば憂いなしってやつですね」「確かに役に立ったが……もう未来予知レベルじゃないか。何なんだ」阿左美は、少し間を置いて、静かに言った。「それは私の力じゃありません。百合子さんですよ」……百合子。俺は缶ビールをテーブルに置いた。手が震えていた。「先日、ようやくニュースが出ましたよね。ほら、長野の……」クリスマスの夜の、あの事件の直後のことだ。長野の山奥で発見された、とある女性の遺体が、佐野百合子のものであることが判明したというニュースが流れた。“遭難事故”。……事件はそう処理されたが、俺にはそれが“組織”の口封じに見えて仕方ない。「本当に事故で死んだのか、それとも裏があるのか。悠真さんも薄々わかってる
last updateLast Updated : 2025-11-23
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第47章・亀の夢と新年の涙*遥花

【2016年1月1日(金) 朝】朝の光がカーテンの隙間から差し込み、心が裂かれるように冷たく苦しい夢を溶かした。目を覚ますと、愛しい顔がそこにあった。香澄、私の恋人。そしてベビーベッドには、愛らしい双子の寝顔。こんなにも幸せな朝を――新年を迎えられるのに、見た夢の恐ろしさで心臓がドキドキ脈打っている。香澄と双子が何処かへ行ってしまう、恐ろしい夢だった。行かないでと声を張り上げるのに、みんな、私からどんどん遠ざかっていく。一人にしないで、置いていかないで……。大丈夫、みんな夢だ。まだ、クリスマスの恐ろしい出来事の記憶が残っている。脅迫犯となった神崎さんの、恐ろしい声。顔は見覚えがあるのに、全く別人のようだった。助けに来てくれた悠真も、ある意味では別人のようではあった。自分の身の危険も顧みず、あんな風に勇敢に挑むなんて。香澄は、あれは自作自演だと言ったけれど。それにしてはやり過ぎているようにしか思えない。神崎さんはあの後、警察に連行された。悠真も事情聴取のため同行することになった。私と香澄、奥野さんは、その場でいくつか質問されるだけで済んだ。前々から謎の脅迫状が届いていたこと、昼間も彼の車と思しきレクサスがマンションの近くに停まっていたことも。神崎さんの犯行理由については、まだ何もわかっていない。警察も取り調べ中だが、何も話さないのだそう。“とりあえず例のホテルまで向かいますが、それでよろしいですか?”2月に、悠真との離婚を決意して屋敷を飛び出した日も、何も言わない私にそう言い、屋敷から連れ出してくれた。あの屋敷で最後に触れた人の温かさが、神崎さんだったと思っている。香澄が探偵事務所で聞いた話によれば、妹の治療にお金が必要だったらしいが、そもそも神崎さんにそんな妹さんがいたのも知らなかった。思えば私は、あの屋敷にいた人たちのことを何も知らない。自分が悠真に愛されたいという気持ちでいっぱいで、とても周りの人たちのことを気に掛ける余裕はなかったのだと思う。そして悠真も。彼の当時の気持ちは? そして今の気持ちはどうなのだろうか。私自身、一方的に愛を押し付けるばかりになっていたのではないか。再びクリスマスの夜。警察に事情聴取を言い渡され、「じゃあ、ちょっと言ってくる」と行きかけた悠真を、私は呼び止めた。「待って……悠真、まだ、双子に会っていないでしょう
last updateLast Updated : 2025-11-24
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第48章・定期便と消えた共犯者*香澄

【2016年1月1日(金) 昼】買ったばかりのベビーカーに蓮と菖蒲を乗せて、近所の小さな神社に参る。本当は浅草寺とか、もっと賑わってるところにも行きたいけれど、乳幼児を連れていきなりそんなところに行くのはハードルが高すぎる気がした。パンパン、と手を叩いて遥花と一緒にお祈り。「何を願ったの?」と、私。「……言わないよ。言ったら叶わないんじゃなかったっけ」と、遥花。「なにそれ! 高校生のときみたいなこと言って……」「ふふふ、覚えてたんだ。もう忘れてたかと思った」遥花が笑う。忘れるわけない。高校生の頃、一度だけ遥花と一緒に神社へ行ったことがある。育ての親が厳しくて、なかなか友達と外出なんて許してくれなかったのに、そのときはたまたま出られたのだ。何やら大きな取引があるとかで、養父母が共に出かけているタイミングだったような気がする。そんな日でも、友達と外出することに遥花は最初ためらっていたが、“良いじゃん、バレないって。バレたところで、もう高校生なんだから。友達と遊びに行くのだって変じゃないって、堂々としてれば良いのよ”そう言って、私が遥花を連れ出したのだ。「あの時も何をお祈りしたか教えてくれなかったけど、何だったの?」今なら答えが聞けるような気がして、ふと質問する「それは……言っていいか、もう叶っちゃったんだし」「えっ、いいじゃんいいじゃん! 聞きたい!」「それは……ね。今みたいに、仲の良い、素敵な家族を持つこと」頬を染めて、遥花が言う。なんて可愛らしいんだろう。胸の奥がむずむずしてくる。「なにそれ、めっちゃ嬉しいんだけど……それってつまり、私が遥花の夢を叶えたってこと?」「うん、そうかな。半分は」えっ、半分? 一瞬、ドキッとした。「半分ってことは、もう半分は……」「ふふ、私自身、かな」プッ、つい笑ってしまう。「ああ、そういうことか、私はてっきり……」「ん? てっきり、って?」……と、ストップ。多分、ちょっと空気読めないこと言いそうになってる。「いや、まぁ、“半分”なんて言われて、私が力不足って思われてるのかなー……なんて、ね!」「えー、そんなことないよ。素敵なもう一人のママだよ、蓮と菖蒲の」「そ、それなら良かった」もう半分は、大道寺悠真――そんな風に答えられるんじゃないかと、正直、怖かった。先日のクリスマス、
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第49章・押し入れの甥と珈琲ジェリー*香澄

【2016年1月1日(金) 夕方】「はーい、できたよ遥花」蓮に授乳中の遥花へお雑煮を持っていく。「ありがとう。すっごいおいしそう!」「おいしそう、じゃなくて、すっごい美味しいんだから! でも“あちあち”だから、ちょこっとだけ“ふぅふぅ”して食べてね」そう注意すると、何やら遥花がニヤニヤしながらこっちを見ている。「……うん? なぁに?」「だって香澄、“あちあち”とか“ふぅふぅ”とか……私にまで赤ちゃん言葉使っちゃって」そう指摘されると、何やら気恥ずかしくなってしまう。「ほんとだ……すっかりママみたいだね」「みたい、じゃなくて、もう立派なママだよ、香澄も」おっ、言い返してきたな。「あー、それなら私も母乳出たらいいのになー。蓮や菖蒲にあげてみたい」「ええ、出るのも大変だよ……なかなか止まらないでボタボタで続けちゃうこともあるし」「ボタボタになったら遥花に飲ませるし! 遥花がそうなったときも、私が飲むからすぐ言って!」「ちょっ、ヘンタイじゃん!」「なぁに、ヘンタイ好きでしょ? 遥花お嬢様だって」「やぁだ! 嫌いじゃないけど恥ずかしいよぉ!」「恥ずかしがってる遥花もかわいいぞぉ」と、頬をツンツンしてやると、遥花は蓮を盾のようにして私に突き出してきた。「おむつ! 罰として、交換よろしく! 私はお雑煮を食べるっ!」「はいはーい、喜んでぇ! お雑煮、大きめのお餅入れといたから、喉詰まらせないよう気を付けてね~」蓮を運んで、おむつ交換を始める。プンプン怒った“フリ”をしながらお雑煮を食べ始める遥花。大変だけど、幸せな時間だ。こんな幸せな時間を、ずっとずっと続けなくては。※【2015年12月28日(月)】「まさか恋敵に助けられちまった、か」また中野のコメダでシロノワールをつつき合う私とbear。「そう……悔しいけど、大道寺悠真が来てなかったら私、もうこの世にいなかったかも」「警察より先に俺を呼ぶべきだったな。ムチャをするからだ」「そんな、せっかく彼氏とのクリスマスデート楽しんでるところでいきなり呼び出すなんて、忍びないよ」「デートのせいで大切な友人に死なれても困る。化けて出られるかもしれんし。それに、俺の彼氏は寛容だ。デート中でも仲間のピンチに駆けつける方が、男らしくて好きだと言ってくれたぞ」「そうなんだ? じゃあ、彼とのシ
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第50章・午前0時の嘘*香澄

【2016年1月1日(金) 夜】せっかくの正月休み。でも、子育てしてると時間があっという間だ。蓮と菖蒲、生まれたころは合わせてピッタリ3,000gだったが、もう蓮だけで約3,500g前後、菖蒲は約3,200gという重さまで育っていた。「生まれたのが10月だから、生後3ヶ月って考えたらだいぶ小さいけど……あの頃の倍以上のサイズって考えたらすごいよね」ベビーバスで蓮の頭を洗いながら言う。蓮は気持ちいいのか、目を細めている。もうそのまま寝落ちしてしまいそうだな。菖蒲の方は、ちょうどいま母乳を飲み終わったところで、遥花が背中をさすってげっぷを促していた。今日も双子は、昼間さんざん泣いた。泣くのが彼らの仕事だ。毎回お腹が空いたのか、おむつなのか、泣き方でなんとなくわかるような気もしてきたと思ったら、時にはそのどちらでもなくて、なんで泣いてるのかわからない。「双子だから同時に構ってあげられないし、嫉妬したりして泣いちゃうときもるんじゃないかな」と私。「ええ、まだ早くない? まだ目も見えてるかどうかって感じだけど」と遥花。「それならテレパシーで……“あっ、いま蓮兄ちゃんが構ってもらってるな! 菖蒲の甘えん坊ビーム食らえ!”なんて思ってるかもよ」「あはは、まだヒーロー設定続いてたんだ」「設定じゃないよ! 正真正銘のヒーローなんだもんねー。菖蒲はその美貌で、敵を惑わすの!」「じゃあ蓮は? 何の能力?」「蓮はマイペースだからなぁ。よく眠るし……眠りの能力? ハッ、もしかして、“睡拳”の使い手だったりして……!」「“酔拳”って、酒に酔えば酔うほど強くなるやつじゃなかったっけ?」「寝れば寝るほど強くなる“睡拳”もあるよ! 『スリーピング・モンキー/睡拳』って、1979年の台湾・香港映画ね」「あるんだ! マニアック……って、そもそも誰と戦うの!?」「それはもちろん、世界の平和を脅かすような巨悪達よ! 例えば……」と、本来ならここでアニメのキャラなんかを答えるところなんだけど。急に、クリスマスの夜に私たちを襲撃に来た神崎とかいう男の姿が頭にチラつく。遥花と目を合わせながらも急に黙りこくってしまう私を見て、何かを察した遥花が言う。「ん、どうしたの?」「あ、うん……なんでもない! さあ、蓮、もうお風呂から出て、“ねんね”するよー」蓮をベビーバスから出し
last updateLast Updated : 2025-11-28
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