文月はそう吐き捨てると、もう相手にするのをやめた。見なければ、余計な気苦労もしない。今後も施設の子どもたちに会いに行くつもりだからこそ、今はとりあえず我慢することにしたのだ。文月が全く取り合わないので、院長先生――本名を佐々木彩子(ささき あやこ)という――はその場で呆然と立ち尽くした。文月は、かつて彼女が雪の中で拾った子供だった。本来なら育てるつもりなどなかったが、あまりに美しい顔立ちをしていたため、将来資産家の養子になれるだろうと踏んだのだ。だが彩子は、文月を養子に出さなかった。施設に残し、教育を受けさせ、良家に嫁がせて、施設に利益を還元させようと目論んだのだ。文月は期待を裏切らなかった。幼い頃から頭角を現し、驚くべき絵の才能を見せ、澄川芸術大学の美術学部に合格した。すべて彩子の計算通りだった。彼女が蒼介と付き合ったことは、彩子にとって願ってもないことだった。その後二人が別れ、文月がさらに金持ちの新しいパトロンを見つけたことは、なおさら喜ばしいことだった。彩子が喜ばないはずがない。嬉しくてたまらなかった。そう考えると、自然と口元が緩んだ。今日のチャット履歴を見るまでは。文月が完全に縁を切ろうとしている?冗談じゃない。彼女に自分の人生を決める権利などない。彼女の人生は、この私が握っているのだから!横で昏睡状態にある息子を見て、彩子は文月に直接会いに行くことを決意した。あの娘は騙されやすい。工藤和秀の遺書でもでっち上げて見せれば、きっと信じるはずだ。そうすれば、また金を送ってくるだろう。簡単なことだ。長年施設を運営してきて、金を着服しないわけがない。そうでなければ、どうして豪邸に住めるだろうか?子供たちがひもじい思いをしている間、彼女は同情を誘って寄付を募り、自分と家族は豪邸で贅沢三昧の生活を送っていたのだ。美食に、ブランド物の宝石。何不自由ない暮らしだ。実は息子の手術費を払う金はあるのだが、他人から巻き上げた金を使う方が、自分の懐を痛めるよりマシだと思っていた。……一週間後、由美は北澤グループの広報部に入り、弁護士のインターンとして働き始めた。文月は博之に口添えしたわけではなかったが、由美は採用された。由美は文月が手を回してくれたのだと思い、食事を奢ろうとしたが、文月はあっ
Read more