逸斗の心の中には、やはりほんのわずかな罪悪感があった。だからもう一通メッセージを送った。【分かった。補償が欲しいなら、遠慮なく言え】そのメッセージを送ると、水紀はすぐに返信してきた。【まだ考えがまとまっていないの。思いついたら改めて伝えてもいい?】逸斗は舌打ちした。【好きにしろ】彼はスマホを置き、会場の正門へ視線を向けた。そろそろビジネスフォーラムが始まる頃だろうか。今あの中にいるのは、各国の名だたる企業代表、財界の大物、著名な専門家ばかり……そして自分の兄も、その中にいる。自分も秦氏グループの代表としてビジネスフォーラムに参加できるのではないかと、一度父に探りを入れたことはあった。だが父はただ冷笑し、自分を見る目には軽蔑の色が浮かんでいた。――やはり父にとって、自分は兄や姉には永遠に及ばない存在なのだ。……今回の大型ビジネスフォーラムは三日間続く。初日は午後四時に無事終了した。何人かの外国人実業家が正修に声をかけに来たため、奈穂は少し息苦しくなり、先に会場を出た。彼女は、北斗の視線がずっとついてくるのを感じていた。だが今、北斗は潜在的な提携相手となる外国企業の社長と話し込んでおり、追いかけてくることはできなかった。会場入口まで来ると、背の高い若い男が前方で電話をしているのが目に入った。特に気にせず一瞥しただけだったが、ちょうどその時、男が通話を終え、振り向いた拍子に彼女と視線がぶつかった。奈穂はすぐに彼を認識した。秦氏グループ会長の長男、秦烈生(はた れお)。さきほどのビジネスフォーラムでも烈生の席は近く、着席の際には軽く会釈もしてきた。「水戸社長」烈生が先に声をかけた。「秦社長」奈穂は微笑んだ。「今日のご講演、とても素晴らしかったです」主催側は今日、烈生に講演を依頼していた。彼の提示する観点や理念は確かに優れており、奈穂も思わず感心したほどだった。しかも彼女は気づいていた。彼は前に紙を置いてはいたが、一度も視線を落とさず、実質的に原稿なしで話していた。「ありがとうございます」烈生は丁寧に礼を述べた。二人は事業に関する話題をいくつか交わした。烈生は終始礼儀正しく、落ち着いていて、成熟した男の雰囲気を漂わせていた。――同じ兄弟なのに、烈生と逸斗はどうしてこうも天地ほど
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