《離婚して、今さら愛してると言われても》全部章節:第 141 章 - 第 150 章

164 章節

141.後悔

奏多side「遥は……麗華の言っていたことを本気で信じていたというのか?」弱々しく呟いた俺に、東宮俊はこちらに冷めた瞳を向けたまま、ゆっくりと口を開いた。「ああ、そうだ……。遥が濡れ衣を着せられた際、逆上するあなたに対して遥が『二人の子どもなのか?』と震えながら尋ねたら、あなたは何も答えず反論もしなかったそうじゃないか。それで肯定だと思ったそうだ」 「それは……っ」言葉が喉に詰まる。あの時、俺は「そんなバカな質問をするな」と思い、遥の言葉を相手にせずに切り捨てた。俺にとっての妻は遥だけであり、子どもができるとしたら遥との間だけだ。遥自身もそれを分かっているはずだと勝手に思い込み、あえて言葉を交わさなかった。……まさか、そのことがこれほどまでの致命的な誤解を生むとは想像すらしていなかった。「遥は、麗華が俺の子どもを身籠ったと信じ込み、その絶望の中で離婚を決意したというのか?」頭を抱え込み、俺は過去の記憶を遡る。胸を刺すのは、やり場のない後悔と取り返しのつかない罪悪感ばかりだ。「……まさか、そんなこと……ありえない。住吉家が星野家に対して頭が上がらない事情を、遥も理解していたはずだ。俺がビ
last update最後更新 : 2026-06-02
閱讀更多

142.スキャンダルの真相

奏多side「ところで、この六年前の遥と君のスキャンダルだけど……これも星野さんが仕組んだことなのか?」東宮が、床に崩れ落ちたまま取り乱す麗華を全く気にする様子もなく淡々と問いかけると、麗華はその瞳を暗闇で獲物を狙う猫のように鋭く光らせ睨んでいた。「はぁ……? 何を言っているのよ。私がそんなことをして何の得になるっていうの。私は奏多と結婚して、一緒になりたかったのよ。……なのに、このスキャンダルのせいで、私の未来はすべて台無しになったの! ……だから私は、あの女が憎くて憎くてたまらなかったのよ!」麗華は、もう甘えるような猫なで声も、か弱く見せる演技も完全に捨て去っていた。乱暴な口調と剥き出しの敵意――――。長年、俺の前では仮面を被り、演じられていた姿を見てきたが、本来の毒を含んだ姿を、俺は今、初めて目の当たりにしたのだ。「……その口調からすると、スキャンダルの件については本当に関与していなさそうですね。でも、あなたの言葉だけでは信じられません。私の方で徹底的に調べ上げます。もし、その時あなたの名前が少しでも挙がったら……その時は、東宮の総力を挙げてあなたのすべてを徹底的に潰しますので、覚悟していてください」 「……しつこいわね! そんなこと言われなくても、私は何もしていないわ!」
last update最後更新 : 2026-06-03
閱讀更多

143.残骸

奏多side五十嵐工業の製造事業売却は契約書が決定打となり、一か月後には東宮グループへと完全に引き渡されることとなった。東宮グループは、麗華を代表から退かせると、五十嵐元社長を代表に復帰させた。長年現場を支えてきた従業員たちは歓喜し、引き続き従事したいと即答したそうだ。さらに、住吉から麗華を補佐するために異動させていた幹部候補たちまでもが、東宮グループの傘下で働くことを熱望し、住吉商事には一斉に退職願が提出された。(事業も、そして俺が育てようとした優秀な人材もすべて東宮に奪われてしまったというわけか……。残ったのは、俺を慕ってくれていた数名の部下と、問題山積みの仮想通貨事業、そして……すべての元凶である麗華だけか)何を勘違いしていたのか、麗華は「事業買収イコール、東宮が自分という人間も引き取ってくれる」と本気で信じ込んでいたようだ。会社を私物化し、自分こそがその主であると誤解していた彼女にとって、東宮側の対応は理解し難いものだったに違いない。  冷静な東宮側は、不要な仮想通貨事業と麗華を五十嵐工業にそのまま残し、事業を回すために不可欠な人材だけを引き抜いた。東宮は、俺と同じように本社から優秀なブレーンを派遣し、五十嵐社長を支えながら、次期後継者の育成へと舵を切るそうだ。「……すべて、東宮俊の計算通りだったというわけか」社長室の窓から沈みゆく夕日を眺めながら呟くと、秘書の
last update最後更新 : 2026-06-04
閱讀更多

144.決別

奏多side「奏多君、五十嵐工業の事業譲渡の件を麗華から聞いたよ。なんでも、あの敷地の九割以上が製造事業に使用するための施設で、麗華は追い出されてしまったそうじゃないか。新しいオフィスはもちろん、相応の待遇は用意してくれるんだろうね?」星野会長は、俺が麗華の面倒を見るのが「当然の義務」であるかのように言い放った。この場にいる全員が、五十嵐工業とを住吉が拾い、麗華という腫れ物に新しい居場所を与えるのが自然な流れだと信じて疑っていない。「その件ですが、今回はこのような事態を招いてしまい、誠に申し訳ございませんでした。今回の件は、私の監督不行き届きであると同時に麗華さんが推し進めたい事業と住吉商事が考える企業方針との決定的なズレが生じた結果だと思っています。」「ああ……、まあ、それは……過ぎてしまったことは仕方がない」形式的な謝罪を口にすると、星野会長は少し拍子抜けしたように言葉を濁した。事態が発覚して以降、麗華は一度も謝罪をしていない。本来なら独断専行で会社を傾けた彼女に非があるのは明らかだが、彼らはその責任をすべて俺になすりつけることで、星野家の体面を保とうと画策しているのだ。「しかしながら、会社の事業転換には私の意見だけでなく、株主や幹部クラスの承認も不可欠です。現状、麗華さんが抱く構想を住吉で進めることは、組織の方針という観点からも極めて困難です。…………そのことから、麗華さんが自らの権限で判断・決定が下せるよう、五十嵐工業を住吉の
last update最後更新 : 2026-06-05
閱讀更多

145.囁き

奏多side「突然のお電話、申し訳ございません。住吉商事代表の住吉奏多です。実は、直接お会いしてお話ししたいことがあり、お電話させていただきました」鳴り続ける呼び出し音に心臓が早鐘を打っていた。数秒の沈黙の後、電話の主は怪訝そうな声で短く応じた。「……話? 私にですか? 一体、住吉社長が私にどんな用件があるというのでしょう」電話の主は、数秒の沈黙の後に怪訝そうな声で短く答えた。なぜ、自分に電話を掛けてきたのか不審がっている様子も伺える。「実は先日、御社代表である東宮俊社長とお会いしました。その際、星野麗華の過去や一連の騒動について伺い、改めて東宮社長と話をしたいと思ったのです」 「それなら、私ではなく東宮本人に連絡をすればいいのでは……?」状況を察した電話主が、敢えて皮肉を言っていることは分かっている。しかし、ここで逆上したりしては話が流れてしまう。過剰に反応せず、できる限り低姿勢で言葉を紡ぎ、丁重に伺いを立てた。「仰る通り、直接電話をするのが一番ですが、生憎、東宮社長の連絡先を知りません。ですので……」「取り次いで欲しいというわけですか。なるほど、私の連絡先は五十嵐工業の監
last update最後更新 : 2026-06-06
閱讀更多

146.プロポーズ

遥side「ねえ、直人? 昼間のことなんだけど、オフィスで急に抱き寄せてくるなんて……本当に驚いたわ。何かあったの?」会議にいくために直人に声を掛けると、いつもなら返事をするだけの直人が部屋に入ってくるように手招きをした。資料の確認や会議で発言する内容の相談かと思って近づくと、直人は椅子から立ち上がると私を力強く抱き寄せた。直人は。私の首元に軽く唇を当てて小さく這わせている。付き合ってからしばらく経つが、壁を隔てているとはいえ、社員が隣にいる時にこんなスキンシップを取ってくることは初めてだった。「ごめん。驚かせたね。……でも、こうして公私ともに遥が隣にいてくれることが本当に嬉しいと思ったんだ。遥は、俺にとってかけがえのない最高のパートナーだよ。いつも、支えてくれてありがとう」「……それは私も一緒よ。直人が側にいてくれるから頑張ろうと思えるし、こんなにも大きな成功を収めることが出来たのよ。本当に心強いし頼りにしているわ」私が微笑みかけると、いつもなら優しく目尻を下げて微笑み返してくれる直人が、今日はじっと私を見つめている。その瞳に宿る真剣な光に、私も言葉を失い逸らすこともできずにただ見つめ合っていた。「……遥。結婚しないか?」「えっ…&h
last update最後更新 : 2026-06-07
閱讀更多

147.真相①

遥side直人からプロポーズをされた翌日、私たちは俊に呼ばれ、社長室へと向かった。エレベーターを待っていると隣にいた直人が何気なく私に話しかけて来た。「俊さんから突然の呼び出しなんて珍しいね。一体、どんな内容なんだろう。……遥、何か聞いている?」 「いいえ……このところ、俊とも夜の時間がすれ違っていて、ゆっくり話す機会がなかったの。だから、私もさっぱり……」普段から家では花蓮が中心の生活で込み入った仕事の話は避けていて。顔を合わせても挨拶や花蓮の幼稚舎や習い事の話ばかりだ。俊としっかり言葉を交わしたのは、麗華と社長室で鉢合わせした日以来かもしれない。それだけに、今日の呼び出しは、どこか胸の奥が重く沈んでいた。(何の用事があって呼ばれたんだろう……。もしかして、また麗華絡みの話題かしら……)社長室の扉をノックして中に入ると、俊は執務机ではなく、来客用のソファに座って私たちを待ち構えていた。その表情は驚くほど柔らかく、心なしかこの前よりも晴れやかで、明るい光を宿しているように見えた。「急に呼び出してすまなかったね。実は、今日は二人にどうしても聞いてもらいたい大事な話があってね。そこに座ってくれるかな」 「大
last update最後更新 : 2026-06-08
閱讀更多

148.真相②

遥side「この前、彼女から遥が住吉奏多と結婚した理由について、そして、彼女が妊娠中に遥が流産させようとしたという話を聞いたと言うことは話したよね。その時、大事な家族を犯罪者呼ばわりされて非常に腹が立ったんだ。だから言い逃れができないよう徹底的に調べ上げ、追い詰めようと思った」俊の淡々とした説明に胸が締め付けられる。「それなら……私を疑っていたわけではないの?」 「もちろん。当たり前じゃないか。遥がそんなことをするはずがないと、最初から信じていた。ただ、彼女を追い詰めるためには、彼女に優越感を与え、僕が完全に彼女の話を信じ込んでいると思わせる必要があったんだ。『敵を欺くにはまず味方から』と言うだろう?…… 直人君と遥には、申し訳ないことをしたと思っているけれど、彼女に制裁を下すためにも、事業譲渡の契約を締結させて真相が明るみになるまで詳細を伏せることにしたんだ」俊の言葉を聞いた瞬間、目頭が熱くなり心も泣いている。それは悲しみでも絶望でもなく、俊がずっと私のことを信じ続けてくれていたという事実に安堵するものだった。小さく震える私の肩に、直人がそっと手を置き優しく微笑んでくれる。「遥、良かったね。やはり俊さんは目的があってのことで、最初から遥を疑ってなんかいなかったんだよ」直人が私の背中をさすってくれる安心感の中で私はようやく深く息を吐いた。直人は冷静さを取り戻し、俊に問いかける。
last update最後更新 : 2026-06-09
閱讀更多

149.真相③

遥side「住吉社長は流産の事実を知ってはいたが、それ以外の詳細は何も知らなかったようだ。星野麗華が遥に『お腹の子は奏多の子供だ』と告げた件についてもね……。その事実を突きつけた時、彼は目を丸くして驚いていたよ。どうやら彼も、星野麗華に騙されていたらしい。『恋人でも何でもないのに、俺たちに子供なんてできるわけがないだろう!』と、その場で叫んで彼女を問い詰めていたよ」「え……子供なんて、できるわけがない……?」俊の言葉が、ゆっくりと脳内で反芻される。「ああ。星野家への恩義から、住吉社長は彼女の要求を無碍にできなかっただけらしい。彼らは交際などしていないし、当然、子供など授かるはずもない。あのスキャンダル当時に婚約していたという話も、すべて彼女がでっち上げた真っ赤な嘘だ」「…………婚約も、妊娠も、すべて……嘘だったの?」私の世界が音を立てて崩れていく。麗華は、すべてを「真実」のように言いくるめて私を罵倒していた。そんな私が悲しむ姿を見ても、奏多は麗華に言い返すことはしなかったから二人で私の事を責めているのだとずっと思っていた。それが、奏多自身も被害者の一人だったなんて……。 (すべてが嘘だったのなら、夜に奏多が私を求めていたのは何のためだった?私はずっと
last update最後更新 : 2026-06-10
閱讀更多

150.決意

俊side「俊さん、実は……」直人君は、隣にいる遥に視線を向けたあと、僕の瞳をまっすぐに見据えて深呼吸をした。「昨日、遥さんにプロポーズをしました。花蓮ちゃんも含め、僕は二人と家族になりたい。これからもずっと一緒に歩んでいきたいと思っています」 「直人……!」隣にいた遥は、少し戸惑いながらも幸福に満ちた表情で直人君の瞳を見つめ返していた。二人が付き合ってから二年。直人君と花蓮の関係は良好で本物の親子のように仲良しだ。僕にとっても直人君は、ただの部下や妹の恋人ではなく全幅の信頼を置いている。「そうか……おめでとう。直人君なら大歓迎だよ」 「はい。本当は二人で具体的に話を固めてから報告しようと思っていたのですが、いつも公私ともに支えてくれる俊さんには、真っ先に伝えたくて」顔をあげて上目づかいで直人君を見つめる遥は、幸せに満ちている。二人が交える視線には愛おしさと相手への信頼や敬意を感じられてとても理想的だった。そんな姿を微笑ましく眺めていると、ふいに直人君が僕の方を向き、仕事の報告をするようにキリっと真剣な顔になった。「俊さん、これとは別に少しお話したいことがあります。
last update最後更新 : 2026-06-11
閱讀更多
上一章
1
...
121314151617
掃碼在 APP 閱讀
DMCA.com Protection Status